実家編
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「本当にアルカに会いに行くのか。”あれ”はこの世の生き物じゃない。いいか、いくらアイのお願いといえど異変を察知すればすぐに”あれ”から引き離す」
「はいはい」
しつこく念押しする父さんは酷く苦々しげな顔をしていた。
それもそのはずで、今から会う子は我が家では危険物扱いされている。
訳あって実家にある地下深くの部屋にて幽閉されている妹。
あの子には合わせないぞというように、私の目の前には何重にも連なっている鉄の扉が行手を阻んでいる。
この扉を開錠出来るのは、父さんとゼノ爺ちゃんのみだ。
私をあの子に合わせたくない一心なのか。
未だに父さんは、ハンドルに手を伸ばそうともしない。
頑固すぎるでしょ。
時間も押しているし、あれをやってさっさと開けてもらおう。
「父さん屈んで」
素直に私のお願いに従った父さんの頬に、嫌々ながらもキスしてやる。
これやると調子乗るからあんましたくないんだよ。
強張った顔から一転し含み笑いをする父さん。
ちょっと急いでるから腰に手を回そうとしないで。
ようやく開ける気になった父さんは、力一杯ハンドルを回し始めた。
開ける前からでも重圧な雰囲気漂う鉄の扉の向こうに、あの子はいるんだろう。
何人もの命を奪ったことを全く気にしてない無邪気な笑顔をして。
やがてギギギと錆びたような音を出して扉が開いた。
私が部屋に入室すると素早く扉が閉まる。
十分すぎるほどの警戒ご苦労なことで。
部屋には幼児部屋のような壁紙が貼られており、中央には様々な動物のぬいぐるみがやまほど置かれていた。
いつ来ても子供っぽい部屋だこと。
部屋の主に合わせて、もう少しピンクとか女の子向けに改良しといた方が良いんじゃないの。
まあ、外の世界に興味を湧かせない為にわざと幼児向けにしてるんだろうけど。
ぼんやりと天井を見つめていたら、腰の辺りに誰かが腕を回してきた。
顔なんか見なくたってわかる。
再会を喜んでいるのか、ぎゅっと腕に込めている力はそこそこ強い。
「去年振りだねアルカ。少し背が伸びたんじゃない」
「むー全然違うよ。アイお姉ちゃんは去年来てないでしょ。一昨年ぶりだもん」
「あれそうだっけ」
このやり取り覚えがあるな。
ツボネにもそんな事言われたような気がする。
薄っすらと残っている記憶に浸ろうとしたけど、腕を引っ張ってくるアルカに邪魔されてしまう。
やれやれおてんばな妹だ。
ま、彼女のためにここまで来たんだから妹のしたいようにさせてやるか。
膝を曲げて目線を同じにしてやり、手を広げおいでと許可を出す。
すぐさま飛び込んできたアルカは私の首元に顔を埋めて、無邪気にはしゃいだ。
「アイお姉ちゃんだ!!ずっとずっとずーっと!!アイお姉ちゃんに会いたくてあたしとナニカ良い子にしてたんだよ?褒めて褒めて!!」
「はいはい良い子だね。アルカもナニカも本当に良い子」
ほんとうに、良い子達。
こんな辛気臭い地下に閉じ込められて文句の一つもあげなくて。
大好きなキルアが自分達の記憶を無くしていると知ってても、それでも健気に待っていて。
君の姉は事情を全部知っているのに。
助けに来ないどころか自分の自由の為に家を出ていった薄情者。
そんな姉を好きでいてくれるなんて。
後悔なのか憐れみなのか、はたまた見下しているのかよくわからない気持ちを押し潰すように。
アルカの骨を折らないよう加減しつつ、力強く抱き締める。
私の気持ちなんかこれっぽっちも気づいていないアルカは、きゃはきゃはと嬉しそうに笑い声を上げた。
「あたしね、アイお姉ちゃんといっぱいいーっぱい遊びたいの!まずはおままごとしよう!」
「いいよ。やろうか」
彼女の願い通りしばらくおままごとをやってあげ。
おままごとに飽きたから絵本を読んで、との要望に答えていると。
きゅるるとアルカのお腹が鳴った。
恥ずかしげにお腹減っちゃったと笑っている。
もうおやつの時間か。
近くの壁についてるボタンを押せば、壁の一部が開きケーキと紅茶の盆が自動的に出てきた。
