ヨークシン編
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クラピカ目線
「使え」
消毒液に包帯にホッカイロ。日用品が入った袋をアイに押し付ける。寝ぼけているのかぽかんとしている彼女に無性に腹が立つ。女性に暴力は振らないをモットーとしているが旅団に属しているなら話は別だ。パクノダには一切の躊躇いもなく律する小指の鎖 を心臓に埋め込んだのに。同じく旅団にいたアイには律する小指の鎖 どころか束縛する中指の鎖 すら発動させていない。何故だ?私の信頼をアイは裏切ったのに。この女は故郷を滅ぼした旅団の一味なのに何故念が発動出来ない!?
「時間を取って悪かった。先を急ごう」
「おうよ」
苛立ちを抑えつけシートベルトを着用すると車は再び動き出した。ドラッグストアに寄ったせいで多少時間を食ってしまったがこのスピードなら間に合うだろう。
高速が空いていたお陰で予想より早く空港に着いた。パクノダが来るまで一時間弱はある。やる事がないのでじっとしていると浅い呼吸をしているアイが視界の端に映った。右肩がやや露出しており腹に弾丸サイズの穴が開いている。レオリオの攻撃をもろに喰らったのだろう。出血は止まっているので問題ない、第一仲間じゃないから心配する義理なんぞない。
『結構勉強してきたんだ。案外頑張っているね』
「‥‥‥‥‥くそ」
「少しでも動いてみろ、その時は殺す」
「‥‥‥」
手と足だけを縛りそれ以外の麻縄を切る。私の指示によりレオリオは黙々とアイの患部を手当てしている。その間アイはずっと無言だ。やや瞼が下がってきているから眠いのだろうか。相変わらずお気楽というか呑気な態度に怒りすら湧き出てこない。
「ねえアイさん。少しの間だけでいいからクラピカと二人きりで話をしてくれないかしら」
「センリツ?」
想像だにしない提案に目を白黒させてしまう。レオリオも口をぽかんと開け、幻影旅団の団長は瞬き数回だけをした。面食らっている私達に向かってセンリツは淡く微笑むだけだ。全て任せておけと言いたげだが何をしたいのだろうか。
アイはもう敵なんだぜ?ただ麻縄で縛っているだけだしよお。クラピカの隙を突いて反撃するかもしれねえだろ」
「安心して。この人に敵意の音は感じないわ。今、こうしてる間にも聞こえるのは凪いだ海のように爽やかな音と、少しばかりの後悔だけ。害を与える気があるならとっくのとうにノイズが走っているはずよ。それに貴女もクラピカと話したいのでしょう?」
「……さあ?」
空白の間は一体何を考えているのか。アイに気を取られている間にセンリツは話し合いの場所を見つけてきたらしい。
「クロロに巻き付いている束縛する中指の鎖 は発動しているから平気よ。それにあの人から何かを企んでいる音はしないわ」
「いや万が一もあるだろう」
尚も反対しているとセンリツがゆっくり首を横に振った。全てお見通しだと言いたげな眼に反論する言葉が出てこない。まさかと思うがセンリツは私の秘めている感情を知っているのか?
「大丈夫。アイさんはクラピカの想いをきちんと受け止めてくれるわ」
センリツの好意を無下にしない為だ。何度もそれを言い聞かせアイの腕を掴み指定された物置に向かう。標準体温よりもひんやりと冷たいのは元々なのか、それともヨークシンシティを凍らせる代償として一時的に冷えているだけか。取留めもない考えを切り捨ててドアノブを捻る。物置というだけあってやや埃っぽくて乱雑に書類やら事務用品が置いてある。アイはやや咳をしながら隅に移動するとポケットからホッカイロを取り出した。数回振っていたが諦めたのかカイロを握ったまま床に寝転んだ。余裕な態度は逃げ道を塞いでいる私を倒せる自信があるからなのか、はたまた本当に寛いでいるだけなのか判断がしにくい。ああ、やはりアイと一緒にいるとペースを乱される。
「クロロをどうするの」
「それを聞いて何になる」
「……昔から君は会話が少しも進化しないね。理屈ばかり捏ねていて実に退屈だ」
「…私に話したい事とはなんだ」
関心は私ではなくあの男に注がれる。その事実と私に対して無関心な態度に抑えつけていた感情があっという間に噴火した。仰向けになっているアイを見下ろしても彼女の態度は全く変わらない。逆にそっぽを向かれてしまったせいだろうか。最後の頼みであった理性の糸がぶちりと切れてしまった。わからせてやらないとだめなのかこの女は!!
