彼と言う人を考えて(全9話)
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「瑠依ちゃんは、僕のこと好き?」
「うん……うん……好き」
「僕とキスしてくれる?」
「不二くんがいいの……!他の人にはあげたくない!」
そう瑠依は唇を噛み締めポロポロと泣いてしまい 不二はハンカチで拭っていくが、間に合わなかった雫が顎を伝って落ちていく。
不二は震える息を吐きじっとしている瑠依を見つめるとそのまま引き寄せるように唇を重ね合わせようとして
「兄貴、いる、か、、、」
ガチャリと扉を開けた裕太が兄と今まさにキスをしようとしている見知らぬ女の子である瑠依を見て固まった。その顔はいっそ哀れなくらいに真っ赤に染まっている。
「か、帰る!」
「ダメ。裕太も一声かけてよ」
折角のチャンスを滅多に帰ってこない弟が潰し、不二の腕の中に閉じ込められ身動きできない瑠依がいて、不二もまた哀れな被害者であるが瑠依を離さず、真っ赤になった裕太がバン!と勢いよく扉を閉め落ちるように階段を降りて行ってしまった。
玄関から出ていく音がしないが時間の問題だろう。
「不二くんっ……!」
「うん、続き、しようか」
「しないよ!私、帰るから!!」
「嫌だ、キスするまで返さない」
雰囲気こそ崩れたが己のペースに戻ってきた不二の同じポジションに戻った瑠依は互いに「する」「しない」の攻防を繰り返し不二は瑠依のことをベッドに押し倒した。
両手に指をからめ握りしめ縫い付けるように覆いかぶされば抵抗の術をなくした瑠依は真っ赤な顔で眉尻を下げ先ほどとは違う泣きそうな表情に不二は笑ってしまう。
「ね……いいよね」
「だめ……!」
ゆっくり顔を寄せ優しく耳元で囁けば瑠依は緩く首を振るも不二は頬に口づけ また囁く。
「ね?だめ?」
「だ……だめ……」
「本当に?」
「う……だめ……」
だんだんと言葉での抵抗が薄れていく瑠依に愛しさが爆発しそうになるも頬をすり寄せ耳元にピタリと唇を当て甘く、囁く。
「瑠依ちゃん」
「っ、ふ…じ……くん……」
そんな掠れる声に小さく笑い そしてもう一度 小さく小さく息を吐き耳元に口づけてから口にした。
「最後に聞くよ?…いいよね、キス、しても……」
「……だ、だめ……んっ…」
もはや抵抗のない瑠依の言葉を聞くも 不二はその唇を塞ぎ吐息ごと閉じ込めると瑠依の手に力が入りぎゅうと握り締められ、同じく握り返しながらも口づけはやめない。
ちゅ、ちゅ、と触れては重ね、離れては重ね、そうしながら何度となく重ね合わせ続ければ瑠依の体から力が抜け、とろんとした赤い瞳で見つめられるとたまったものではない。
「そんな顔しないで」
なんて、どの口が言っているというような言葉に瑠依はまた頬を染め 顔をそらすが赤い顔は隠せていない。でもこのままこの場でこうしていたら男としての忍耐が持つかどうか。それに裕太もいる。
二兎を追う者は一兎をも得ずと言うが不二が一兎どころか目の前とすぐ近くの二兎めを得ないはずもなく。
「瑠依ちゃんに紹介しておこうかな」
と不二は瑠依を抱き起こし手を繋いで階段を降りてリビングに行くと、顔を真っ赤にした裕太がそこにいた。
「僕の弟の裕太。裕太、僕の彼女の瑠依ちゃん」
なんて、完全に自分のペースを取り戻した天才についていけない 2人は顔を真っ赤にしたまま俯いてしまった。
「ふふっ……仲良くしてね」
どの口が何を、なんて言えなかった。
彼と言う人を考えて(完)
2026/06/18
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