アルカの元に運びケーキの大きい方を渡す。
確かこの機械開発したのミルキなんだっけ。
彼やカルトもたまにアルカの事を気にかけているのに。
イルミときたら……
完全にアルカを自身の支配下に置こうとしている弟が頭をよぎり、ついため息を吐いてしまう。
イルミはたまに私も操ろうとしている節があるし。
人をコントロールしたがる性格は母さんに似たんだろう。
物憂げな私を気にかけてか、アルカは大丈夫?と心配そうに聞いてきた。
「まあ平気。どうにかなるよ」
「ほんとう?」
「うん」
「よかったあ。あたしもそうだけどナニカもアイお姉ちゃん大好きだから。お願いがあるなら叶えたいって」
にっこり笑うアルカはどこまでも無知で、それでいて愚かだ。
アルカはおねだり三回聞けばナニカへと変貌し。
あらゆる人間の欲望を叶える願望機へと化す。
たった一人の願いの大きさによっては、大勢の人間の命を奪ってしまえる願望機。
まさに生きる厄災というべきか。
今頃父さん達は監視カメラで私の様子を逐一観察しているはずだ。
ナニカに関するルールを持っていないか、と。
ケーキを食べ終えたアルカが大きめの欠伸をしたので、食べかけのケーキを床に起きおいでと呼ぶ。
昼寝でもさせている間に部屋に戻るとするか。
膝枕すると言えば花が綻ぶように笑うアルカ。
太腿に頭を乗せ撫でてと催促をした。
もう少しで帰るしそれくらいならいっか。
「キルアに会えなくて寂しい?」
「うん。すっごい寂しくて死んじゃいそうになる。けど」
「けど?」
アルカは考え込むような表情をしていたが、やがて顔が蕩けてんばかりの表情になった。
「アイお姉ちゃんが会いに来てくれるから寂しいのはどうにでもなるの。アイお姉ちゃんはたまに嘘をつくし意地悪するけど。でも絶対あたしに会いに来てくれるし遊んでくれる。だからキルアお兄ちゃんに会いたいけど我慢出来るの」
「そうか偉いね。アルカもナニカもこんなに小さいのに立派だ」
「えへへへへ。あたしの夢はねキルアお兄ちゃんとアイお姉ちゃんとずっと一緒にいるの。だから離れないでね」
「それは無理だね」
「えー」
ぷうと頬を膨らませるアルカは実に不満そうな顔をしている。
この状態だと多分“あれ”が来るな。
「もうお姉ちゃんは帰らなきゃいけないんだ。ナニカと良い子に出来る?」
「じゃあ帰っちゃう前にアイお姉ちゃん頭撫でて?」
「駄目」
「えーっ。じゃあアイお姉ちゃん抱っこして」
「アルカ」
「これもダメなの?じゃあアイお姉ちゃんキスして!」
「だーめ」
「むー、じゃあアイお姉ちゃん抱き締めて?」
「駄目、もう帰らないと」
「えーっ、もっといようよ~」
不満そうな表情で私の膝をぽかぽかと叩いてくるアルカの姿。
監視カメラはばっちりとその様子を映しているだろう。
父さんが私をアルカの部屋に入れてくれた最大の理由がこれだ。
私はアルカの【おねだり】を三回以上断っても殺されやしない。
逆に【おねだり】を聞いてあげれば【お願い】だって出来るけど。
色々縛りがあるので滅多にやらないのだ。
というか【おねだり】を叶えなくともアルカに【命令】すればいいのだが。
それを出来るのは私とキルアだけ。
つまり家族が把握しているアルカのルールには含まれない。
それが公にされないよう、細心の注意を払いながらアルカと遊んでいたのだ。
ナニカの存在に対しては父さんたちも薄っすらと知っているから、いつも通りここはスルーだろう。
仮に【命令】が出来るのがバレたら、絶対私の優雅な一人暮らしは終わりを告げ。
すぐさま家に監禁コースだ。
絶対にそれだけは阻止しなければならない。
何者をも犠牲にしてでも私は誰にも縛られない生活が欲しい。
例え喉の奥に突っかかるような違和感を無視しても。
例え軋むような胸の痛みを見ないふりをしても、私は実家を離れたい。
ぶすくれているアルカをどうにか寝かしつけ。
すうすうと安らかな寝息を立てるアルカに手を振った。
「じゃあねアルカ、ナニカ。また来年」
「帰ってくる度に”あれ”に顔を見せなくても別に良いんだぞ。お前のおねだりだから聞いてやるが……本来”あれ”は家族と思ってはいけないのは分かっているよな?」
