ささやかに愛してる(全10話)
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「あれ、忍足くん」
「ん?あ、青学の大月さん」
2人して奇遇やなあなんて話しながら映画館前で鉢合わせた。もちろん2人は約束なんてしていたわけではない。
私は別の人と約束をしていたのだが、少し用事が入ったから2時間遅れると言われたので「じゃあ」今日のデートはキャンセルしようと1人で映画を見に来て。
「大月さん何見るん?スプラッタはやってへんよ?」
「今日はスプラッタじゃなくて優待券あるからこれを」
「俺も見たかったんやけど!」
「1枚で2人OKだから一緒に見る?」
「ええの?恋人さんに悪ない?」
忍足くんには私の恋人の話はしていないというか、そこまで接点はないけど氷帝生の中では割と話していた方で互いの好きな作品嗜好は話していた。それだけ。
「恋人さんは用事が入っちゃったし、チケット今日までだし全然OKだよ。ラブロマンスなんてジャンル見ないからちょっと新鮮」
「ラブロマンスはええで~…純愛は胸にくるもんがある」
忍足くんは基本映画は1人で見に来るタイプらしいし、どうやら恋人がいないらしいし、私といて平気かと問うと「それは自分の方やろ」なんて言われたので笑って「大丈夫」と言っておく。
上映時間もすぐだし、チケットもあるし、席の指定もされているためすんなりと中に入り映画を並んでみることになった。
「……あかんわ……」
「何が?」
「そこであんなん言われたら守るしかないやろ……」
「あはは、やすっ」
あんなタイミングで放ったヒロインの言葉に私が同調できないのはスプラッタの極限状態の本音ばかりを聞いていたから。
まあどっちもフィクションだが。
しかし忍足くんは感動したように「良作やった」と満足しているし楽しかったなら何よりだと映画館を出てすぐ目の前の喫茶店に入り忍足くんの感想を聞いて頷いていたら、ふと思い出したように忍足くんが
「恋人さんから連絡来てへん の?」
なんて聞かれスマホを取り出した瞬間点滅した。
あかん。映画館からサイレントモードにしとった。
画面に表示されている恋人の名に慌てて出るとそれはもう楽しげに「楽しい?」なんて言われ見渡してしまい、ガラス越しに不二の姿をとらえてしまった。笑顔が怖い。怒ってるやつじゃん。
「どないしたん?」
「あっ、と……」
『そこにいて』
「……分かった」
「ばれたん?」
「……10秒後に幸あれ……」
カランという音とともにマジで10秒後に不二が私と忍足くんのテーブルまで来て青学の天才と氷帝の天才が顔を合わせた。
「春奈ちゃん、浮気?」
「いや……」
「何や、不二が大月さんの恋人なん?」
「まあ……」
忍足くんは大して気にした様子もなくアイスティーをすすり、不二が目を開いて私を見下ろしてくる。だから怖いってば。
忍足くんが他人事のように「修羅場やんけ」なんて笑っている。笑うな馬鹿野郎、それどころじゃないわアホたれ。
「男の嫉妬はみっともないで。みみっちいからやめや」
「悪いけど忍足、みっともなくても構わないよ。せっかくデートの約束ができたのに他の男といるところを見て平然としてられるほど僕の心は広くないから」
「うお、立派な本音やん」
みみっちくて結構とした不二が私の腕を掴み立ち上がらされ私と忍足くんの分のお茶代を払い喫茶店を出て歩かされるが
「不二……不二!痛いって、痛いってば!」
「少し、静かにしようか」
私の腕を掴んでる不二に連れられたのは人のいない小さな公園であって不二は私をベンチに座らせ目の前に立たれた。
「……不二?」
「ねえ、最初に言ったよね?僕は嫉妬するよって」
告白された時、見かけによらず嫉妬深いけどそれを含めて付き合ってほしい、
「春奈ちゃんのことが大好きだから」
青学のテニス部員はすでに知っている事実だから少しは大丈夫だけど「何で」忍足といたのかな、なんて。
「えっと……ごめんなさい…?」
「許すと思う?」
「許してくれないならどうするの?」
不二はじっと見下ろしてきたかと思うとふんわり笑い私の足の横に膝を置きグッと距離を詰めてきて嫌な予感しかしない。
「僕にキスしてくれたら少しは考えてあげる」
「……少ししか考えてくれないならしない」
不二は少し黙った後詰めていた距離を離し掴んでいた腕も離し私は反射的に不二の手を握りしめてしまい
「キス、するからっ、」
行かないで、と言うと不二は笑みを深め近づいてきて、図られたと思った時には舌が唇の隙間から滑り込んできていた。
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