実家編
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昼寝をしていたところ、ゼノ爺ちゃんに呼び出された。
一体なんだろうと首を傾げつつ、ゼノ爺ちゃんの部屋に入る。
そういえば。
ジャポンの文化が好きなゼノ爺ちゃんの部屋は、完全に和室と化しているんだった。
い草の匂い漂う畳の上には、ちゃぶ台と呼ばれる小さいテーブルすらある。
昔はあれよく引っくり返してたな…
懐かしい。
「作法は気にせんから自由に座れ」
「どうも」
堅っ苦しいの苦手だからありがたい。
スリッパを脱いで、畳の上に存分に胡座をかかせてもらう。
自由な姿勢が一番楽よ。
正座なんてすぐ足が痺れるし。
女の子らしさなんて気にしてられるかっての。
皿に載っているお饅頭を指差せば、許可を貰ったので遠慮なく手に取る。
うんうん、フグ毒入りのこしあんは和菓子の王様というべき美味しさ。
でも私個人的には、もう少し砂糖多めの方が好きだけど。
「ハンター試験はどうじゃった」
「別に。簡単でもあるけど難しいかはどうだろう。分かんないや」
「そうか」
「ハンター試験で思い出したけど、ネテロ会長に会ったよ」
「ほぉ、どうじゃった」
「強者特有のオーラがある人。あとかなり性格の悪いお爺ちゃん」
顎髭をさすっているゼノ爺ちゃんは、私の話を聞いて上機嫌そうに笑った。
以前昔話を聞いた時、ネテロ会長を旧友と語っていたから。
きっと当時の思い出を懐かしんでいるんだろう。
ずずっと緑茶を啜っていると、ゼノ爺ちゃんから名前を呼ばれた。
「アイ、久々の実家はどうじゃ」
「いきなりどうしたの?」
「シルバは未だにお前さんを当主の座につかせるのを諦めておらん。下手に言葉を滑らすと力づくで連れ戻されてしまうぞ。油断せんようにな」
え、マジ?
意外すぎる人物の忠告に、思わず口をぽかんと開けてしまう。
頭でも打ったんだろうか。
だって前までゼノ爺ちゃん、私をバリバリ連れ戻す派だったじゃん。
急な心変わりは嬉しいけどなんで?
訳を聞くと急にゼノ爺ちゃんは顎の下で手を組み、柔和な笑みから厳かな表情に変わった。
え、いやだ、急に怖い雰囲気出さないで。
「あやつはな。アイが当主にもならずこのまま見合いもしないなら自分が娶ると言っておる」
「うん知ってる」
実家に帰ってきた初日の夜。
父さんに呼び出されしぶしぶ部屋に入ったら、抵抗する暇も与えられず押し倒された。
耳元でぼそっと私を娶る云々を囁かれ、鳥肌が止まらなかったものだ。
母さんが許すわけないと反論したけども。
「むしろ反対するどころかキキョウは嬉々として、お前とオレとの結婚を祝福している」
などと返され泣きたくなったものだ。
実際ちょっと涙腺緩みそうになったし。
だって血の繋がってる父親に結婚しろって迫られるなんて普通ある?
絶対ないでしょ。
私の苦労話に耳を傾けてくれるゼノ爺ちゃんは、苦々しい顔をしていた。
そりゃ実の息子が孫を嫁にしようとしている事実に、頭を悩ますのも当然だろう。
唯一ゾル家の常識人ゼノ爺ちゃんだけが安全砦だ。
ちょっとだけゼノ爺ちゃんを見直していたけど。
なんだかゼノ爺ちゃんは不服そうな顔をしている。
おや?ちょーっと嫌な予感がするんだけど……
「シルバの嫁になるくらいならお前さんはわしが妻にする。孫を可愛がる権利はわしにもあるじゃろ」
ブルータス、お前もか。
言いようもないショックのせいで、両手で顔を覆ってしまう。
そこはわしが守るとかじゃなくて?
嫁にする? 正気か?
睨みをきかせてマジ?と質問すれば、本気じゃと当たり前のように言われた。
実家に帰りたくない理由その三。
“父さんや爺ちゃんが私を嫁にしようとしてくる ”
もういやだ、お家に帰らせて……