ハロー!ウィザーティングワールド
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ハリポタ世界はイギリス、つまり海外文化が基本とされている。日本とはあらゆる面で違いがあるが特に入浴に関して文化の違いが顕著となる。海外の殆どは日本と違って銭湯の文化がない、というより入浴習慣が浸透してないのだ。なので大体の人間はシャワーで手頃に済ませるのが主流とされておりそれが当たり前と浸透してるいるがここにシャワーで済ませるのがどうしても我慢ならなかった人間がいた。
「本当は自宅の方が早いんだけど万が一ペチュニアと対面して揉めたく無いから作った方が早いわ。ほらとっとと案内して」
「こ、こっちの角を曲がって」
スネイプに命令するサルビアは自宅がある真逆の道を歩いていた。先ほどいた公園の天気は晴だったのに今の空はどんよりと鼠色だ。工場の煙突が排出する煙が道歩く人々の生気を奪っているのか誰一人として陽の空気を背負ってるものはいない。それもそのはずここはスピナーズ・エンド。用がない限り近寄ってはいけませんと先生から口酸っぱく注意される立ち入り禁止スポットでもある。先生の忠告なんぞ無視して我が道をゆくサルビア。その隣では日用品がいっぱい入ったレジ袋を二つ持って歩くスネイプが早足で道案内をしていた。左右どちらを見ても同じ景色しかないのにサルビアがげんなりした頃にスネイプは足を止めた。目の前の建物は所々に蔦が張っているし舗装しているのだと強調するようにあちらこちらに板が打ち付けられている。骨よりも僅かに肉付きのいいスネイプの人差し指はその建物を指差していた。
「僕の家はここ。多分二人とも家を留守にしてると思う」
ボロ家だなと遠慮なく感想を呟いたサルビアはスネイプの後に続く。壊れた鉄柵にビニール袋を引っ掛けないよう慎重そうに通り抜けるスネイプを突き飛ばしサルビアは勝手にドアノブを回した。すぐにガチャリと音がするのにサルビアは小さく悪態をついた。鍵ぐらい掛けとけや。
「お邪魔しま…うわきったな」
ポロリと悪口が飛び出すぐらい中は荒れ果てていた。居間らしき空間なのだろう。しかし隅っこにテレビが置いてあるが虫食いのソファに脚が取れ掛かった椅子などで雰囲気は最悪の一言に尽きる。しかも床にはお菓子の袋やら酒瓶が散乱していて若干というよりかなり臭う。鼻を摘んだサルビアの後頭部をスネイプはポカリと殴った。突き飛ばしたお礼だと言えばサルビアは頭突きを喰らわせた。急に始まった取っ組み合いの喧嘩。戦いが終わったのはサルビアのブラウスに食べかけのお菓子が付いた時であった。
「だーっっ!!ダメだこんな空間じゃ風呂に入ってもその後が寛げない!面倒だけど杖を使うわ。目撃者は君だけだからいざとなったら消せばいいだけの話だし」
さらりと物騒な発言をしたサルビアは上に乗っていたスネイプを投げ飛ばし懐から杖を取り出す。起き上がったスネイプが拳を振り翳そうとしたが彼女の杖を見て腕をおろした。
「え、なんで?未成年の君がどうして杖を持っているの?」
「落ちてたから拾ったの。名前も住所も書いてないし交番に届けたけど遺失物保管期間を過ぎたから貰っていいと警官に言われた。つまりこれは私の杖」
「無茶苦茶理論すぎる」
サルビアの理論に呆れつつも羨望の目線を杖に向ける。ご馳走を目の前にした腹ペコの幼子のようでどこかあどけなさがあるのにサルビアはほっこりとした。べ、別に絆されているわけじゃないんだからね!
