ヨークシン編
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クロロ目線
取り引きをするリンゴーン空港に向かって車は緩やかに走り出した。新たなる同行者アイを連れて。念の鎖ではなく通常の麻縄によって身体を拘束されたアイはオレの隣で気を失っている。随分無茶をしたようだ。
「ねえ、レオリオ。この女性はあのゾルティック家の人間なのよね」
「ああ。それがどうした?」
「アイさんの心音は二つあるんだけどその内の一つが飛びぬけて幼いの。一体どんな人生を歩んでいるのかなって思っていたんだけどまさか暗殺者だなんて」
「まじかよ。一体どんな音してんだ?」
「さっきまで真冬のように誰も寄せ付けない冷え切った心音だったのに、今は日向ぼっこをしながら誰かの膝の上で寛いでいる猫のように暖かい心音…あまりにも差がありすぎる。暗殺者としては致命的すぎる音を宿している人ね」
センリツと呼ばれている女は耳が良いのだろう。アイの性格を心音で見抜くとは優れた聴覚をお持ちのようだ。
鋭い観察眼を持っているのにアイの本質を見抜けない鎖野郎とは大違いだ。
「…何がおかしい」
くすりと溢れた笑みが不愉快なのか身体を縛る鎖が強くなる。一見冷静に見えるが鎖野郎は案外短気な性格だ。もっと煽ってやろうとアイの額に口付けてやれば臓物が飛び出すほど鎖の圧迫がすぐに強まった。
「…なぜ!!なぜだ!?どうしてあの場面でアイにやめろと命令した!?どう考えてもあの状況は貴様の方が有利だったろ!!」
「路傍の石を取るか、取るに足らぬものを取るのか」
「は?」
「占いでそう出た。お前を取るかオレを取るか。どちらを選んでもアイは後悔するだろう。だがお前はアイの弟の友人だ。お前を殺すとアイの弟は悲しむ、そっちの方がアイにとっては耐え難い。だから切り捨てるのはオレでいい。そう判断しただけだ」
「理解できん…!!そんな理由で!!」
「クラピカ!!落ち着いて!!」
物事を理解する頭が足りないのか、鎖野郎は再び瞳を緋色に変化させた。頭に血が昇りすぎているのか圧迫死させるほど鎖が皮膚に食い込む。痛みより先にオレはすっかり呆れてしまった。鎖野郎は本当にアイと仲間だったのか。過ごした期間は数日でも一緒に行動すれば[アイの本質は見抜ける。オレに怒りをぶつける鎖野郎は本当に見えなかったのだろう。
人質を取った時アイの苦悶そうな表情が。
第一印象は銀髪が特徴的な眠そうな女だった。数年前、多額の金を盗もうと乗り込んだマフィアのアジトにアイはいた。他のマフィアがフランクリンの念弾を浴び苦しんで死んでいく光景をアイは眉一つすら動かさなかった。その上念弾を難なく避けた上に「時間だから帰る」などのふざけた言動でその場を立ち去ろうとしたのだ。無論逃すまいとノブナガが立ち向かったが、結果は返り討ち。オレ達が戸惑っている隙にアイは姿を消していた。
二回目に出会ったのは暗殺者としてのアイだった。宝を盗もうと忍び込んだ金持ちの屋敷にアイはいたのだ。床に転がる死体の手口からして熟練の殺し屋だと一目で気付いた。暗殺者として繋がりを持ちたいと思っていた矢先だったので、ビジネス仲間にならないかと誘ったのだ。断るだろうと予想に反してアイはあっさりとオレの意見に賛成した。
『幻影旅団ねぇ。よく知らないけどよろしく』
アイは関わるにつれてますます謎が深まる人物だった。念に関しての知識は素人なのに扱いに関しては一級品であり、殺しの技術を何処で習ったと尋ねると口を噤むかはぐらかす。かなり興味を唆られて引き出そうとしたが彼女は頑なに口を割らなかった。言動行動全てが謎だからかアイは人間関係も奇妙だった。
『団長!一人団に加入させたいのがいるんだが』
骨がある人物をスカウトしたいと目を輝かせたウヴォーギンが連れてきたのはアイだ。最初は偶然知り合っただけだと思っていたが、何故か彼女は他の団員との交流もしていたらしい。アイのミステリアスな部分に惹かれてか、彼女を団員希望をする連中も増えてきた。団長としてのオレなら入団を認めたがクロロ個人としては頷けなかった。
