日常

 しばらくしてメアはミホークの元へ戻ってきた。それに柄でもなく安心した。メアはいつも通りの表情の下に焦りを隠していた。それはミホークにはバレバレで。ミホークはメアにどう言葉をかけたものかと困っていた。
「私、」
 そう口を開いたのはメアだった。
「海軍の保管していた悪魔の実を食べたらしい。どうやら私の親は盗賊だったみたい」
「それで懸賞金を?」
 ミホークはメアに問う。メアは頷く。
「海軍の研究対象になるなら外してくれるらしい」
 海軍の研究対象。ミホークはそれにぴくりと眉を動かした。
「私は弱いから、実験して能力の力を増さないとなんだって」
 メアも薄々気がついていた。どうしてここまで能力を使いこなせないのか。実の力とメアの力が上手く噛み合わなかったのだ。もともと戦うつもりはなかったし、能力を使いこなせなくても問題なかったが。
「お前はどうしてここに戻ってきた」
 ミホークはそう呟くように言う。メアは顔を上げてミホークを見たが目元は帽子の影になってよく見えない。メアはミホークから視線を外す。
「どうしてって、私にもわからない」
「実験体になって強くなり海軍の保護を得れば良いではないか」
「なっ!」
 メアは思わず声をあげた。お前が離さないって言ったんだろ?メアはそんな考え、言葉にしなかった。小っ恥ずかしいし、何より馬鹿馬鹿しい。
 ミホークはメアの表情を見てふっと口角を上げた。ようやくその猛禽類を思わせる琥珀色がメアをキラキラと写す。余計にメアは恥ずかしくなって俯いた。顔は真っ赤だった。ミホークは気を良くして笑っていた。
「なんだ、俺の言葉を間に受けたのか?」
 メアはもう顔を上げられない。目から涙が滲むようだった。
「そうみたいね」
 メアは消えいりそうな声で言った。ミホークは笑っていた。くつくつ喉を震わせて。そして俯くメアに手を差し伸べた。
「俺と共にくるのは少々危ないが、それでもいいなら手を取ってくれないか?」
 メアはそのミホークの余裕に歯軋りをして、渋々手をミホークに合わせた。
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