「にしても随分禍々しい杖だね。簡素な作りだけど持ち手から杖の先端に至るまで黒と赤を混ぜた不気味な色だ。闇の魔法使いみたいでカッコいいよ」
「急に饒舌になるのどうしたん。ま、どーでもいいけど」
立ち上がって衣服の埃を払い杖を持って呪文を唱える。その前にこほんと一つ咳払い。するとまあなんて事でしょう。さっきまで殴り合っていた男の子が期待の眼差しを向けて来るじゃありませんか。へへっ褒めても何も出ないぜ。鼻の下を擦ったサルビアは自信満々に杖を持ちそして命じた。
「ヘイヘイ家具共よ!!私の指示に従ってとっとと元の場所に戻りやがれYO!」
命令と共に祈祷師ばりに杖を無茶苦茶に振り回す。すると埃被ったテレビに今にも折れそうな弱々しい足が生えノロノロと動き始めた。TVだけではなく転がった酒瓶やゴミにも落ちていたチューインガムにもだ。それらはヒィヒィ呻き声を上げながら足が生えたそれらは自らゴミ箱へと飛び込んでいく。どうだやってやったぞ尊敬の眼差しを向けてもええんやでと得意げのままサルビアは横を向いた。そこには顎が外れるくらい口を開けていたスネイプがいた。ふっ、子供には理解し難い高難易度な魔法だったかねとサルビアはドヤ顔を浮かべている。
「え?え?ええええ???じゅ、呪文は?」
「今のが呪文だよ。ほら掃除は終わっんだからとっとと風呂場を案内して」
「待て待て!!あんな乱暴な物言いが呪文な訳ないだろ!詠唱の欠片も感じない適当な命令文じゃないか!さては君杖持ちのくせに魔法の事を何にも知らないな!?」
「急に元気になったわねあんた。ま、正規のやり方じゃなくても結果良ければ全てよし!だからこれで良いの」
「……リリーより凄い魔力を持っているのに野蛮すぎる思考のせいで全てが台無しだ。こいつもいずれホグワーツに入るだろうがこのままじゃ恥晒しの連続でリリーに風評被害が出てしまう。今のうちに魔法世界の知識を叩き込んでおいた方がいいんじゃないか?」
今の出来事を全くもって意に介してないサルビアにスネイプは頭を抱えた。今の内に正しい魔法使いとしてのいろはを教えるべき、いや教えなければならない。今後のビジョンを見据えて少しだけ前向きスネイプになったが尻を蹴飛ばされ元の後ろ向きスネイプに戻った。常識を叩き込む前にこいつの暴力性をなんとかしなくては。
辿り着いた風呂場も汚れていたのでまたまた呪文を唱える。嫌そうな顔していたスネイプからビニール袋をぶんどりはサルビア買っておいた整髪料やボディーソープなど十種類以上あるのを床に並べた。スネイプの自宅に行く際ドラッグストアで一通りお風呂グッズを揃えたのは正解であったとサルビアは自分を褒めた。風呂道具を買うのに掛かった料金?んなもんお前の笑顔で十分さキラッ(会計時に絶対返せよと圧を掛けていました)
「普段使ってるシャンプーとか選んで」
「シャン…?」
「聞かなかった事にして。気に入った匂いとかで判断してね」
サルビアの暴力を警戒する猫ちゃん(スネイプ)はそろりそろりと並べてあるシャンプーを手に取ってしげしげと眺めた。中身を手の甲に出して恐る恐る匂いを嗅ぐ。やだわ仕草が完全に子猫ちゃんじゃないと思わぬ癒しにサルビアの顔が溶ける。デロデロになりながらも彼女はスネイプがネグレトされている勘付き密かに心を痛めた。まともに髪を洗った事のない奴だとうっすらと予想はしていたがシャンプーの表記を見て首を傾げるとは。スネイプの反応に心が耐え切れずサルビアの目玉がぽろりと落ちたものだ。当たり前のように落ちた眼球に羽が生え眼窩まで戻っていく光景にスネイプは何も言わなかった。この女の体質にツッコんだら負けである。
