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学童気

「君、どうして楽しそうじゃないの?」
そう声をかけたのは、一人の秀麗な男の子だった。
男の子の表情妙自慢げな気がして、自分の気持ちが沈んでいるわけを話す気になれなかった。
晴れ晴れあんなに焦がれた学校に入学するというのに、ただひたすら飴玉を転がしながら、景色の変わらない汽車の窓をぼーっと眺める。
自分の話を無視されたことに気にいらないのか、男の子はカイのいるコンパートメントに入ってきて、少し乱暴に目の前に腰を下ろした。そしてまじまじと、カイの顔面を吟味するかのようにじっと見た後、口を開いた。

「…なあ、聞いてんのかよ。」

その男の子の自慢げな眉毛が少しだけ下がったのを確認して、カイは少し満足したのかようやく話に応じることにしたようだ。

「君は、動物園に行くのに蛇しか見てはダメだといわれるんだ。
 そんな動物園が楽しみ?」

「動物園ってなんだよそれ。」

カイは男の子のさぞ疑問気な顔を見て、コイツは純血貴族の坊ちゃんか何かだろうなって少し頭ごなしに決めつけてみる。
おまけに彼の纏っている、ウール素材のセットアップはどこかルシウスと似ているからなのか。

「魔法動物をたくさん集めた見物会みたいなものだよ。」
「なんだよ、そんなの密漁と変わんないじゃないか。」
「そうかもね、ある意味。でも狩りをしなくていいから喜ぶ動物もいるかもよ。」
「なんかつまんねえなあ、それ。」

目の前の男の子は明らかに表情を歪める。優しいのか世間知らずなのか、鋭いのかわからない男の子の言動に、カイはむず痒さを覚える。この飴がすべて舐め終わるころには目の前の彼が立ち去ればいいことをただ願って。

「で?どうして君は蛇しか見たらだめなの?」

思いがけず話を戻したことにカイは少し驚きつつも、平然を装う。

「蛇以外を見たら、死んじゃうかも。」

「逆だろ?バジリスクの目を見たら、絶命か石になるんだよ。
なのに君は蛇しか見てはダメなのかよ?君にそう言ったソイツは酷い奴だ。」

男の子は、カイの頭の中を先ほどから支配し求めている人物を非難したのだ。そのことにカイはとっさに腹を立てた。だけど、そのあと少し自分が惨めになったのは明らかだった。

「なんだよ、どっちにしたって石になって砕かれるっていいたいの?」

「君は魔法使いだろ?動物になんか、蛇になんか、バジリスクになんか負けないようになればいいだろ!せっかくほかの動物がいるってのに、狡猾な蛇しか見られないなんて俺は絶対やだね。」

彼はそう言って、にんまりと笑った。
また自慢げな顔に戻ったから、またカイは腹を立てた。
だけど、彼の言っていることは、少しだけどこれからの得体のしれない勇気を生み出してくれたのかもしれない。

「グリフィンドールに行きたいんだね。」

カイはそう微笑み彼の右手にキャンディを差し出した。
すると男の子は少し耳を赤くして、そのキャンディを受け取った。

「もちろんさ。僕には騎士道が似合う。」

そう言って、さっそうとコンパートメントから姿を消した。

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