アルカ編
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「⚪︎☓バーに来い」
今朝方イルミからとある場所に来いとのメールが届いた。時間が書いてなかったから昼頃に来たけどバーはまだ開いていない。適当に外をぶらついているんだけどやけに出歩く人が多い。しかも殆どの人間の行先は近くにある巨大なビルときた。一体何をやっているんだか。
「え?アイさん?どうして」
振り向けばそこにはパリストンがいた。普段よりも幾分か輝きが増しているせいか少し眩しい。スーツをいつになくちゃんと着こなしているから重役会議でもあるのかな。
「もしかしてボクに投票しに来てくれたんですか?」
「投票?なんかやっているの」
「前々から思ってましたけどアイさんは少し世の中を知った方が良いですよ」
パリストンが呆れながら説明してくれた。どうやら今は新ハンター会長を決める選挙をしているそうで。前任のネテロ会長はアリの長と闘った際に命が尽きたらしい。そういやネテロ会長はゼノ爺ちゃんの友人だったよね。友人の死を悼んでいるのかと考えを巡らせつつ和かなパリストンに疑問を投げ付ける。
「無理して笑顔作るのやめれば」
「そんな事ないですよ。ボクはいつだって本心を表に出してるだけです」
「その割にはやけに嫌味が少ない。もしかしてネテロ会長が亡くなったのを結構落ち込んでいるの?」
仮面の笑みが僅かに崩れた。パリストンのこめかみが少しだけひくひく動いている。以前会長が遊んでくれて楽しいと言っていたのを思い出す。子供じみたパリストンと付き合ってくれるのは恐らくネテロ会長だけだったのだろう、
「お話中申し訳ございません。そろそろお時間が…」
「じゃあ私は行くから。またね」
護衛の遮りにより私はパリストンに背を向けた。いつもの嫌味が返ってこないから私の予想は当たっているのだろう。
「あ、一つ忘れ物」
パリストンの側に近寄りネクタイを引っ張る。意識がないのかパリストンはされるがままだ。近付いた彼の額に振り被った私の額を勢いよくぶつける。
「いっだ!!」
頭突き攻撃に怯んだのか仮面のような取ってつけた表情が壊れた。ぽかんと口を開け目を天にしているパリストンが面白い。飛行船から落としてくれたお礼だ。慰謝料代わりにパリストンの素が見れただけでトントンか。反撃される前に人混みに紛れてパリストンに向けて手を振る。名前を呼ばれた気がするけど振り向く気はない。
「じゃあね。生きていたらまた会おう」
夜、金持ちが滞在するホテルにある最上階のラウンジに私はいた。ドレスコードの指定なかったから私服だけど特に指摘されない。意外と規則に緩いバーなのかもね。指定された窓際の席にいけばイルミともう一人がいた。そいつは私を見て若干気まずそうに視線を逸らした。別に怒っちゃいないよ。
「早く座りなよ」
空気を読まないイルミに促され二人の間に腰掛ける。運ばれたオレンジジュースに口付けているとイルミが針を手の甲に刺してきた。相変わらず荒っぽい弟だ。
「呼ばれた内容は大まかな把握しているよ。アリと闘ったゴンが普通の医療技術や念では治せないほどの致命傷を負った。キルアはゴンを治す為にアルカを頼るつもり…でしょ」
「あんたにして話が早い。いつもはメールなんて読まないくせに」
「たまには読むよ」
「あっそ。ていうかおねだりのルールは頭に入っているよね」
「うーんちょっと忘れちゃった。ヒソカ説明してよ」
「ボクがかい?」
ちょっと戸惑ったヒソカはなんか可愛いな。しどろもどろになりつつヒソカはルールを話してくれた。
「アルカの「おねだり」を3つ叶えると「お願い」を一つ叶えてくれる♢けど「おねだり」が大きいほど犠牲は大きく、その「尻拭い」は「お願い」した人間ではなくその次の人間♤そしてアルカの「おねだり」を4回連続で断ると「断った者」と「その者が最も愛している者」つまり最低でも二人の人間が死ぬ♡…だろ?」
