ヨークシン編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ねえ私もアジトに待機したいんだけど」
「敵を足止めにするにはお前の能力が便利だ。万が一に備えて行ってこい」
「でもさあ」
「幻プリン」
「チッ!!」
かなり大きめの舌打ちをしたのに、クロロは眉一つすら動かさない。
そもそも読書に没頭しているからか、こっちに見向きすらしてなかった。
う、うわ~腹立つ~
強制的に本を読めなくしてやっても良いけど、それをすると子供っぽいとか揶揄われそうだから止めておくのが賢明だろう。
ちょっと冷静になってきたので、先ほど聞いた作戦内容に思考が向けそうだ。
えっと確か当日の役割はこうだ。
司令塔のクロロや襲撃向きじゃない念の持ち主、アジト襲来に備えて何人かの戦闘系の団員がアジトにて待機。
そして残りの団員は会場を襲撃してお宝を掻っ攫う。
内容を聞いて意外に思ったのが、オークション会場襲撃組にヒソカは加わっていない。
つまり彼はアジト待機組なのだが、戦闘狂のヒソカが参戦しないなんて少しだけ驚いた。
大方ヒソカが勝手な行動をするのを阻止する為だろう。
下手に動かれて作戦がおじゃんとなったケースがなきにしもあらず。
まあヒソカがどちらに配属されようとも、オークション襲撃組に私が入っているのは変わりないんだけど。
そうだ、今はヒソカなんぞより自分の方が先だ。
明日の夕方まで自由行動と命令が出ているけど、私にとっては違う意味だ。
この空いている時間に変装道具を買いに行かないといけないのだ。
なんせ家出したとはいえ、一応私はゾルティック家の人間。
A級首のお尋ね者の彼等と、暗殺者である私が一緒にいるのは色々とまずい。
特に父さんとか母さんとかイルミとかキルアとか。
その他諸々の関係者に色々バレてしまうと、確実にめんどくさくなるに決まっている。
「アイどこ行くね。まさか逃げる気か?」
「それが出来るならとっくに実行してる。髪染める道具とか買いに外出るだけ」
「何故」
「君たち一般人から恨まれている賞金首。私は依頼されたらどんな相手でも暗殺する一族の娘。世間的に見て私と君達相性悪いの。お分かり?」
「あーそっか。忘れてたけどアイは、ゾルなんちゃらのお家の人だもんね」
「ゾルディックね。シズク前も教えたんだけど」
「無理ね。シズク興味ないこと全部忘れる」
そうだ、シズクも私同様興味がない事はとことん忘れる人間だった。
ゾルが出てきただけ上出来と言えるんだろうか。
会話もそこそこにアジトを出ようとしたら、何故かマチとシズクとパクノダの女子三人が着いて行きたいと申し出てきた。
特に断る理由もないのでご自由にと返し、四人でアジトを後にした。
初めて私はタイムマシンなんていう、未知なる道具が欲しいと切に願った。
あの時、三人についてこないでと言っとけば良かった……
過去の自分の判断に悔いていても、残酷な事に未来は変えられない。
「こっちの口紅の方がアイの可憐さを引き出せない?」
「あらそっちのアイシャドウに合わせるなら…口紅は薄いピンクの方が良いんじゃないかしら」
「そっちの口紅にする?ならカラコンも変えた方がいいかも」
も、もうやめてちょうだい。
女三人よれば姦しいというけど、今の現状はまさにそれ。
遡る事数時間前、ヨークシンの化粧コーナーに到着し適当な商品を手に取った刹那。
女子三人は一斉にこっちじゃないこれが良いなどと、矢継ぎ早に口出ししてきたのだ。
威圧的すぎる三人に押されてしまい、適当に選んでいいよと返したのがまずかった。
瞬く間に始まったお化粧タイムに最初は抵抗したけれど。
マチの糸で身体を椅子ごと拘束され、シズクのデメちゃんに財布を吸われてしまえば為す術がなかった。
当人を宇宙の彼方へと置いて行った話し合いがやっと終了し、どうにか変装用の化粧品が決まって胸を撫で下ろそうとしたけど。
何故か外れない糸と、満面の笑みを向けてくる三人組。
ああ、これはもしや……
「まだ終わってないわよアイ」
その後の記憶は正直定かではないが服や髪染めやらなどで、デパートのあちこちを巡り回り。
ようやっと全てが終わりへとへとのままアジトに帰ると、時計はもう22時を回っていた。
午前中にアジトを出たのに、食事を一切取ってもないし昼寝もしてないのにこんな時間になるなんて。
恐るべし女子の買い物よ…
次の日になり女子三人と目が合った瞬間、すぐさまマチの糸にて私はあっという間に彼女達に捕まってしまった。
もう抵抗する気力もないので好きにしてちょうだい……
三人はわざわざ隣のビルを使い、男子禁制と看板を立てて私を着飾っていく。
始終真顔の私に、三人は「可愛い」や、「綺麗」と褒めているのが不思議だ。
絶対死んだ魚のような目になっているのに、可愛いわけがないんだけど。
途中でヒソカが乱入してくるハプニングがあったけども、どうにか順調に化粧やら髪染めなどをしていき。
「うん…出来たわ。さ、アイ鏡を見て」
長時間の拘束でぐったりしていた私の肩を、パクノダが優しく叩いた。
や、やっと終わり?
よろよろと椅子から立ち上がり、壁に立て掛けてある所々割れている鏡の前に立ち自分自身を観察する。
髪は白から金髪へと変わりポニーテールから二つ結びへ。
瞳は赤いカラコンを使用しているからか、真っ赤な瞳はまるで血みたい。
化粧を施されているお陰で、元の暗い印象から華やかな印象を見受けられる。
すっごい……化粧の力って偉大だな。
「ちょっと待って。着飾ってくれたのは嬉しいけどさ、逆にこれ悪目立ちしちゃって身バレしそうだなーって思うんだけど」
「あらそう?男装をするより、そっちの方が正体不明に見えるから良いと思うけど」
「元のアイと印象全然違うから、家族にもバレないと思うよ」
「自信持ちなアイ。前のアンタも今のアンタも可愛いのには変わらないから」
身バレする心配よりも、下手に目立つ方もちょっと嫌なんだよな~と言いたかったけど諦めた。
だって反論を認めないっていう圧出されてるし、化粧落としたいと口滑らしたら命の危機に関わるって直感で理解してしまった。
彼女達に逆らう気力はとうに失せているし、面倒だからこのままオークションに向かっちゃおう。
私の格好に満足そうなパクノダは腕時計に視線をやると、優しく頭を撫でてきた。
「あらもうこんな時間。アイ、マチ、シズク、気をつけて行ってらっしゃい」
「うん」
3/3ページ