「これとこれにする」
「いいんじゃない。多分これ女の子に人気の香りのやつだよ」
「ほんとう?」
「知らんけど」
「クソが」
数十秒前まで選んだ風呂道具を腕に抱えてキラキラと目を輝かせていたスネイプはどこへやら。すぐに性根が腐ったクソガキとなったのにサルビアは口をへの字にした。同時にちゃんと身なりを整えて愛想よくしたらモテるだろうなあと珍しくまともな方に頭を回す。スネイプは栄養を満足に取ってないと証明するかのように同年代の男子より線が細い。きちんと磨かれていない歯は黄ばんでいるし手入れされてない肌は土気色だなせいか同い年には到底見えない。そして大きな鉤鼻をコンプレックスにしてるのがよくないとサルビアは頷いた。ここに行くまでの道中では下を向いて歩いていたのだからよっぽどだろう。六回も転びそうになっていた(そのうちの四回はサルビアが足を引っ掛けた)外面の悪さが根暗に拍車を掛けているだろうと想像するのは容易い。いっその事全面的に鉤鼻をアピールすればいいのにがサルビアの意見である。特徴的な鉤鼻を全面的に押し出し真っ黒なスーツとか着こなせば蝙蝠のような空気とマッチしてニヒルな悪役といった感じでモテそうだ。考えに浸りお口チャックしてたのを不審に思ったのかスネイプはサルビアの額を強めにデコピンをした。五分後、スネイプはたんこぶの山に涙目になりつつも寛大な心でサルビアに謝罪した。
「スネちゃまが自身の非を認めたのでお風呂に入るとしますか」
「後で殺すからな絶対覚えてろよ。というか入浴する以前にバスタブは洗ってないから今すぐには入れないぞ。またおかしな詠唱でも唱えて綺麗にするのか?」
「お口チャックしてなさい。今からすんごいもん見せてやりますから」
にひひと薄笑いするサルビアは余計な事をするとスネイプは察し入り口付近で待機する姿勢を取った。残像が出来るほど早く動いていた。この動きがいかにサルビアの魔法を信用してないかを証明している。
「このカーテンを決して開けてはなりません。開けたらどうなるか…わかっているよな?」
おらこんなに怖い恩返しは嫌だ。スネイプに忠告したサルビアは猫足バスタブの中に入りすぐにカーテンを閉じた。排水溝に髪の毛が溜まっているのにオエっとなりつつも目を閉じて意識を一点に集中する。彼女がイメージするのは前世で幼い頃に観た映画に出てくる八百屋の神が疲れを癒す銭湯だ。
「イメージしろ!私の日本魂よ命令に従い我の願いを顕現せよ!!」
ハアッ!!と勢いを込めて両手をバスタブに叩きつけると眩い光が浴槽の中を埋め尽くした。目を開けたら失明するので瞼はまだ下げたままだ。スネイプが何やら叫んでいるがバチバチと閃光が弾ける騒音に巻き込まれているのかサルビアの耳には入ってこない。やってきた静寂に合わせてサルビアは目を開ける。ふっ、思った通りさ。何もなかった浴槽の底には「湯」と書かれた引き戸が出来ていた。もちろん絵ではなく本当に動かせる。横にスライドすると早く飛び込んでらっしゃいと言いたげに真っ黒な口が出迎えてくれた。強くバスタブを叩きすぎてジンジンとする両手を犠牲に風呂に入れるなら安いものだぜ。
「風呂場はできたから早くきなよ」
