彼と言う人を考えて(全9話)
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足の捻挫は2日で良くなり病院に行かずに済んだことにほっとした。でないと不二くんが意地でもついてこようとしていたので。
そして放課後、清掃当番が回ってきていた私は教室のゴミを集め袋に入れ持ち上げる。すると不二くんが手伝ってこようとしたが不二くんは日直のため今日1日のことをまとめなければいけない。
ある意味嫌な記憶のある焼却炉まで行くとゴミが適度に転がっており私は小さく息を吐き出すと少しくらい整理しておくかと手に持っていたゴミ袋を地面に置いた。
「瑠依ちゃん遅くないかな?まだ戻ってないよね」
「うん、まだだね~」
床のモップがけをし机を元の位置に戻してから不二は日誌を書き、チラチラと瑠依が出て行った 教室の出入り口に視線を向けるが戻ってくる様子がない。
ゴミを捨てに行くだけだが手伝いという名の同じ時間が欲しかったんだけど日直として日誌を書きそれでもなかなか戻ってこない瑠依に痺れを切らし、もう一人の当番の子に日誌をお願いしてからゴミ捨て場に足を向けた。
以前彼女が嫌がらせを受けていた場所。普通なら一刻も長くいたいとは思わないだろうし、もし他の女子に別の嫌がらせを受けていたらと思うと気が気じゃない。
そういう思いで焼却炉まで行き角を曲がろうとしたところで不意に楽し気な声が聞こえ 足が止まってしまう。
瑠依ちゃんが、男子と歓談している。相手は、
「良かった、ひどい怪我になってなくて」
「ちょっと捻っちゃったくらいだって、みんな大げさだよね」
そう相手は2日前に瑠依ちゃんに不慮とはいえ足の捻挫の元となった別のクラスの男子。
ガサガサとビニールの音を立てながら2人は話しており、そっと覗きこめばゴミ袋の整理をしながらの会話であると知り瑠依ちゃんの緊張の抜け切った笑顔に胸が締め付けられるように苦しくなる。
僕にはあんな笑顔や楽し気な声を向けてくれたことなどないというのに。
建物の影に立ってぼんやりとしていたら「よし」なんて聞こえ
「あらかた綺麗になったからもういいよな」
「そうだね、手伝ってくれてありがとう」
「俺こそ、邪魔じゃなかった?」
「ううん、助かった。ありがとうね」
2人分の足音が近づいてきて角を曲がってきたところでその男子と瑠依ちゃんと僕とが顔を合わせると形となり僕の存在に2人して驚いているが男子は「不二か」と笑い瑠依ちゃんも 「不二くん」とつぶやいた。隣の男子に向けた笑顔は、ない。
「瑠依ちゃん、教室まで一緒に行こう」
でも僕はそれくらいで諦めたり手を引いたりなんてしない。瑠依ちゃんの手を握りしめれば瑠依ちゃんはあたふたと手を引っ込めようとしたが指を絡めて握りしめればそれもできないしさせない。
「おー、見せつけんじゃんか!」
「こっ、ち、違うよ!これは、」
「2人で戻ろう?」
有無を言わせず笑いかけ 歩き出せば 後ろで「おー、こわ」なんて。
「……瑠依ちゃん」
「わっ!耳元はやめて!」
手をつないで教室に戻る途中 ずっと緊張した様子の瑠依ちゃんの名を耳元で囁けば頬をかすかに赤くした彼女が必死で紡ぎ僕は笑ってしまう。でもね
「彼に見せつけるように、に違うはないよ?違わないよ。見せつけるために手をつないだし、今は僕が瑠依ちゃんに触れたいから繋いでいるんだ」
「ふ…じ、くん…」
「ふふ……かわいいね、真っ赤だよ?」
「不二くん!!」
クスクス笑いながら繋いでるに手に力をこめ教室に戻ればもうほとんどのクラスメイトはいないしいたとしても帰宅部かこれから部活だろう、瑠依ちゃんは写真部だ。今日って活動あったっけ?
ちなみに僕もこれから部活で扱かれるのだが
「瑠依ちゃん」
「な、何……?」
「そんな怯えなくても取って食べたりなんてしないよ」
僕の呼びかけに一瞬肩を揺らしたが思わず笑ってしまうと そこでようやく瑠依ちゃんは肩から力をなくし、そっと繋いでいた手を離すと全身からほっとした感が出てくる。ひどいな。
「ねえ、テニス、写真撮ってかない?」
カバンを持ちながら問いかけてみると瑠依ちゃんはきょとんとしてから「ああ」と口開けて呟き
「そうしようかな」
なんて優しい笑顔に今度は別の意味で胸が苦しくなってしまった。
「不意打ちか……やるね」
瑠依ちゃんは不思議そうに首を傾げていた。
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