恋病(全11話)
「――さん!付き合ってください!」
そんな声が聞こえた忍足はその名前に反射的に息を殺しちらりと人の少ない階段前を見ると彼女が男子生徒に告白されており忍足はムカついた。
なんやねん、あいつ。
「その心は」
は?心?忍足は忍んでみつつ 男子生徒は顔を赤くし「背が」高い子が好きなんです!というセリフに彼女はペコリと頭を下げた。
よろしくお願いしますとでも言うのだろうか、アカンわそれ、ちょお腹立たしい。のに
「ごめんなさい」
彼女の口から出たのはそんな言葉で
「何本気にしてんだよ!」
なんて複数の男子生徒と女生徒が2人顔を出した。確かよく跡部に話しかけてる女子。無視されとるけど。
「別に本気にしてませんよ」
背の高い女が好きなんてだけの中を見れないやつなんてそもそも興味の対象外です、と否定した彼女に男女とも「は?」声を合わせ
「背が無駄に高いだけで何言ってんだか」
なんて言われており、そして標高の高い山で煽られている。
「私の背が高いだけを理由に何かするのやめてください」
「どうせ誰も相手にしてねえんだから受けとけよ」
彼女はグッと息をのみ下で手が握りしめられ俯きそうになっているの見た時には彼女に告白(偽)をした男子生徒の頬をひっぱたいて彼女から庇うように立ってしまっていた。ほんま、腹立たしいやっちゃ。
「自分ら人傷つけて何が楽しいん?そんなんやからまともに相手されないんやないの?そこんとこ気づかれへん時点で自分ら終わってんねん、ほんまアホちゃうか?行くで」
忍足はポカンとする数名に吐き捨て彼女の手を掴むとその場を後にして、彼女は彼女で混乱したように言葉もなく忍足に従いついてきて、程よく離れた人気のない所まで来ると振り向き、慌てる。
「あ、!えっと!は、ハンカチ!今無い!!」
彼女はポロポロと涙を流して泣いていたのだ。今ここでハンカチをポケットに入れ忘れて朝の己を呪いたい。
彼女は彼女で両手で顔を覆い小さく震える息を漏らしながら消えそうな声で「ありがとう」と呟いた。それを耳にした忍足は咄嗟抱きしめてしまい頭を撫でる。
ちょっと笑えないくらい心臓が爆音を奏でているがそれが聞こえなければいいと酷く緊張していれば、彼女も彼女で忍足に抱きしめられたそれに驚き顔をあげた。
唇が触れ合いそうになるほど の至近距離にある顔はそれはそれは可愛くて、忍足は1歩身を引いてしまいそうになるが耐えた。
「あー……と……ああいうの…よくあるん?」
「けい……跡部君が好きな子はよくやってくる」
よくやってくるんか。ムカつくな。なんやねん、それ。
「あー…その…自分、跡部とは付き合うとらんの?ほんまに。仲良うしとるけど」
「けい……跡部君とはまあ、仲がいい友達だってだけ……」
「下の名前で呼び会うくらいには仲ええやな」
助けて、話を振ったのは自分だけど、ちょっとした嫉妬心であたるように言ってしまったが、彼女はきょとんとしながら涙を拭い嫌味にも思える それに気付かず頷いた。
「跡部君って呼ぶと周りが騒がしくなるから下の名前で呼び会うかって話になって。それに折角貰った名前なんだし 呼んだ方が幸せでしょ?」
「なら俺も侑士って呼んでくれへん?」
「え゛」
「あと、俺も下の名前で呼んでもええ?」
「だ、ダメ!」
「……何して?」
すぐ目の前にある彼女の目を見つめると彼女は軽く頬を染め首を振り、もう一度「ダメ」と言ってから腕の中から逃げるように走って行ってしまった。
「~~……今のは反則やろ!」
潤んだ瞳と目尻を赤くした顔は本当に可愛くて忍足はその場にしゃがみ込んで頭を乱暴に掻いてしまう。
でもなんで跡部は良くて俺はアカンのか。もしかして俺に言われると照れる、とか、恥ずかしい、とか……
「はあ……んなわけあるかいな……映画やドラマやのうし、気ぃ持ちすぎやろ俺……」
もう一度小さく息を吐いてから忍足は立ち上がりしょんぼりとしながらそのままその場を後にした。
後日 2人から1人ずつ話を聞いた岳人は笑い転げるところであった。
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