「ど、どういう事?なんの魔法を使ったの?」
「いいから来なって」
「やだ。絶対ろくでもないって知ってるから嫌だ」
「君に拒否権があると思うなよ」
言うこと聞かない子はこうだを実行しましょう浮遊魔法。ギャアギャア騒ぐスネイプとお風呂セットと着替えを宙に浮かべ浴槽に生えた真っ黒い口の場所で魔法解除。お前あとで覚えておけよと三下の悪役台詞を吐いたスネイプと荷物が暗闇に消えていくのを確認したサルビアは額の汗を腕で拭った。ふぅいい仕事したぜ。
「本当は自宅の方が早いんだけど万が一ペチュニアと対面して揉めたく無いから作った方が早いわ。ほらとっとと案内して」
「こ、こっちの角を曲がって」
スネイプに命令するサルビアは自宅がある真逆の道を歩いていた。先ほどいた公園の天気は晴だったのに今の空はどんよりと鼠色だ。工場の煙突が排出する煙が道歩く人々の生気を奪っているのか誰一人として陽の空気を背負ってるものはいない。それもそのはずここはスピナーズ・エンド。用がない限り近寄ってはいけませんと先生から口酸っぱく注意される立ち入り禁止スポットでもある。先生の忠告なんぞ無視して我が道をゆくサルビア。その隣では日用品がいっぱい入ったレジ袋を二つ持って歩くスネイプが早足で道案内をしていた。左右どちらを見ても同じ景色しかないのにサルビアがげんなりした頃にスネイプは足を止めた。目の前の建物は所々に蔦が張っているし舗装しているのだと強調するようにあちらこちらに板が打ち付けられている。骨よりも僅かに肉付きのいいスネイプの人差し指はその建物を指差していた。
「僕の家はここ。多分二人とも家を留守にしてると思う」
ボロ家だなと遠慮なく感想を呟いたサルビアはスネイプの後に続く。壊れた鉄柵にビニール袋を引っ掛けないよう慎重そうに通り抜けるスネイプを突き飛ばしサルビアは勝手にドアノブを回した。すぐにガチャリと音がするのにサルビアは小さく悪態をついた。鍵ぐらい掛けとけや。
「お邪魔しま…うわきったな」
ポロリと悪口が飛び出すぐらい中は荒れ果てていた。居間らしき空間なのだろう。しかし隅っこにテレビが置いてあるが虫食いのソファに脚が取れ掛かった椅子などで雰囲気は最悪の一言に尽きる。しかも床にはお菓子の袋やら酒瓶が散乱していて若干というよりかなり臭う。鼻を摘んだサルビアの後頭部をスネイプはポカリと殴った。突き飛ばしたお礼だと言えばサルビアは頭突きを喰らわせた。急に始まった取っ組み合いの喧嘩。戦いが終わったのはサルビアのブラウスに食べかけのお菓子が付いた時であった。
「だーっっ!!ダメだこんな空間じゃ風呂に入ってもその後が寛げない!面倒だけど杖を使うわ。目撃者は君だけだからいざとなったら消せばいいだけの話だし」
さらりと物騒な発言をしたサルビアは上に乗っていたスネイプを投げ飛ばし懐から杖を取り出す。起き上がったスネイプが拳を振り翳そうとしたが彼女の杖を見て腕をおろした。
「え、なんで?未成年の君がどうして杖を持っているの?」
「落ちてたから拾ったの。名前も住所も書いてないし交番に届けたけど遺失物保管期間を過ぎたから貰っていいと警官に言われた。つまりこれは私の杖」
「無茶苦茶理論すぎる」
サルビアの理論に呆れつつも羨望の目線を杖に向ける。ご馳走を目の前にした腹ペコの幼子のようでどこかあどけなさがあるのにサルビアはほっこりとした。べ、別に絆されているわけじゃないんだからね!
