キメラアント編
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気絶したアイさんを抱き上げれば羽のように軽かった。まともに食事を取ってないのか肉付きが良くない。以前は肉が付いていたのかと言われれば違うのだけど。少なくとも頬がやせこける程度になるまで断食する人じゃない。アイさんの家から出て車を飛ばし近くにある空港に止めた、ボクの飛行船にアイさんを乗せる。
「随分と無茶しましたねえ」
簡易ベットの上でアイさんはぐっすりと眠っているけど全然寝息が聞こえない。ほんの少しだけ怖くなって脈を取ればトクントクンと命の鼓動が紡がれているのに安堵した。普段なら勝手に触ろうとすればはたかれるのに。睡眠薬が効きすぎているのか頬をつっついても起きない。目元に出来たクマをなぞるとむず痒いのかアイさんは眉間に皺を寄せたけど起きる様子はない。
「こう見えて結構びっくりしてますよ。貴女がこんなにも無防備だなんて。このままナイフを突き刺せば死んじゃいますよ?」
持っていた折り畳みナイフの切っ先を頸動脈に当ててもアイさんは目覚めやしない。殺気を放てば起きるんだろうか。しばらく彼女で遊んでいたけど物を言わない人形を相手にしているようで次第につまらなくなってしまった。退屈しのぎにナイフを仕舞いこみ鞄に入れていた書類を手に取り文面に目を走らせる。
ボクが持つハンター協会副会長の権力を駆使すればあらゆる情報を手に入れられる。有名女優を持つ旦那が不倫相手と会う場面、大統領が敵対する国から秘密裏に賄賂を受け取った場面。一つの情報は戦争を引き起こす引き金にすらなりうる。この書類に記されている情報を何処かの組織に売れば大金を得られるけどボクはそれをしなかった。
「旅団の構成員が何人か死んだそうですね」
先日マフィアが主催するオークションを襲った幻影旅団。一味の仲間と思われる男をノストラードが始末したとの報告。翌日には幻影旅団の死体が出来ていた。その数日後にヨークシンを襲った突発的な大寒波が訪れた数時間後に、幻影旅団と思わしき人物が金髪の女性を抱えていた。ボクの推量だけど幻影旅団の死体はフェイクだったけど、ノストラードが始末した旅団の男と金髪の女性だけが本当に死んだのでは。その仮定を前提として大寒波を作ったのかは誰だかという問いには、懸賞金サイトに乗せられていたとある女性をボクはアイさんだと確信している。だってどんなにイメチェンしたってアイさんの気怠げな態度は消せないもの。
「普段の貴女ならボクが淹れたコーヒーを口に入れた瞬間速攻で殴りに来たでしょうね」
ボクの仮説を真実だと示したのはアイさんの自宅の床に放ってあった携帯の内容、それと彼女が買わないような口紅だ。ボクがお茶を入れる振りをして携帯を弄っているのにアイさんは気付きもしなかった。まして苦味の強いコーヒーを口にしても身じろぎ一つしない。以上の事からアイさんは味覚障害を引き落としているとボクは結論付けた。その証拠に素人でも勘付くほど大量に睡眠薬を投与したのに。在ろうことか微塵たりとも気付かなかった。更に推量を入れるならこの人がここまで弱るには幻影旅団の死が原因だろう。口紅の所在も尋ねる度にいやいやと弱弱し気に口を開かなかった。止めは幻影旅団の話題をするたびに小刻みに震えるあの姿!
「貴女は冷酷無慈悲なゾルディックの一族でしょう?ましてや貴女は他人の感情なんかお構いなしに自分勝手に行動して我儘に振る舞う権利がある女王だ。
たかがコソ泥が数人死んだくらいで屍みたいになってんじゃねーよ」
アイさんは傲慢無慈悲な女王だ。あらゆる意見に耳を傾けず自分勝手に行動する強者。他人との馴れ合いに意味を見出せず誰も信用していない…はずだった。それなのにアイさんは幻影旅団の死に味覚障害を引き起こすほど精神的ショックを受けている。ボクにはそれが絶叫したくなるほど我慢出来ない。破壊衝動の赴くままにアイさんの上に乗って愛の平手打ちをお見舞いする。
「ああなんて嘆かわしい!こんな無防備で無気力で弱々しい人間なんかアイさんじゃない!!返せ返せボクの女王を返せ!!」
頬が真紫色になってたり鼻血を垂れていてもアイさんが起きる様子はない。可哀想な女王、平凡なボクに虐げられても呻き声一つすら出さないなんて。よよよと流れた涙をハンカチで拭い、気を失っている女王を見下ろす。
さて威厳を失い冠すら無くした女王を覚醒させる方法はたった一つ。
「ん…あれなんで拘束されてるんだ」
目覚めたアイさんは自分の状況に目を白黒させている。両手両足に手錠を付けられているんだから当然か。起き上がろうとするけど手錠が邪魔な事に頭が働いてない。先に手錠が引き千切られる前に、ボクはポケットに仕舞い込んでいたスイッチをそっと押した。
ガコン
「は?」
驚愕するアイさんがベットに横たわったまま落下していく。この飛行船にはあらゆる罠が仕掛けてあり、このスイッチを押せば仕掛けた床は穴が開く仕組みになっている。急に落下したのに理解が追いついてないのか呆然とするアイさんは実に滑稽だ。アリとの戦闘をきっかけに女王が戻ってくるのを期待して、ボクは精一杯の笑顔でアイさんに激励の言葉を送った。
「それではお気をつけて行ってらっしゃいませ!」
