ヨークシン編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
キルア目線
旅団を一網打尽にしようと殺気立つクラピカを抑えるためにわざと囮になった。勝てる気はしないが逃亡ならいけると。だがゴンが姿を現したので一人逃げる訳にもいかずオレも大人しく姿を現す。オールバックにロングコート、逆十字の刺青を額に入れた男の隣には。
「ば、ばかやろう‥‥‥!!!」
アイに駆け寄りたいのにポニーテールの女の念で拘束されているせいか、つんのめってしまう。縛られているオレとゴンを見比べたアイは普段と変わらない顔つきだ。
「賞金稼ぎに彼らを捕らえに来たの?バッカじゃない?命が惜しいなら幻影旅団に関わるなって言ったよね?」
「人のこと言える口かよ。幻影旅団のメンバーのくせに」
「私はクロロに借りを返すため一時の間旅団にいるだけ。父さんにもゼノ爺ちゃんにもそう伝えている」
尊大というか我が儘な態度のアイはいつもと変わらない。脅されて共に行動している訳じゃないのが分かっただけでも十分だ。一番の願いとしては無傷でアイを旅団から引き離し、オレ達が解放される事なんだが。
「アイの身内と友達なら始末するわけにもいかない。何より鎖野郎と繋がりがあるかもしれんしな。マチの勘に従ってこいつらをホテルベーチタクルまで連行する」
殺されずに済んだが状況は最悪だ。一人突っ走ったクラピカがホテルベーチタクルに向かっちまえば…!!焦るオレとは違いゴンが敵意と純粋さも混じった瞳でオールバックの男に問いかけた。
「何故自分たちと関わりのない人間を殺せるの?」
激しく雷が鳴ったのは幻影旅団に殺された被害者の嘆きか。ゴンの質問にオールバックの男は顎に手を当ててぶつくさと自問自答を始めた。
「関係ないからじゃないか?だがあらためて問われると、答え難いものだな。動機の言語化か…余り好きじゃないしな」
「ゴン、時間稼ぎのつもりかは知らないけど無駄だ。私はクロロと契約している身で彼の障害になるものは全て殺す。例え君が相手だろうと。ゼビル島で始末しなかったのに所詮延命しただけに過ぎなかったね」
爪の先から頭のてっぺんまでびっしりと鳥肌が立つ。アイから放出される膨大なオーラを帯びた人差し指がゴンのおでこに今にも触れそうで。動け!動け!オレの足!!ゴンを助けないと!!どんなに命令しても足が接着剤で張り付いたかのように地面から動けない。ゴンが少しでも身じろぎをしてしまえば氷像と化す距離だ。
「や、やめ」
「アイ、よせ。こいつらを人質にしたままホテルまで向かいフィンクス達と合流する」
「わかった。キルア、ゴン逃げる素振りを少しでも見せてみな?一瞬であの世に行かせてあげる」
緩慢な動作でゴンから離れたアイは殺気ごと引っ込めた。助かった、のか?念の糸で縛られてなけりゃその場で座り込んでしまうほど、足に力が入らない。束の間であったが仲間であるゴンを殺すはずはないと思い込んでいたけどまさか本当に…??
ふとアイと視線が絡み合った。
「何か用?」
そこには極寒のように冷え切ったオーラを纏った暗殺者がいた。熱を持たない闇人形と化したアイがいる。その瞬間、オレは嫌でも理解してしまった。下手に動けばアイは躊躇いもなくオレたちを殺す、と。
これからの行先を予言するように一段と雨足が強まったのが何処か遠くで感じた。
19/19ページ