「あ、ヒソカに言い忘れていた。そのルールなんだけどアイだけは例外ね。こいつだけは「おねだり」を何回断っても誰も死なない」
「え♡」
「アイは「おねだり」を断っても罰を受けない。だけど「おねだり」の難易度はリセットされる事はないし前者の「尻拭い」は引き受けられない。第一アイはアルカに「おねがい」が出来ない役立たずだから。こいつのルールは頭の片隅に入れておくだけでいいよ」
「さらっと重要なルールを口にしないでおくれよ♤」
不満げにイルミに抗議するヒソカの横でアイはカクテルグラスを傾けた。中身はノンアルコールだ。
さてこれからどうしようか。
イルミが話したルールは合っているが一部内容が欠けている。アイとキルアしか知らないルールが幾つか存在するがアイは話す気はなかった。安易に喋ってしまえばキルアも私もイルミに針を刺され傀儡となってしまう。赤裸々に明かしてしまえばイルミからの逃走は不可能ではない。キルアを犠牲にすれば、だが。以前の自分ならばこの状況をどうしただろうか。
「ねえちょっと」
「ああはいはい」
意識を飛ばしているのを不満に思ったのだろう。イルミの針が手の甲を貫通していた。感触からして骨を避けている。不器用な弟の気遣いに苦笑いしか出てこない。
「ハンカチ使うかい♡」
「いいやいらない。それより早く呼び出した理由を教えてよ」
傷を放っておくのをヒソカは眉根を寄せている。テーブルを汚すのもあれなので差し出されたハンカチで傷口を縛る。すぐさま純白のハンカチが真っ赤に染まっていく。それはどれだけ深く針が刺されたのを証明していた。イルミも普段の私と違うと悟ったのか珍しく首を傾げている。
「ねえあんた今日変じゃない。変なモノでも食べた?」
お察しが早くて助かるよ。「制約と誓約」をした日から徐々に痛覚などが鈍くなっているんだよね。ウイングから”絶”を教わったとはいえ無意識に漏れ出す念は多いって知ってる。漏れ出した念すら「制約と誓約」の対象になるのは予想外だった。
だからもう生きたいなんて手遅れだ。
服で隠しているけど既に上半身はほぼ手遅れ。ライターを近付けようがガスバーナーを使おうが薄氷が溶ける事はない。死ぬのは怖くないけど死に方を決められないのは嫌だ。私は私らしく傲慢に我儘に振舞ってやりたいことをやって息を引き取るんだ。訝し気なイルミに向かって口角を上げる。
「店の雰囲気に酔っただけ。眠くなったから早く要件言ってくれない?」
「相変わらず自分勝手な女だ。よく聞け、オレはアルカを殺す。キルアは誰かに「おねがい」をしてゴンの傷を治し、「尻ぬぐい」を自分でする。あんな得体の知れない生物のせいでキルアが死ぬなんてあってはならない。だからあれを始末したいんだけどキルアは全力で抵抗するだろう。針も抜いているから敵に回すとこの上なく面倒くさい。そこでオレは自分の味方を集めようと思っている。ところでオレの友人のヒソカ、こんなに困っている友達を放っておく訳ないよね?」
「いつもボクが友達扱いすると距離取る癖に♤こういう時だけ友達扱いしないでおくれよ♢ま、ゴンやキルアが死ぬのはボクも困るから友人に手を貸すよ♡」
バリンとガラスが割れる音が手元からなった。イルミが放った針によってグラスが砕かれる。中身を飲み干して良かったとアイは内心胸を撫で下ろす。
「オレのメールを読んでここに来たっていうことは。アイもアルカを殺すのに賛成で良いんだよね」
思いっ切り殺気放たれた状態で言われちゃお願いじゃなくて脅迫だな。手入れが行き届いた弟の前髪から覗く瞳は深淵そのものだ。覗き込めば最期、二度と光を見る事はないだろう。これと組むという事はアルカを殺す、つまり家族殺しに手を貸すという事だ。置かれた現状を整理しつつ流星街で見た夢の内容を一部思い出す。あの時の本音に当てはめるなら今自分が取るべき行動は。
「少し退屈しているんだ。ちょっとだけなら手伝ってあげてもいいよ」
