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【短編】ハリーポッター成り代わり!


学校が終わった。夏休みだ。
今年は色々なことがあった。いや、正しく言い換えれば、「今年も」だろう。正直よく死ななかったと思うほどにそれは危険なものだった。
でも、あれもこれも全部今日のためだったと思えばそれで良かったと思ってしまうのだ。

なにせリジーは今日この家を出ることが出来るのだから。

この家にいても、誰1人として愛して貰えなかった。
リジーは物心がついた時から愛されることをとっくに諦めていた。ペチュニアおばさんから、どれだけ嫌味を言われようが、怪物を見るような目を毎日向けられさらにはもういないものとして扱われようが、リジーは慣れてしまっていた。一々、心に傷を負うことはとても疲れることだから。


しかし、ホグワーツに入学すると諦めていた愛情に焦がれてしまう。大好きで仲のいい友達に囲まれて過ごす楽しい日々が、夢みたいに感じるからだ。リジーがそう感じている間も、彼らは愛する家族と当たり前に過ごしている。

でももう、ここを出ればそんな事を考えなくて住むのだろうか。その度に惨めな気持ちにならなくて済むのだろうか。
リジーは、トランクに自分の服をどんどん詰めていきながらそんなことを考える。タータンチェックのプリーツスカートや、胸元にリボンがあるシフォンブラウス。ふわふわの白い毛皮のコートに、ベルモットのフリルのワンピース。
どうもガーリーすぎるこの洋服は全てが近所に住むアルバーン家の長女・ゾーイのお下がりの物。ゾーイはリジーの4つ上なので、丁度ゾーイが成長に伴って着れなくなった時期に、リジーがピッタリになる。
背丈もほぼ一緒なのでリジーには持ってこいだとアルバーン婦人が大量に送ってくださる。「お前には一銭も払いたくない」が口癖のペチュニアはそれを毎回喜んで受け取るのだ。
本当はこんな服着たくないなんて、とても言えないリジーはそれをしょうがなしに毎日着るしかなかった。
鏡に映る自分が、酷く嫌いだった。

今日は、リジーが持っている服の中で1番カジュアルな物を選んだ。唯一、シンプルなパワースリーブのデニム生地のワンピース。

家を出たら真っ先にジーンズを買う。
新しい楽しみが増えたリジーの胸のドキドキはもう収まりそうもない。

もう忘れ物はないだろうか。
といっても服と勉強道具以外、ほぼものを持っていないリジー。それでも一応引き出しを確認すると1つの石があった。小さな透明のターコイズブルーの石だった。確かこれは、6つの頃ダドリーから貰ったものだった。海で拾ってきたらしい。

「リジーの瞳の色に似てるから。」

照れくさそうに渡してくれたそれはリジーが人から最初に貰ったプレゼントだった。

ダドリーの事はとてもじゃないが好きではない。
彼は、リジーの事をろくでなしといつも馬鹿にして笑いものにしてきたからだ。
かと言って憎い程に嫌いではない。
傲慢で意地の悪くても、この家の中では一番マシだったからだろうか。少なくともダドリーがいるとリジーへの風あたりはいつも減っていた。

持って言ってやるかと、心の中で嘲笑いながらその石をトランクに放り込んでリジーはようやくトランクのベルトを閉めた。














「行こうか、リジー。」
後ろから呼び掛けられたその声を合図に、リジーは12年住んだ立派なレンガの家に背を向けた。
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