「はいはい分かってるって。いいでしょ別に、気まぐれで行動したって」
「はいはい」
しつこく念押しする父さんは酷く苦々しげな顔をしていた。
それもそのはずで、今から会う子は我が家では危険物扱いされている。
訳あって実家にある地下深くの部屋にて幽閉されている妹。
あの子には合わせないぞというように、私の目の前には何重にも連なっている鉄の扉が行手を阻んでいる。
この扉を開錠出来るのは、父さんとゼノ爺ちゃんのみだ。
私をあの子に合わせたくない一心なのか。
未だに父さんは、ハンドルに手を伸ばそうともしない。
頑固すぎるでしょ。
時間も押しているし、あれをやってさっさと開けてもらおう。
「父さん屈んで」
素直に私のお願いに従った父さんの頬に、嫌々ながらもキスしてやる。
これやると調子乗るからあんましたくないんだよ。
強張った顔から一転し含み笑いをする父さん。
ちょっと急いでるから腰に手を回そうとしないで。
ようやく開ける気になった父さんは、力一杯ハンドルを回し始めた。
開ける前からでも重圧な雰囲気漂う鉄の扉の向こうに、あの子はいるんだろう。
何人もの命を奪ったことを全く気にしてない無邪気な笑顔をして。
やがてギギギと錆びたような音を出して扉が開いた。
私が部屋に入室すると素早く扉が閉まる。
十分すぎるほどの警戒ご苦労なことで。
部屋には幼児部屋のような壁紙が貼られており、中央には様々な動物のぬいぐるみがやまほど置かれていた。
いつ来ても子供っぽい部屋だこと。
部屋の主に合わせて、もう少しピンクとか女の子向けに改良しといた方が良いんじゃないの。
まあ、外の世界に興味を湧かせない為にわざと幼児向けにしてるんだろうけど。
ぼんやりと天井を見つめていたら、腰の辺りに誰かが腕を回してきた。
顔なんか見なくたってわかる。
再会を喜んでいるのか、ぎゅっと腕に込めている力はそこそこ強い。
「去年振りだねアルカ。少し背が伸びたんじゃない」
「むー全然違うよ。アイお姉ちゃんは去年来てないでしょ。一昨年ぶりだもん」
「あれそうだっけ」
このやり取り覚えがあるな。
ツボネにもそんな事言われたような気がする。
薄っすらと残っている記憶に浸ろうとしたけど、腕を引っ張ってくるアルカに邪魔されてしまう。
やれやれおてんばな妹だ。
ま、彼女のためにここまで来たんだから妹のしたいようにさせてやるか。
膝を曲げて目線を同じにしてやり、手を広げおいでと許可を出す。
すぐさま飛び込んできたアルカは私の首元に顔を埋めて、無邪気にはしゃいだ。
「アイお姉ちゃんだ!!ずっとずっとずーっと!!アイお姉ちゃんに会いたくてあたしとナニカ良い子にしてたんだよ?褒めて褒めて!!」
「はいはい良い子だね。アルカもナニカも本当に良い子」
ほんとうに、良い子達。
こんな辛気臭い地下に閉じ込められて文句の一つもあげなくて。
大好きなキルアが自分達の記憶を無くしていると知ってても、それでも健気に待っていて。
君の姉は事情を全部知っているのに。
助けに来ないどころか自分の自由の為に家を出ていった薄情者。
そんな姉を好きでいてくれるなんて。
後悔なのか憐れみなのか、はたまた見下しているのかよくわからない気持ちを押し潰すように。
アルカの骨を折らないよう加減しつつ、力強く抱き締める。
私の気持ちなんかこれっぽっちも気づいていないアルカは、きゃはきゃはと嬉しそうに笑い声を上げた。
「あたしね、アイお姉ちゃんといっぱいいーっぱい遊びたいの!まずはおままごとしよう!」
「いいよ。やろうか」
彼女の願い通りしばらくおままごとをやってあげ。
おままごとに飽きたから絵本を読んで、との要望に答えていると。
きゅるるとアルカのお腹が鳴った。
恥ずかしげにお腹減っちゃったと笑っている。
もうおやつの時間か。
近くの壁についてるボタンを押せば、壁の一部が開きケーキと紅茶の盆が自動的に出てきた。
アルカの元に運びケーキの大きい方を渡す。
確かこの機械開発したのミルキなんだっけ。
彼やカルトもたまにアルカの事を気にかけているのに。
