幼少期
ヴォルデモートは、闇の魔法使いとしてカイを1人前にしなくても、魔法使いとしてある一定のラインに立たせたかった。
そのためカイにまもなく魔法の杖が与えられたが、困ったことにカイは杖の扱いはめっぽう苦手だった。
何度やっても、ブシューと杖先から煙を出すばかり。
「もう……杖無しで持ち上げていい?」
カイは、ウィンガーディアムレビオーサなんて唱えなくても軽いものなら杖無しで浮かせることが出来るので、わざわざ失敗を重ねることに無駄を感じていたのだ。
「だめだ。手だと、どうも制御が不安定だろう。
杖に魔力を流し込むのが今後どう考えても効率がいい。」
確かにその通りで、杖無しで織りなした浮遊呪文が勢い余り天井に本をぶつけて凹んだような跡があった。
「お前は猿か?繊細な動きとなるとめっぽうダメだな。」
ヴォルデモートは頭を抱えたが、カイはキキーっとふざけて猿の真似をし出すだけで余計にカイの集中力を削ぐだけだった。
「第1、発音の問題だ、丁寧に言え。どの音を切り取っても誰もがそのアルファベットが分かるくらいに。
それと振り方だ。カイのでは弧が完全に直線だ。」
「弧?なにそれ。」
言葉じゃ分からないようなので、仕方なくヴォルデモートはカイを抱え込むように背後回り込み小さな手で握る杖を大きな手で包み込んだ。
そして、言葉と一緒にレクチャーをして見せた。
「ほら、やってみろ。」
ヴォルデモートがそういいカイは少し緊張した面持ちで杖を降った。
すると、目の前の本は僅かにだが浮かび上がった。
「う、いた!みた?みた!!!?」
「ああ、見た。ネズミも遠れないほど僅かにだがな。おい、飛ぶな。」
カイは、歓喜に満ちた様子で目を輝かせヴォルデモートの周りをジャンプした。
「なんか、手からジーンとして伝わった。魔法を使ってるって感じ!!」
「使ってるからな。」
「凄いね、ヴォルデモートは教えるの上手だね、先生になったらいいのに!」
「……そうしたい時期もあったさ。
叶わなかったが。」
「なんで叶わなかったの?……って、分かっちゃった。 こんな、意地悪な先生いないもんね!!!」
……ピキっと空気が固まった。
ヴォルデモートはカイを呪文で浮かせた後2mはあるキャビネットの真上に担ぎあげた。
「わあ!下ろしてよ!!!こんなとこにいたら降りられない!!!」
「私は意地悪だからな。それはできないんだよ、悲しいな。」
高いキャビネットの上で涙声で、懇願するカイをヴォルデモートは見上げてふっと笑った。
「せいぜい、私が帰ってくるまでそこで反省することだよ。……杖は与えよう。」
背後からまだ子供の叫び声が聞こえるのを気にもかけずに彼は姿をくらました。