感情の赴くまま彼女の上に乗り手首をひとまとめにしても。身動き取れないようにしても。アイは動揺しない。ああ、この人は本当に。
「身の程知らずな復讐者だと内心で私を馬鹿にしていただろう!」
「私を記憶から抹消したのは弱者に価値がないと判断したからだろう!」
仮に言葉が刃物となるならばアイの身体に幾つもの穴が開いている。最初からアイを傷つける名目でぶつけているのだから当然だ。アイが旅団の一味だと分かったあの日から溜め続けていた激情をすべてぶつける。昂りすぎたせいか塩辛い液体が頬を伝う。これは感情が抑えきれなくて流れているだけだ。決してアイが私を裏切ったから悲しいなどの涙ではない。
「旅団の仲間であるお前に私の気持ちなどわかるまい!」
ヒステリックになっているであろう私を目の前にしてもアイは揺らがない。ただそっと腕を伸ばして私の頭を労るように撫でるだけだ。憐れみや慰めなんぞ不要だと振り払いたいのに身体が動かない。馬鹿な私はたったこれだけでアイを味方だと信じようとしている。こんなの心が弱い証拠だ。こいつは旅団の味方だと連呼しても撫でてくれる温かさには抗えない。欲しかった温もりに心が歓喜している。キルア達と別れた日からとある人物が頭から離れなかった。めんどくさがりだが案外面倒見の良いとある女性が目を閉じると浮かんでくる。その人は暗殺者の一族で私なんぞには目もくれないと諦めていた。故にアイが旅団の仲間だと知ったあの時、私は最悪なタイミングで自覚して絶望した。
「君の味方になってやらなくて悪いな」
どうしてどうしてアイは旅団の一員なんだ。私達と行動を共にしていればこの感情を殺すだけなのに、よりにもよって宿敵だなんて。
私は故郷を滅ぼした幻影旅団を一人残らず殲滅する。これだけは絶対変わらない。恋人がいたとしても蜘蛛の殲滅が最優先だ。だから‥‥‥淡い想いを寄せている女性が蜘蛛の一員ならば私は。
「もし叶うならば神様、わたしに。わたしに‥‥‥アイを‥‥‥殺させないでくれ‥‥‥」
「使え」
消毒液に包帯にホッカイロ。日用品が入った袋をアイに押し付ける。寝ぼけているのかぽかんとしている彼女に無性に腹が立つ。女性に暴力は振らないをモットーとしているが旅団に属しているなら話は別だ。パクノダには一切の躊躇いもなく
「時間を取って悪かった。先を急ごう」
「おうよ」
苛立ちを抑えつけシートベルトを着用すると車は再び動き出した。ドラッグストアに寄ったせいで多少時間を食ってしまったがこのスピードなら間に合うだろう。
高速が空いていたお陰で予想より早く空港に着いた。パクノダが来るまで一時間弱はある。やる事がないのでじっとしていると浅い呼吸をしているアイが視界の端に映った。右肩がやや露出しており腹に弾丸サイズの穴が開いている。レオリオの攻撃をもろに喰らったのだろう。出血は止まっているので問題ない、第一仲間じゃないから心配する義理なんぞない。
『結構勉強してきたんだ。案外頑張っているね』
「‥‥‥‥‥くそ」
「少しでも動いてみろ、その時は殺す」
「‥‥‥」
手と足だけを縛りそれ以外の麻縄を切る。私の指示によりレオリオは黙々とアイの患部を手当てしている。その間アイはずっと無言だ。やや瞼が下がってきているから眠いのだろうか。相変わらずお気楽というか呑気な態度に怒りすら湧き出てこない。
「ねえアイさん。少しの間だけでいいからクラピカと二人きりで話をしてくれないかしら」
「センリツ?」
想像だにしない提案に目を白黒させてしまう。レオリオも口をぽかんと開け、幻影旅団の団長は瞬き数回だけをした。面食らっている私達に向かってセンリツは淡く微笑むだけだ。全て任せておけと言いたげだが何をしたいのだろうか。
アイはもう敵なんだぜ?ただ麻縄で縛っているだけだしよお。クラピカの隙を突いて反撃するかもしれねえだろ」
「安心して。この人に敵意の音は感じないわ。今、こうしてる間にも聞こえるのは凪いだ海のように爽やかな音と、少しばかりの後悔だけ。害を与える気があるならとっくのとうにノイズが走っているはずよ。それに貴女もクラピカと話したいのでしょう?」
「……さあ?」
空白の間は一体何を考えているのか。アイに気を取られている間にセンリツは話し合いの場所を見つけてきたらしい。
「クロロに巻き付いている
「いや万が一もあるだろう」
尚も反対しているとセンリツがゆっくり首を横に振った。全てお見通しだと言いたげな眼に反論する言葉が出てこない。まさかと思うがセンリツは私の秘めている感情を知っているのか?