イルミときたら……
完全にアルカを自身の支配下に置こうとしている弟が頭をよぎり、ついため息を吐いてしまう。
イルミはたまに私も操ろうとしている節があるし。
人をコントロールしたがる性格は母さんに似たんだろう。
物憂げな私を気にかけてか、アルカは大丈夫?と心配そうに聞いてきた。
「まあ平気。どうにかなるよ」
「ほんとう?」
「うん」
「よかったあ。あたしもそうだけどナニカもアイお姉ちゃん大好きだから。お願いがあるなら叶えたいって」
にっこり笑うアルカはどこまでも無知で、それでいて愚かだ。
アルカはおねだり三回聞けばナニカへと変貌し。
あらゆる人間の欲望を叶える願望機へと化す。
たった一人の願いの大きさによっては、大勢の人間の命を奪ってしまえる願望機。
まさに生きる厄災というべきか。
今頃父さん達は監視カメラで私の様子を逐一観察しているはずだ。
ナニカに関するルールを持っていないか、と。
ケーキを食べ終えたアルカが大きめの欠伸をしたので、食べかけのケーキを床に起きおいでと呼ぶ。
昼寝でもさせている間に部屋に戻るとするか。
膝枕すると言えば花が綻ぶように笑うアルカ。
太腿に頭を乗せ撫でてと催促をした。
もう少しで帰るしそれくらいならいっか。
「キルアに会えなくて寂しい?」
「うん。すっごい寂しくて死んじゃいそうになる。けど」
「けど?」
アルカは考え込むような表情をしていたが、やがて顔が蕩けてんばかりの表情になった。
「アイお姉ちゃんが会いに来てくれるから寂しいのはどうにでもなるの。アイお姉ちゃんはたまに嘘をつくし意地悪するけど。でも絶対あたしに会いに来てくれるし遊んでくれる。だからキルアお兄ちゃんに会いたいけど我慢出来るの」
「そうか偉いね。アルカもナニカもこんなに小さいのに立派だ」
「えへへへへ。あたしの夢はねキルアお兄ちゃんとアイお姉ちゃんとずっと一緒にいるの。だから離れないでね」
「それは無理だね」
「えー」
ぷうと頬を膨らませるアルカは実に不満そうな顔をしている。
この状態だと多分“あれ”が来るな。
「もうお姉ちゃんは帰らなきゃいけないんだ。ナニカと良い子に出来る?」
「じゃあ帰っちゃう前にアイお姉ちゃん頭撫でて?」
「駄目」
「えーっ。じゃあアイお姉ちゃん抱っこして」
「アルカ」
「これもダメなの?じゃあアイお姉ちゃんキスして!」
「だーめ」
「むー、じゃあアイお姉ちゃん抱き締めて?」
「駄目、もう帰らないと」
「えーっ、もっといようよ~」
不満そうな表情で私の膝をぽかぽかと叩いてくるアルカの姿。
監視カメラはばっちりとその様子を映しているだろう。
父さんが私をアルカの部屋に入れてくれた最大の理由がこれだ。
私はアルカの【おねだり】を三回以上断っても殺されやしない。
逆に【おねだり】を聞いてあげれば【お願い】だって出来るけど。
色々縛りがあるので滅多にやらないのだ。
というか【おねだり】を叶えなくともアルカに【命令】すればいいのだが。
それを出来るのは私とキルアだけ。
つまり家族が把握しているアルカのルールには含まれない。
それが公にされないよう、細心の注意を払いながらアルカと遊んでいたのだ。
ナニカの存在に対しては父さんたちも薄っすらと知っているから、いつも通りここはスルーだろう。
仮に【命令】が出来るのがバレたら、絶対私の優雅な一人暮らしは終わりを告げ。
すぐさま家に監禁コースだ。
絶対にそれだけは阻止しなければならない。
何者をも犠牲にしてでも私は誰にも縛られない生活が欲しい。
例え喉の奥に突っかかるような違和感を無視しても。
例え軋むような胸の痛みを見ないふりをしても、私は実家を離れたい。
ぶすくれているアルカをどうにか寝かしつけ。
すうすうと安らかな寝息を立てるアルカに手を振った。
「じゃあねアルカ、ナニカ。また来年」
「帰ってくる度に”あれ”に顔を見せなくても別に良いんだぞ。お前のおねだりだから聞いてやるが……本来”あれ”は家族と思ってはいけないのは分かっているよな?」
「はいはい分かってるって。いいでしょ別に、気まぐれで行動したって」