大勢の人間に囲まれ質問攻めにされた事で、とうとうハゲの男がスシをバラした。
しかもお手軽料理だと試験官に文句を言ってしまう始末。
この一言で堪忍袋の緒が切れたメンチは二次試験の合格者はいないと断言してしまった。
試験官が私情を持ち込むのってありなんだ。

現実を受け入れられない受験者が無謀にも試験官に挑んだがあっけなく返り討ちにされた。
更にメンチが全員“ハンターの資格無し”などの挑発により会場の空気がピリつく。

ついでに馴染み深い殺気に後ろを向けば、ヒソカがにやりと薄笑いをしながらトランプを構えていた。
機会に乗じて試験官に戦いを挑むとか本当に頭どうかしてるよ。
血みどろの戦いが起こる予感にうんざりしていた時。

突然空から何かが地上に落下し凄まじい轟音と共に土埃が舞った。
カランと独特の音を響かせる人物が砂埃から出てくる。
白いひげを蓄え下駄を履いている小柄な老人。

間違いない、あの人はハンター協会会長のネテロ会長だ。
ゼノお爺ちゃんが言ったとおりの白髭を蓄えたちょんまげだ。
メンチは現れたネテロ会長と話し合いやがて私達の方に身体を向けた。

「よし！ではこうしよう。試験官は続けてもらう。ただし新しい試験には君にも実演という形で参加してもらう」
「そうですね・・・・それじゃ新しい課題はゆで卵ってことで」

ネテロ会長の采配によって再試験が行われることになった。
飛行船に乗りマフタツ山まで移動する。

再試験の内容としては断崖絶壁の崖下にあるクモワシの卵を取ってくるという簡単な試験だ。
メンチが見本を見せてくれたが、奈落の底へと繋がってそうな崖下に怖気づいたのか誰も飛び降りはしない。
人が多いと卵取れなさそうだし先に行くか。

「じゃ行ってくる」
「あぶねぇぞアイさん！！」

レオリオの制止を振り切り崖に飛び込み真っ逆さまに谷底へと落ちていく。
この胃がひっくり返るような感覚久々。
浮遊感に身を任せていると、すぐ近くにはクモワシの巣から垂れ下がっている一本の糸。
糸を掴み近くにある卵を頂戴し、さあ戻ろうとしたが中々上昇気流が来ない。
待っているのも飽きたし自力で戻ろう。
卵を割らない様に片手で小脇に抱え急ぎ足で崖を垂直に走る。
無事に地上に辿り着くと何故か殆どの受験者が目を丸くしていた。

「アイさん。貴女は一体何者なんだ？壁を垂直に走る離れ業が出来るなんて」
「ん～。なんかやったら出来た」

感心したようなクラピカに適当に返事をしてメンチにゆで卵を渡す。
塩を振りかけたゆで卵は一段と絶品だ。
ゆで卵を食べている間キルア達も崖下にダイブしゆで卵を取っていた。

ほぼほぼ全員が試験に合格した事で二次試験は終了した。