最終試験を前にしてハンター協会が用意したくれたホテル。
ここは数日過ごしたけどサービスも満足に行き届いているし、デザートは美味しいし何より快適で大満足だ。
あまりにも心地よ過ぎてうっかり寝坊するくらい熟睡してしまった。
遅れてしまったのを取り返すつもりは毛頭ないので、のんびりと準備して試験会場に入った。

サングラスをつけたスーツの男性に軽く注意されたが、気にせず彼にホテルから持ってきたクッキーの袋を押し付ける。
困惑する男性をスルーしてキルアの後ろに並んだ。

「おせえよアイ。もう集合から二十分経ってるつーの」
「キルアが部屋に入って起こしてくれたら良かったのに」
「寝起きのなまえ滅茶苦茶機嫌悪いじゃん」

起こしてくれなかったキルアに文句を言っていたが、最終試験の説明に口を閉じる。
最終試験会場を見届ける為に会長と試験官すべてが集まっていた。
ネテロ会長は口にした最終試験の説明が終わると同時に、隣にあった布で覆い隠されていたボードを露にした。

ややこしいけどトーナメントの内容は至ってシンプル。
要は不合格者一人を決める戦いで負け進まなければ良いだけの話。　
しかも私の初戦は念を扱えないただの武術家の爺さんだ。
順調に勝ち進めるのでラッキーと考えていたら他の受験者たちが異議を申し入れた。
言われてみれば組み合わせが偏っている気がする。
ネテロ会長が受験生の質問に深く頷きながら一歩前に出た。

「うむ、当然の疑問じゃな。この組み合わせはいわば試験の成績とハンターとしての資質評価が加味されておる」

いわば成績の高い人ほどチャンスがあり逆に少ない人にはチャンスがないってか。
その基準でいうと私は三回チャンスがあるから中間の順位なのかな。
採点内容に不満があったキルアが抗議している。
きっとゴンよりも自分がハンターとして相応しくないのに納得が行かないのだろう。
別に暗殺者になるのだからそんなにこだわらなくてもいいのに。

やけにむくれているキルアと共に一回戦のゴンＶＳハゲ男改め、ハンゾーとの試合を観戦する。
骨折し脳震盪を起こし形勢は明らかに不利なのに絶対にまいったと言わないゴン。
痺れを切らしたハンゾーが刃を突き付けるも意見は曲げず。
逆に足を斬る発言に難癖をつけハンゾーを根負けさせるのは別にいい。
けど納得がいく勝負をしたいからと提案するのはどうにも変わっている。
馬鹿正直というか戦いに平等を求めるかねフツー。
ハンゾーに投げ飛ばされ気絶したゴン。
そして意外な事にハンゾーの勝負を降りる宣言によってゴンが勝利した。

「・・・どうしてハンゾーは参ったって言ったのかな」
「そりゃ脅しがゴンに効かなかったからだろ」
「いいや違う。殺さずとも拷問をして情報を引き出せばいい」
「キルア？どうした顔色が強張っているようだが」

先にハンゾーが音を上げた事実に不服なキルア。
ああいう頭カチコチなタイプを相手にするのめんどいよね。
キルアはそういった相手とまだ出会った事がないからわからないだろうけど。
ゴンみたいなタイプは今回みたいなルールじゃなけりゃ、廃人になるまで拷問するのが一番手っ取り早い。
それが一番面倒で時間がかかるんだろうけど。
険しい顔をしたキルアはそのままハンゾーの元へと走っていった。
多分拷問しなかったことについて理由を聞きに行ったんだろう。

さて次は私か。
適当な伸びをして試合の準備をした。