「大丈夫。アイさんはクラピカの想いをきちんと受け止めてくれるわ」
センリツの好意を無下にしない為だ。何度もそれを言い聞かせアイの腕を掴み指定された物置に向かう。標準体温よりもひんやりと冷たいのは元々なのか、それともヨークシンシティを凍らせる代償として一時的に冷えているだけか。取留めもない考えを切り捨ててドアノブを捻る。物置というだけあってやや埃っぽくて乱雑に書類やら事務用品が置いてある。アイはやや咳をしながら隅に移動するとポケットからホッカイロを取り出した。数回振っていたが諦めたのかカイロを握ったまま床に寝転んだ。余裕な態度は逃げ道を塞いでいる私を倒せる自信があるからなのか、はたまた本当に寛いでいるだけなのか判断がしにくい。ああ、やはりアイと一緒にいるとペースを乱される。
「クロロをどうするの」
「それを聞いて何になる」
「……昔から君は会話が少しも進化しないね。理屈ばかり捏ねていて実に退屈だ」
「…私に話したい事とはなんだ」
関心は私ではなくあの男に注がれる。その事実と私に対して無関心な態度に抑えつけていた感情があっという間に噴火した。仰向けになっているアイを見下ろしても彼女の態度は全く変わらない。逆にそっぽを向かれてしまったせいだろうか。最後の頼みであった理性の糸がぶちりと切れてしまった。わからせてやらないとだめなのかこの女は!!
感情の赴くまま彼女の上に乗り手首をひとまとめにしても。身動き取れないようにしても。アイは動揺しない。ああ、この人は本当に。
「身の程知らずな復讐者だと内心で私を馬鹿にしていただろう!」
「私を記憶から抹消したのは弱者に価値がないと判断したからだろう!」
仮に言葉が刃物となるならばアイの身体に幾つもの穴が開いている。最初からアイを傷つける名目でぶつけているのだから当然だ。アイが旅団の一味だと分かったあの日から溜め続けていた激情をすべてぶつける。昂りすぎたせいか塩辛い液体が頬を伝う。これは感情が抑えきれなくて流れているだけだ。決してアイが私を裏切ったから悲しいなどの涙ではない。
「旅団の仲間であるお前に私の気持ちなどわかるまい!」
ヒステリックになっているであろう私を目の前にしてもアイは揺らがない。ただそっと腕を伸ばして私の頭を労るように撫でるだけだ。憐れみや慰めなんぞ不要だと振り払いたいのに身体が動かない。馬鹿な私はたったこれだけでアイを味方だと信じようとしている。こんなの心が弱い証拠だ。こいつは旅団の味方だと連呼しても撫でてくれる温かさには抗えない。欲しかった温もりに心が歓喜している。キルア達と別れた日からとある人物が頭から離れなかった。めんどくさがりだが案外面倒見の良いとある女性が目を閉じると浮かんでくる。その人は暗殺者の一族で私なんぞには目もくれないと諦めていた。故にアイが旅団の仲間だと知ったあの時、私は最悪なタイミングで自覚して絶望した。
「君の味方になってやらなくて悪いな」
どうしてどうしてアイは旅団の一員なんだ。私達と行動を共にしていればこの感情を殺すだけなのに、よりにもよって宿敵だなんて。
私は故郷を滅ぼした幻影旅団を一人残らず殲滅する。これだけは絶対変わらない。恋人がいたとしても蜘蛛の殲滅が最優先だ。だから‥‥‥淡い想いを寄せている女性が蜘蛛の一員ならば私は。
「もし叶うならば神様、わたしに。わたしに‥‥‥アイを‥‥‥殺させないでくれ‥‥‥」