だってアイは自由奔放であって誰にも縛られてくれない、いわば風のような存在だ。手を伸ばせば遠のいていく距離感がやけに心地よかった。だから加入を認められなかったのだとオレは思い込んでいた。
故に三年前のあの時。オレ達の暗殺依頼を受けたゾルディック家に団員を殺され。奴らから命からがら逃げられた先には追っ手がいた。
『ああ、クロロか』
その時ようやくアイの圧倒的な強さに納得がいった。ゾルディック家の一員ならば他者とは違う。その上名が知れている一家ならば容易に名乗ってしまうと酷く目立ってしまう。だからアイは頑なに自身の正体を明かさなかったのだ。アイはオレと目線が合った瞬間、玩具を取り上げられた子供のようにしょげた。まるで殺すか殺さないか、迷っていそうな態度に当時のオレは酷く驚愕したものだ。だってアイは情をかける性格じゃない。赤の他人に同情せずただあるがものとして接する、そんな人間だと思い込んでいたのに。
『裏か表、さてどっちにする?』
オレはその時に初めてアイに抱いていた感情を知った。コイントスでターゲットの生死を決めようとする甘っちょろい姿勢。コイントスの結果に従い依頼主を裏切りオレを殺さないと決めた時の安堵するアイ。その表情は宮廷画家が描いたのかと錯覚する程美しく今も記憶に焼き付いている。
アイの優しさでオレは生かされた。感謝すれば気紛れだとはぐらかすアイにオレは心を奪われた。
旅団入りを認めなかったのも今ならわかる。他の旅団にアイを取られたくない嫉妬心から反対してたのだ。
オレはあの時に自分の気持ちを自覚した。はっきり言ってアイを愛している、ずっとそばに居て欲しいし彼女にはいつも笑って欲しい。だから彼女の障害になるものは例えオレだろうと切り捨てよう。その代わりアイが他の男を選ぶようならそいつを殺して盗むし、家族に心をすり減らすならアイが家族から離れるようオレが誘導させる。だから今はオレという存在を切り離させアイの心に残るようにする。罪悪感がアイの中で生き続けてくれればそれでいい。
卑怯だなんだと罵られても結構。なんせ自分の欲しいものは他人の物であろうと盗む。それが盗賊の流儀だ。
「今は離れるけどすぐにまた会いに来る。オレから逃げられると思うなよアイ」
取り引きをするリンゴーン空港に向かって車は緩やかに走り出した。新たなる同行者アイを連れて。念の鎖ではなく通常の麻縄によって身体を拘束されたアイはオレの隣で気を失っている。随分無茶をしたようだ。
「ねえ、レオリオ。この女性はあのゾルティック家の人間なのよね」
「ああ。それがどうした?」
「アイさんの心音は二つあるんだけどその内の一つが飛びぬけて幼いの。一体どんな人生を歩んでいるのかなって思っていたんだけどまさか暗殺者だなんて」
「まじかよ。一体どんな音してんだ?」
「さっきまで真冬のように誰も寄せ付けない冷え切った心音だったのに、今は日向ぼっこをしながら誰かの膝の上で寛いでいる猫のように暖かい心音…あまりにも差がありすぎる。暗殺者としては致命的すぎる音を宿している人ね」
センリツと呼ばれている女は耳が良いのだろう。アイの性格を心音で見抜くとは優れた聴覚をお持ちのようだ。
鋭い観察眼を持っているのにアイの本質を見抜けない鎖野郎とは大違いだ。
「…何がおかしい」
くすりと溢れた笑みが不愉快なのか身体を縛る鎖が強くなる。一見冷静に見えるが鎖野郎は案外短気な性格だ。もっと煽ってやろうとアイの額に口付けてやれば臓物が飛び出すほど鎖の圧迫がすぐに強まった。
「…なぜ!!なぜだ!?どうしてあの場面でアイにやめろと命令した!?どう考えてもあの状況は貴様の方が有利だったろ!!」
「路傍の石を取るか、取るに足らぬものを取るのか」
「は?」
「占いでそう出た。お前を取るかオレを取るか。どちらを選んでもアイは後悔するだろう。だがお前はアイの弟の友人だ。お前を殺すとアイの弟は悲しむ、そっちの方がアイにとっては耐え難い。だから切り捨てるのはオレでいい。そう判断しただけだ」
「理解できん…!!そんな理由で!!」
「クラピカ!!落ち着いて!!」
