彼と言う人を考えて(全9話)
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テニスコートのフェンス外から写真を撮ろうと構えていたら「あ」なんて声が聞こえ振り返ると前に屋上で一緒にお昼をした越前くんがいて、その横にはいかにもスポーツマンとした短髪の男子がいて。
「何だ?知り合いか、越前」
「不二先輩の彼女さんっスよ」
「マジ!?」
「いや、違、く、……ないのか……?」
つぶやいた越前くんと男子と疑問いっぱいの私のつぶやきに男子は「先輩も隅に置けねえな、おけねえよ」なんて笑い
「瑠依ちゃん」
なんて背後から声をかけられた。いつも耳にしている優しく甘い声。カメラ片手に振り返ればやっぱり不二くんがそこにいて越前くんともう1人の男子に笑いかけ爆弾を投下する。
「桃、僕の大切な彼女だから口説こうなんて思わないでね」
「そんなことできないっすよ~!確かに可愛いと思いますけど」
砕けてはいるが「桃」と言われる男の子は不二くんに敬語を使っているので多分2年生だろうことは分かり、どうせならと3人並んでもらってカメラを構えた。
不二くんがなぜか嬉しそうにしておりそういえば彼もカメラが趣味だったことを思い出す。色々と教えてくれたので 。もちろん、カメラについても自分の趣味についても。
「できたら焼き回しいいっすか?」
「うん、いいよ」
「俺も欲しいです」
「瑠依ちゃん、僕は瑠依ちゃんと撮りたいな」
「部活しなよ」
「僕のテニスしてるとこ見たいの?」
クスッと笑った不二に瑠依は口端を引き吊らせ越前くんと桃くんに手を振りテニスコートを後にした。
「ふふっ、つれないなぁ」
「不二先輩やるじゃないっすか!」
「もう一度言うけど手を出したらただじゃおかないよ」
「……俺コート入りまーす」
桃城は「あ!越前まてコラ」と慌てて2人でコートに入って行き不二は小走りに行ってしまった瑠依の姿を見送った。
駆け足でテニスコートを後にして瑠依は校舎内に入ったところで大きく息を吐き出し他の部活をする生徒の写真を撮って回るが部室に戻ってからデジカメのフォルダを見直して不二くんと桃くんと越前くん3人の写真やその前の写真を見てしまう。
「(カメラ越しなら見られるのに)」
直接見ると怯んでしまうのはなんでだろうと考え、深いため息を吐き出してしまい他の部員が視線を向けてきた。
「瑠依ちゃん先輩 見せてください!」
「どうぞ~」
「俺も俺も!」
「どうぞどうぞ」
フォーカスで背景をぼやかせたりセミで撮ったりしたものを見せればあれこれ言いながら見てくれて。
「あ!テニス部の瑠依ちゃん先輩の彼氏さん!」
「嘘っ!?噂の不二先輩?!」
今度は別の意味でキャーキャーと始まりもう彼氏発言については諦めが入っている。
明確に拒絶するほど嫌いではないが、からかうような態度さえ取らなければ好意はあるけれど本当に不二くんの恋人でいいのだろうか。
そう深く考えてしまうのは仕方がないだろう、本当に不二くんは私のどこがいいのだろうか。私は本気で不二くんを好きと言えるだろうか。好きか嫌いかでいったら嫌いではない。むしろ好きな気持ちはあるけれど、彼の好意もわかるけれど、そこに『真意』が見当たらない、わからない。
不二くんを好きでいるあの子たちのように私も同じ重さの好意を持っているのだろうか。
沈む夕日に部員は帰宅していき写真のデータをパソコンに移し替え己のフォルダに振り分けて帰宅の準備を終え、残る部員に声をかけ下駄箱に行くとそこには不二くんが立っていて。
赤い夕陽にくらみそうになるくらいかっこいい不二くんは今度は緩やかな笑みを浮かべ いつものようにドロドロに甘い声で私の名を呼んだ。
「まだ帰ってないみたいだから待ってみた」
なんて嬉しそうな不二くんの声にドキリとし、「う、うん」と、そう拙く返しても不二くんは気にした様子もなく靴を履き替えた私の手を握りしめてきていつものように指を絡めてくる。
それに少しも慣れることもなく緊張してしまっても不二くんはやはり気にした風もなく話しかけてくる。
「そうだ、日曜日は暇?良かったらデートしない?」
「でっ、ひまっ、にち……うう……あいてる……」
と吃りいっぱいに返事をすれば
「決まり。10時に駅前でいいよね?」
なんて嬉しそうに笑いかけてきた。
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