関係

「子供は欲しいか?」
 メアは思わず飲んでいた紅茶を吹き出した。そして気の狂ったミホークを見た。何言ってるんだ?そもそも付き合ってもないが?
「いらない、絶対に」
「何故だ」
 何故って、子供ができたらこの関係も変わってしまう。せっかく居心地の良い場所を手に入れたのだ。手放したくない。
「変化は嫌い」
「そうか」
 それからミホークは口を開かなかった。本当になんだったんだ。
 しばらくしてミホークは口を開いた。
「俺は平穏を望む。その為なら変化は厭わない」
「何が言いたいの?」
「少し離れないか?お互い」
 は?
 離れる?どういうこと?
 ミホークは立ち上がってでんでん虫の受話器を握る。メアは冷や汗が止まらない。
 なに?捨てられるの?ミホーク様の平穏の為に?あんなに離さないって言ったのに?
「待って!どういうこと?離れるってどういう意味?」
 ミホークは電話ごしに何か話していた。メアは動かない足を動かそうとした。
「離さないっていってたよね?嘘だったわけ?邪魔になったわけ?」
 メアは声を荒げる。ようやく動いた足でミホークに駆け寄る。その時には電話を終えていて、ミホークはメアを見下ろした。メアは焦った顔でミホークを見ていた。
「お前を手放さないようにだ」
「意味わからない!勝手に決めないで!」
「お前に相談しても無駄だろう」
 なにそれ。なにそれなにそれ。メアはうっすら目に涙を溜める。ミホークは見ないようにメアから目をそらした。
「私が変化は嫌いって言ったから?」
「少し黙っていろ」
 メアは言葉にならなかった。この怒りが、呆れが、絶望が。
 メアが黙って、力を失ったのを見るとミホークは帽子を被った。
「ついてこい」
 メアはミホークを見上げた。今だけ、その猛禽類の瞳に映らないのが悔しかった。
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