物事を理解する頭が足りないのか、鎖野郎は再び瞳を緋色に変化させた。頭に血が昇りすぎているのか圧迫死させるほど鎖が皮膚に食い込む。痛みより先にオレはすっかり呆れてしまった。鎖野郎は本当にアイと仲間だったのか。過ごした期間は数日でも一緒に行動すれば[アイの本質は見抜ける。オレに怒りをぶつける鎖野郎は本当に見えなかったのだろう。
人質を取った時アイの苦悶そうな表情が。
第一印象は銀髪が特徴的な眠そうな女だった。数年前、多額の金を盗もうと乗り込んだマフィアのアジトにアイはいた。他のマフィアがフランクリンの念弾を浴び苦しんで死んでいく光景をアイは眉一つすら動かさなかった。その上念弾を難なく避けた上に「時間だから帰る」などのふざけた言動でその場を立ち去ろうとしたのだ。無論逃すまいとノブナガが立ち向かったが、結果は返り討ち。オレ達が戸惑っている隙にアイは姿を消していた。
二回目に出会ったのは暗殺者としてのアイだった。宝を盗もうと忍び込んだ金持ちの屋敷にアイはいたのだ。床に転がる死体の手口からして熟練の殺し屋だと一目で気付いた。暗殺者として繋がりを持ちたいと思っていた矢先だったので、ビジネス仲間にならないかと誘ったのだ。断るだろうと予想に反してアイはあっさりとオレの意見に賛成した。
『幻影旅団ねぇ。よく知らないけどよろしく』
アイは関わるにつれてますます謎が深まる人物だった。念に関しての知識は素人なのに扱いに関しては一級品であり、殺しの技術を何処で習ったと尋ねると口を噤むかはぐらかす。かなり興味を唆られて引き出そうとしたが彼女は頑なに口を割らなかった。言動行動全てが謎だからかアイは人間関係も奇妙だった。
『団長!一人団に加入させたいのがいるんだが』
骨がある人物をスカウトしたいと目を輝かせたウヴォーギンが連れてきたのはアイだ。最初は偶然知り合っただけだと思っていたが、何故か彼女は他の団員との交流もしていたらしい。アイのミステリアスな部分に惹かれてか、彼女を団員希望をする連中も増えてきた。団長としてのオレなら入団を認めたがクロロ個人としては頷けなかった。
だってアイは自由奔放であって誰にも縛られてくれない、いわば風のような存在だ。手を伸ばせば遠のいていく距離感がやけに心地よかった。だから加入を認められなかったのだとオレは思い込んでいた。
故に三年前のあの時。オレ達の暗殺依頼を受けたゾルディック家に団員を殺され。奴らから命からがら逃げられた先には追っ手がいた。
『ああ、クロロか』
その時ようやくアイの圧倒的な強さに納得がいった。ゾルディック家の一員ならば他者とは違う。その上名が知れている一家ならば容易に名乗ってしまうと酷く目立ってしまう。だからアイは頑なに自身の正体を明かさなかったのだ。アイはオレと目線が合った瞬間、玩具を取り上げられた子供のようにしょげた。まるで殺すか殺さないか、迷っていそうな態度に当時のオレは酷く驚愕したものだ。だってアイは情をかける性格じゃない。赤の他人に同情せずただあるがものとして接する、そんな人間だと思い込んでいたのに。
『裏か表、さてどっちにする?』
オレはその時に初めてアイに抱いていた感情を知った。コイントスでターゲットの生死を決めようとする甘っちょろい姿勢。コイントスの結果に従い依頼主を裏切りオレを殺さないと決めた時の安堵するアイ。その表情は宮廷画家が描いたのかと錯覚する程美しく今も記憶に焼き付いている。
アイの優しさでオレは生かされた。感謝すれば気紛れだとはぐらかすアイにオレは心を奪われた。
旅団入りを認めなかったのも今ならわかる。他の旅団にアイを取られたくない嫉妬心から反対してたのだ。
オレはあの時に自分の気持ちを自覚した。はっきり言ってアイを愛している、ずっとそばに居て欲しいし彼女にはいつも笑って欲しい。だから彼女の障害になるものは例えオレだろうと切り捨てよう。その代わりアイが他の男を選ぶようならそいつを殺して盗むし、家族に心をすり減らすならアイが家族から離れるようオレが誘導させる。だから今はオレという存在を切り離させアイの心に残るようにする。罪悪感がアイの中で生き続けてくれればそれでいい。
卑怯だなんだと罵られても結構。なんせ自分の欲しいものは他人の物であろうと盗む。それが盗賊の流儀だ。
「今は離れるけどすぐにまた会いに来る。オレから逃げられると思うなよアイ」
