ささやかに愛してる(全10話)
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卒業式も近い中でバレンタインは顔の良いモテル3年にとってはある意味戦争であった。もれなく不二が入っている。
私と不二が付き合ってるのは周知の事実なのだがそれでも狙う後輩やせめてチョコレートくらいはという同学年女子もいて、正直あげなくてもいいんじゃね?と思い至った私は友達すすめの通りチョコを用意しなかった。
友達が悪そうな顔をしていたので悪い予感がしたのだが、バレンタイン当日。今更すぎる。
部活も引退、高校は青学高等部。もちろんテニス部で私も私で青学高等部への進学が決まっていたため気を抜いていた。抜きすぎていた。
登校した不二の下駄箱にはチョコの包みがこれでもかというくらい詰め込まれていたし下駄箱に来るまでもチョコを渡してくる女子がいて、そして教室の机には山積みのチョコ。
ここまでモテるとは驚きを通り越してドン引きである。持って来なくてよかった。
しかも教室に来るまでもチョコを渡してくれる女子は大勢いたということで、なおさら持って来なくてよかったと思う。荷物だもん。
優しい不二は直接渡しに来た分だけは断り、下駄箱と机に詰まるチョコだけは「とりあえず」持ち帰るつもりだろうがこの不二の表情を見る限り このチョコたちは多分もったいないが処分だろうな。
というか横に
授業間の10分でも別のクラスの子が渡しに来たりしていたのだから私が恋人でいいのか本気で考えてしまった昼休み。
「教室は厳しいから」
2人きりになれる場所に行こうと手を引かれ、2月なのに校舎の屋上に連れられてしまった。寒いやろがい。
それでも不二が「はあ」と小さくため息を吐きゆっくりと体を伸ばしお弁当箱を広げていたのでそれなりに神経を使っていたんだろう。
そういえば菊丸君も結構もらってたな。すごいな、モテるということは。
ひそかに感心しながらリラックスした様子でお弁当を食べる不二と2人きりで話していれば冷たい風が吹き縮こまってしまう。
でも今屋上から戻ったらまた不二が気を使ってしまうため そこは我慢しようとほんの少し震えてからお弁当を食べきった。
さて、この後お昼が終わるまで屋上にいるんだろうかという視線を不二に向けるとまた冷たい風が吹き二の腕を擦ってしまいスカートに隠れていない足が冷えていく。
まあタイツ履いてんだけどさ。
「春奈ちゃん」
「へあ?あ、何?」
特に大した話題もなく空を見上げていた私に突然不二が声をかけてきて、間抜けな声を出しつつ不二を見ると眉根が下がっている不二が私を見つめており
「寒いよね、ごめん」
なんて言われてしまった。
いやまあ寒いけど不二がリラックスできるのならこれくらい大丈夫と笑ってみせると困った表情をされ両腕を広げてみせる不二に胸に何の躊躇いもなく飛び込んだ。
テニスで鍛えた体幹で不二は倒れることなく私を抱きしめてくれて、私は私で不二の腕の中でぬくもりを感じてしまう。
人肌って、だいじ!
不二の温度に感謝しつつポツリとつぶやかれた言葉に顔を上げると嫌に真剣な瞳と目があってしまった。
「春奈ちゃんは僕にくれないの?」
「欲しいの?朝、チョコの包みを見て絶望していたのに欲しいの?」
「そんな顔してた?」
「してた」
絶望と同時に引きつってもいた。まあそれはかなり近い位置で見続けていないとわからないレベルだったのだけれど 、不二は私のことを抱きしめながらまた困った表情を見せる。
「確かに去年よりすごいなって思ったけど……」
私と付き合うちょっと前か。
「本命からは欲しいかなって」
「ごめん、持ってきてない」
「そうとは思ってた」
でも前のデート中にバレンタインの話題で不二にはキスをつけるって言っちゃったからチョコはないけどキスくらすっか!と頬に口を寄せ、ちゅっと口づけた。
「ほっぺだけ?」
「口?」
「うん、口」
間髪のない答えに笑いつつ今度はそっと唇を寄せれば不二の手が私の後頭部にあり舌がそっと割り込んできて、それを甘受しつつぎゅうと抱きしめる力を強くすると不二が小さく笑った。
ちゅっ、という小さい音を立て離れた不二の顔を見つめる と、不二は小さく「参ったな」と呟き屋上のコンクリートに押し倒されて、見下ろされてしまう。
何に参ったのだろうかと尋ねようもしたら今度は容赦のはないキスに思考はさらわれてしまい、そのまま昼休みの終了の鐘がなるまで深い口づけは続いていた。
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