「にしても随分禍々しい杖だね。簡素な作りだけど持ち手から杖の先端に至るまで黒と赤を混ぜた不気味な色だ。闇の魔法使いみたいでカッコいいよ」
「急に饒舌になるのどうしたん。ま、どーでもいいけど」
立ち上がって衣服の埃を払い杖を持って呪文を唱える。その前にこほんと一つ咳払い。するとまあなんて事でしょう。さっきまで殴り合っていた男の子が期待の眼差しを向けて来るじゃありませんか。へへっ褒めても何も出ないぜ。鼻の下を擦ったサルビアは自信満々に杖を持ちそして命じた。
「ヘイヘイ家具共よ!!私の指示に従ってとっとと元の場所に戻りやがれYO!」
命令と共に祈祷師ばりに杖を無茶苦茶に振り回す。すると埃被ったテレビに今にも折れそうな弱々しい足が生えノロノロと動き始めた。TVだけではなく転がった酒瓶やゴミにも落ちていたチューインガムにもだ。それらはヒィヒィ呻き声を上げながら足が生えたそれらは自らゴミ箱へと飛び込んでいく。どうだやってやったぞ尊敬の眼差しを向けてもええんやでと得意げのままサルビアは横を向いた。そこには顎が外れるくらい口を開けていたスネイプがいた。ふっ、子供には理解し難い高難易度な魔法だったかねとサルビアはドヤ顔を浮かべている。
「え?え?ええええ???じゅ、呪文は?」
「今のが呪文だよ。ほら掃除は終わっんだからとっとと風呂場を案内して」
「待て待て!!あんな乱暴な物言いが呪文な訳ないだろ!詠唱の欠片も感じない適当な命令文じゃないか!さては君杖持ちのくせに魔法の事を何にも知らないな!?」
「急に元気になったわねあんた。ま、正規のやり方じゃなくても結果良ければ全てよし!だからこれで良いの」
「……リリーより凄い魔力を持っているのに野蛮すぎる思考のせいで全てが台無しだ。こいつもいずれホグワーツに入るだろうがこのままじゃ恥晒しの連続でリリーに風評被害が出てしまう。今のうちに魔法世界の知識を叩き込んでおいた方がいいんじゃないか?」
今の出来事を全くもって意に介してないサルビアにスネイプは頭を抱えた。今の内に正しい魔法使いとしてのいろはを教えるべき、いや教えなければならない。今後のビジョンを見据えて少しだけ前向きスネイプになったが尻を蹴飛ばされ元の後ろ向きスネイプに戻った。常識を叩き込む前にこいつの暴力性をなんとかしなくては。
辿り着いた風呂場も汚れていたのでまたまた呪文を唱える。嫌そうな顔していたスネイプからビニール袋をぶんどりはサルビア買っておいた整髪料やボディーソープなど十種類以上あるのを床に並べた。スネイプの自宅に行く際ドラッグストアで一通りお風呂グッズを揃えたのは正解であったとサルビアは自分を褒めた。風呂道具を買うのに掛かった料金?んなもんお前の笑顔で十分さキラッ(会計時に絶対返せよと圧を掛けていました)
「普段使ってるシャンプーとか選んで」
「シャン…?」
「聞かなかった事にして。気に入った匂いとかで判断してね」
サルビアの暴力を警戒する猫ちゃん(スネイプ)はそろりそろりと並べてあるシャンプーを手に取ってしげしげと眺めた。中身を手の甲に出して恐る恐る匂いを嗅ぐ。やだわ仕草が完全に子猫ちゃんじゃないと思わぬ癒しにサルビアの顔が溶ける。デロデロになりながらも彼女はスネイプがネグレトされている勘付き密かに心を痛めた。まともに髪を洗った事のない奴だとうっすらと予想はしていたがシャンプーの表記を見て首を傾げるとは。スネイプの反応に心が耐え切れずサルビアの目玉がぽろりと落ちたものだ。当たり前のように落ちた眼球に羽が生え眼窩まで戻っていく光景にスネイプは何も言わなかった。この女の体質にツッコんだら負けである。
「これとこれにする」
