レオリオ視点

目が覚めて早々に二次試験が開始された。
現れたのは地鳴りのような腹の虫を鳴らせた巨体のブハラに、スレンダーな体形をしたメンチの二人組。
メンチみてえな勝気そうな女は好みじゃねえんだよな。
好みの女のタイプに思いを巡らせていると、課題の話をしていたので慌てて集中し話を聞く。
豚の丸焼きとは結構簡単そうな課題ときた。
草原にうろついてんならとっとと捕獲して合格してやる。

「お、おい豚が骨喰ってるぞ」
「肉食の豚か。しかもかなり凶暴そうなタイプだと私は予想する」

楽そうだと判断したオレが馬鹿だった。
草原には骨を齧っている肉食の豚、別名グレイトスタンプがとことこ歩いている。
他の受験生の苦戦具合からするに結構あいつら頑丈みたいだ。
オレが持っているナイフじゃどう考えても厚い皮膚は貫通できなさそうだし。
一体全体どうやってこいつら捕獲すりゃいいんだ？
茂みの陰で思考を巡らせているとまた一人草原に向かう人物がいた。

「アイさん！！あぶねえぞ！！そいつら見かけによらずかなり凶暴だ！！」
「これくらいなら大丈夫」

アイさんは億劫そうにしながら地面に落ちていた小石を拾った。
まさかとは思うがそれ投げるんじゃねえよな。

「プギャアアア！！！」

最悪だ、オレの予想がまんまと的中してしまった。
予想通り石を投げられ頭に血が上った豚がそのままアイさんに向かって猛スピードで突っ込む。

あ、と思う暇もなく豚はアイさんに衝突し。
その後の惨状に耐えきれず思わず目を瞑ってしまう。
衝撃音もかなり大きかったしもうアイさんは。

「うう、美人そうだったのに残念だ。折角お近づきになれると思ったのに」
「レオリオ、おいレオリオ」
「んだよクラピカ！！今オレはお通夜モードなんだから邪魔するな！！！」
「アイさんに突進した豚が倒れている」
「へ？」

恐る恐る目を開けてみればとんでもない現実が視界に飛び込んできた。
地面に横たわりピクピクと痙攣している豚。
気怠そうにポケットに手を突っ込んでいるアイさん。
一体全体何がどうなっていやがる？？

「おいクラピカ！！何がどうしてああなった！！」
「豚がアイさんと突進する直前彼女は避けたんだ。そしてアイさんが豚の腹に何かをしたんだ。早業過ぎて正直私にもさっぱり」
「うっそだろ・・・」

唖然とするオレ達とは対照的にアイさんは平然としている。
そのまま豚を片手で担ぎさっさと調理場へ向かってしまった。

弱点もなしにどうやって倒せば良いんだと悩んだが、ゴンのお陰で額が弱点だと判明した。
無事倒せたのはいいが問題なのは倒し方ではなくて。

「うぎぎぎ！！この豚めちゃくちゃ重いぞ！！」
「重量がかなりあるな。両手で担がないとかなり辛いぞ」
「あ、レオリオ！！クラピカ！！二人も無事倒せたんだね！！」
「お、お前ら片手で重くねえのかそれ」
「全然。これくらいでへこたれてたら家入れねえし」
「どんな家庭環境してんだよ。つーかアイさんこれ片手で運んでいた気が・・・」

深く考えすぎるとおっかないものが出てきそうなのでこれ以上考えるのはやめだ。
息を切らしながら豚を調理場に運ぶ。
既に調理場は他の受験生達が料理をしており肉の焼ける匂いが充満していた。
くぅ～っ、腹が減ってくるぜ。
生唾を飲み込みつつも料理をするため空いていた調理場に豚を置く。
さて火を通そうとしていたらアイさんが声をかけてきた。

「適当な料理出しても全員受かると思う。ブハラがどんな料理食べても合格判定出すから」
「なるほど。ちなみに参考程度に聞きたいのだがアイさんはどんな料理を作ったんだ？」
「私？適当に焼いただけ」

クラピカに質問されたなまえさんは調理場へと案内してきた。
テーブルの上に置かれているのは豚の丸焼きというよりもはや炭の塊。
どうも焦げ臭いと感じていたが正体はこれか。
というかアイさん料理下手なの？
……うん、悪くねぇな。

「うわ～すっごい焦げてる」
「アイは昔から料理苦手でさ。作れる料理は炭か生焼けのどっちかだぜ」
「料理苦手なんだね」
「そうだね、普段は出前とか外食が多いし。あんまり自分で作ったりはしないかな」
「一人暮らしなのか？実家で料理を手伝ったりとかは」
「ない。家にはシェフがいたし」
「しぇ、シェフ……」

とんでもない金持ちエピソードに思わず腰を抜かしちまいそうだ。
口が開きっぱなしのオレたちとは違いキルアはわかると同意していた。
キルアもそうだけどアイさん達の家ってどんだけ金持ちなんだ？
専属シェフがいるとか滅茶苦茶裕福な家だろ。
それに先程の狩りでの身のこなしといいとても一般人とはかけ離れている。

一体アイさんはどういった身分の人なんだろうか。