ささやかに愛してる(全10話)
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卒業式の練習が組み込まれるようになり、正直、卒業に練習なんて必要なのかよと思いつつ校歌を歌う不二をチラリとみるとばっちり目があって笑いかけられ互いにまた正面を向く。
式までの一連の流れをなぞり教室へは各自自由に戻るのだが私は不二と肩を並べる前に他クラスの女子が不二を囲み歩いている。
正直すごいなと思う。本命の前やぞ。
しかも先日のバレンタインでチョコを受け取ってもらえなかったこともなかったことにして話しかけているのだから本当に強い。メンタル鋼かよ。
不二は私を振り返ってきたが女子がそれを遮り、楽し気に声をかけ邪見に扱えない不二が困った笑顔で対応し何とか離れようと頑張っている。頑張れ~。
「とられちゃってるよ?いいの?」
「いやぁ、堂々としすぎてすごいよね」
「あんたメンタル強すぎない?」
友達に好き勝手言われ不二を囲む女子は明るく、そして軽くボディタッチなどをして話しかけており、私は友達とそれを遠巻きに見ている。
なんか色々心配されてるけど不二は私を取るという確信があるため、あんまりどうとも思わないけど嫉妬の一つもしないのはどうかと思うと言われると私も困ってしまう。
「しゃーねえ、取り返してくるか」
「しゃーねえって……」
私のポツリとした呟きに友達はポツリと返し私は私で友人に手を振り女子に囲まれている不二の背中に声をかけた。
不二は振り返り、女子は睨みつけてきたけれど私は気にせず不二の手を握りしめ距離を詰めてしまう。
基本的に私はクラス以外ではこうして不二に触れたりはしないのだが、今の状況と友人の助言で私は不二の恋人アピールをしてみせた。不二が嬉しそうに口元を緩ませる。
「一緒に教室戻ろ」
「うん」
不二に絡んでいた女子はまるっと無視をしてそう声をかければ不二は指を絡めてきて手を繋ぎ返してくれた。
それを見た他クラスの女子は私を睨みつけながら入る余地なしと渋々離れて行き同じクラスの男子に私と不二がからかわれる。
「見せつけかよ~」
「ごちそうさま~」
なんて笑われ不二も私も「ええやろ見とけや~」なんて返していく。
「でも春奈ちゃん 珍しいね。教室と下校以外で 僕に触れてくるなんて」
「それは、まあ悪い虫がひっついてたら取り返しますわよ」
「嫉妬してくれたの?」
「してるように見える?」
階段を上がりながらそんな風に話していれば不二は私を見下ろしてからいるよ眉根を下げ「見えないなぁ」と笑い私も笑い返す。
「春奈ちゃん嫉妬することある?」
「不二を信じてるから特にない」
不二は軽く目を見開いて私を見つめ、私はその不二の目をを見つめヘラリと笑い「だって」と、
「不二が好きなのって私でしょ?もし違ったらこうやって手を握り返してくれないし笑いかけてくれない」
「……春奈ちゃんが かっこよすぎて何も言えないよ……」
「へへへ」
声のボリュームはないけど、周りは私と不二の会話をしっかりと耳にしており、私を睨みつけていた他クラスの女子は諦めたように早足で行ってしまい教室に入ったところで腕を引き寄せられ抱きしめられてしまう。
クラスメイトは慣れたように 気にせず各々が自由に動いている。
「僕も格好つけたいのに」
「不二は十分格好いいよ。そのままずっと私を愛してね」
なんて見上げれば今度は驚いたように大きく目を見開き「はあ」とため息を吐かれてしまった。
「……また、かっこよすぎてどうしよう…でも、うん、そうだね」
そう呟き不二はニコリと笑うと口にした。
「愛してるよ、春奈ちゃん」
「ほら、かっこいい」
なんて2人で笑いあってしまった。
周囲は生暖かい目で見つめてきていた。
こいつら、高校でもこうなんだろうなぁ、なんて思いで。
ささやかに愛してる(完)
2025/06/29
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