「いいんじゃない。多分これ女の子に人気の香りのやつだよ」
「ほんとう?」
「知らんけど」
「クソが」
数十秒前まで選んだ風呂道具を腕に抱えてキラキラと目を輝かせていたスネイプはどこへやら。すぐに性根が腐ったクソガキとなったのにサルビアは口をへの字にした。同時にちゃんと身なりを整えて愛想よくしたらモテるだろうなあと珍しくまともな方に頭を回す。スネイプは栄養を満足に取ってないと証明するかのように同年代の男子より線が細い。きちんと磨かれていない歯は黄ばんでいるし手入れされてない肌は土気色だなせいか同い年には到底見えない。そして大きな鉤鼻をコンプレックスにしてるのがよくないとサルビアは頷いた。ここに行くまでの道中では下を向いて歩いていたのだからよっぽどだろう。六回も転びそうになっていた(そのうちの四回はサルビアが足を引っ掛けた)外面の悪さが根暗に拍車を掛けているだろうと想像するのは容易い。いっその事全面的に鉤鼻をアピールすればいいのにがサルビアの意見である。特徴的な鉤鼻を全面的に押し出し真っ黒なスーツとか着こなせば蝙蝠のような空気とマッチしてニヒルな悪役といった感じでモテそうだ。考えに浸りお口チャックしてたのを不審に思ったのかスネイプはサルビアの額を強めにデコピンをした。五分後、スネイプはたんこぶの山に涙目になりつつも寛大な心でサルビアに謝罪した。
「スネちゃまが自身の非を認めたのでお風呂に入るとしますか」
「後で殺すからな絶対覚えてろよ。というか入浴する以前にバスタブは洗ってないから今すぐには入れないぞ。またおかしな詠唱でも唱えて綺麗にするのか?」
「お口チャックしてなさい。今からすんごいもん見せてやりますから」
にひひと薄笑いするサルビアは余計な事をするとスネイプは察し入り口付近で待機する姿勢を取った。残像が出来るほど早く動いていた。この動きがいかにサルビアの魔法を信用してないかを証明している。
「このカーテンを決して開けてはなりません。開けたらどうなるか…わかっているよな?」
おらこんなに怖い恩返しは嫌だ。スネイプに忠告したサルビアは猫足バスタブの中に入りすぐにカーテンを閉じた。排水溝に髪の毛が溜まっているのにオエっとなりつつも目を閉じて意識を一点に集中する。彼女がイメージするのは前世で幼い頃に観た映画に出てくる八百屋の神が疲れを癒す銭湯だ。
「イメージしろ!私の日本魂よ命令に従い我の願いを顕現せよ!!」
ハアッ!!と勢いを込めて両手をバスタブに叩きつけると眩い光が浴槽の中を埋め尽くした。目を開けたら失明するので瞼はまだ下げたままだ。スネイプが何やら叫んでいるがバチバチと閃光が弾ける騒音に巻き込まれているのかサルビアの耳には入ってこない。やってきた静寂に合わせてサルビアは目を開ける。ふっ、思った通りさ。何もなかった浴槽の底には「湯」と書かれた引き戸が出来ていた。もちろん絵ではなく本当に動かせる。横にスライドすると早く飛び込んでらっしゃいと言いたげに真っ黒な口が出迎えてくれた。強くバスタブを叩きすぎてジンジンとする両手を犠牲に風呂に入れるなら安いものだぜ。
「風呂場はできたから早くきなよ」
「ど、どういう事?なんの魔法を使ったの?」
「いいから来なって」
「やだ。絶対ろくでもないって知ってるから嫌だ」
「君に拒否権があると思うなよ」
言うこと聞かない子はこうだを実行しましょう浮遊魔法。ギャアギャア騒ぐスネイプとお風呂セットと着替えを宙に浮かべ浴槽に生えた真っ黒い口の場所で魔法解除。お前あとで覚えておけよと三下の悪役台詞を吐いたスネイプと荷物が暗闇に消えていくのを確認したサルビアは額の汗を腕で拭った。ふぅいい仕事したぜ。
