天空闘技場編
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幾日か経ったけどホテルに籠るのも飽きたし、身体でも動かしに外でも出ようか。
一応警戒しながら歩いたけど、ストーカーにも遭わないから肩の力を抜こう。
平和って身近にあるけど案外見つからないものなんだ。
軽い足取りでタワー内部を散策していると、ゴンとキルアとズシに遭遇した。
聞けばキルアが体感した嫌な感じ、つまり【練】の正体である四大行をズシが語っているらしい。
そういえば父さんが“キルアにも念を教える時期か”って呟いてたっけ。
この機会に知るのも丁度いいだろう。
いや、ちょっと待って?
この流れだと私が教えるっぽくない?
だって今父さんもイルミもいないから、適任者私だけじゃん。
念を知っているのはこの中で私ぐらいだし。
突如舞い込んできた案件に身を震わせてしまう。
え、絶対いやなんだけど、誰か助けて……
怯えていると偶然近くを通りかかったウイングが現れ、なんと“念を説明しますよ”と助け舟を出してくれた。
はぁ、危なかった……
ウイングはひ弱そうだけど、彼なら丁寧に念を教えてくれそうだ。
珍しく湧いてきた感謝の念で胸がいっぱいになりつつ、勢いでウイングに頭を下げる。
「どうぞ二人を面倒見てやって下さい」
陽がすっかり傾いた時間帯にウイングに案内された場所は、天空闘技場から少し離れたホテルの一室。
どうやらここでウイングとズシは寝泊りをしているようだ。
早速ウイングがホワイトボードに書いた四大行と、その説明をしてくれる。
が
は?なに嘘ついてるんだこいつ……
ウイングは最もらしく四大行を説明しているけど、あれは念とはあまりにもかけ離れている。
“念”が心を燃やす意志の“燃”であってたまるものか。
ゴンは騙されているのにも気づかず納得しているけど、キルアは不満そうにしている。
感が鋭い子だから本能的にあれは“念”じゃないと気づいたのだろう。
口出ししようとしたけども、ウイングが眼鏡の縁を押し上げキラリと目線をよこしてきたので口を閉じる。
余計な口出しは無用ってわけか。
そっちがその気なら、後で真実を語らない訳を嫌でも吐いてもらおう。
ウイングは納得してないキルアを本物の【練】で黙らせ、二人を自分から帰らすように誘導し部屋から追い出した。
勿論言われずとも私は残るので、適当に誤魔化し部屋に留まったけど。
お茶を持ってきたズシには悪いけど、君の師匠今から拷問するから。
「覚悟はいい?」
ソファから立ち上がり遠慮なく殺気をウイングにぶつけてやれば、彼は争う気はないのかすぐに降参とばかりに両手を上げた。
出てきた汗をハンカチで拭っている。
「…貴女は絶が苦手なのか。はたまた溢れんばかりのオーラのせいなのか。どちらにせよ念を齧った者なら貴女の気配はすぐわかる」
「本当?」
通りで昔から隠密行動とかに弱いはずだ。
あっちからすれば私の位置は丸わかりなんだ。
家族がそれを口にしなかったのは、私の動向を監視する為かな。
よし、これから絶の練習ちゃんとしよう。
思わずウイングにお礼を言いそうになったが、どうにか口を閉じる。
ふぅ、危ない危ない。
話を逸らそうたってそうはいかないんだから。
冷静を取り戻す為に机に置かれていた湯呑みを手に取り、能力を発動し保冷剤に変えておでこに当てる。
ひんやりと気持ちよくて、額に籠っていた熱が逃げてく。
頭を冷やすには昔からこれが一番手っ取り早い。
緊張した面持ちのズシだったが、私が能力を発動した途端いきいきとした表情になった。
「やっぱり…!!凄腕のお方だったんすね!?オーラが氷に変化したって事は変化系っすか?」
「ふぅん。変化系を知ってるねぇ…そこの彼にはきちんと念を教えといて、二人には嘘を吐くわけ?」
「嘘じゃありません。“燃”は心を鍛えるための大切な修行です…“念”を扱うための」
ウイングは眼鏡の縁を押し上げ、炎のような熱い瞳で私をじっと見ている。
訳ありの事情で教えられないのか、はたまたその場凌ぎの嘘なのか。
拷問して真実を吐かせてもいいけど、間違えて殺すのだけは避けたい。
だってウイングには二人に指導をしてもらわないといけない。
最悪な未来は、私が二人を教える羽目になってしまうこと。
ソファに再び腰を下ろし一旦彼の話を聞くとしますかね。
裏ハンター試験、か。
言われてみれば念を扱うのに資格がいるとかいらないとか。
聞いたことがあるような、ないような。
「勿論アイさんは、試験に合格してます」
「そりゃどうも」
ちなみに既に念を取得しているヒソカとイルミも合格らしい。
二人の心配はしてないので放っておくけど。
「ネテロ会長から前もってアイさんのお話は聞いてましたが…まさかこれほどの逸材とは」
「会長が?」
「ええ。私が属する心源流拳法の師範は、ネテロ会長ですから」
すぐ脳内に浮かんでくるのは、ウインクをして両手でピースサインをするお茶目なお爺ちゃん。
性格が悪いというか人騒がせな爺さんだな。
新しい湯呑みに注いでもらったお茶を飲んでいると、ウイングがえも言われぬような表情をして私を見つめていた。
どこか引っ掛かる部分があったのかな。
「私に質問したいんでしょ。答えられる範囲なら教えてあげるけど」
「…アイさんは、ネテロ会長に匹敵するくらい素晴らしい念の使い手です。私なんかよりずっと彼等の指導役に相応しいでしょう。宝石の原石であろう彼等を立派な使い手に導けるだろうに。何故格下の私に二人の教えを依頼するんですか?」
「あー、それね。私の場合念を使えた、というより気付いたらもうモノにしてたから教えるとか論外。なにより感覚派だから他人に教えられるもんじゃない。それに他人の指導なんぞ柄じゃないし圧倒的に面倒くさいでしょ」
他人に教えるというのは前提としてゴールに辿り着くまでの道筋がある。
それを論理的に筋書きして、分かりやすいように言語化しなきゃならない。
手間暇をかけなきゃいけないと判明している時点で、何があっても私は教師役をやりたくないんだ。
実力は頼りないが、先生としての指導役ならウイングの方が私より向いているだろうし。
胸の内を明かせば、理解したのかウイングがふむと頷いてくれた。
「…わかりました。ですが彼等にまだ真実を告げる訳にはいきません」
「なんで?」
「まだ念が必須な段階ではないからです。例えば200階クラスに彼等が辿り着いたなら。その時はしっかりと本物の“念”を教えます」
「その言葉に偽りはない?」
「ええ勿論」
多少威圧を込めて問いかけたけど、穏やかな笑みのウイングから嘘の気配は感じない。
しょうがない、信じてやるとするか。
用事は済んだのでさっさとホテルに戻ろうとしたら、ズシからもう一回念を見せて下さいとせがまれた。
えー、あれ地味に体力使うんだけど。
「なんて綺麗なオーラの塊…!!凄い凄すぎるっす!!鬼才の持ち主なんすねアイさん!!あの何歳くらいでこんな風にオーラを練れたんすか?」
「多分8歳ぐらい?ざっくりだけど…あれズシお腹痛いの?」
「気にしないで下さい。彼は今世間の広さに落ち込んでいるだけなので」