木枯らし落ち葉、残るは『 』(全9話)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
教師の都合で絵美のクラスと幸村のクラスが合同で美術の時間となり幸村がデッサンのモデルとなった。
女子はわき、男子は「まあ、」幸村だし適当にやろうぜとイーゼルを置いた。
その中にはもちろん絵美もいて、ちょうど幸村を真横から見える位置をとっており幸村が「正面じゃないんだ」という言葉を柳は耳で拾ったが何も知らないふりをしようと思う。英断。
授業開始直後は話し声が聞こえたがそれもすぐなくなり、みんな、特に幸村を正面から書く女子は真剣に見ており筆を動かしている。
そんな中、絵美は筆を持たずジッと見つめているだけで書こうとしていない。
そして授業が30分たったところようやく書き始めた。みんな集中しているため絵美のクロッキー帳を見ていないが絵美は素早く描いたかと思うとすぐ2枚目をめくりものすごいスピードで書き続けている。
柳は斜め後ろから書いているため素早く動かしている様子は見れたが絵が見えていない。そのまま授業は終了10分前に各々の品評時間となり、みんなして他の友人が書いた絵を見て周り幸村もすぐ絵美のクロッキー帳を覗き込んだ。
教師や他の生徒も見て笑っている。
「ちょっと遊んじゃった」
デッサンを取るなら普通なら真面目に1枚を書くのだろうが絵美は横からながらもいろんな視点から捉えた幸村の姿を書いており、天才というのは往々にして変わっているものだと考えた。
「2枚目……ってことは1枚目は?」
「あー!だめ!見ないで!」
そんな絵美の軽い悲鳴を無視して女子が絵美を抑え込み幸村は1枚目をめくり目を見開いた。
「……すごい……」
写真を切り抜いたのではないかと思うほどに美しい幸村の横顔。それをほんのわずか10分ほどで描いていた力量。だが絵美はすぐクロッキー帳を閉ざし「見たら厳罰だ!」と言っている。
2枚目の様々な視点で遊んだ絵を見てもいいのに、ものの10分とは思えない作品は見られたくないという理屈はわからないが本人なりに何かあるのだろう。
柳も一頻り他の作品を見てからクロッキー帳とイーゼルを片付け他の生徒も授業終了の準備を始め幸村が絵美に何事かを話しかけて絵美は赤くなって顔をそらしている。
だが幸村はさらに楽しそうに話しかけ絵美はグッと詰まっている。
「(面白いな)」
圧倒的他人な柳は2人を眺めながら教室に戻り若干頬が赤いままの絵美も同じく教室に戻ってきた。なので関わってみてもいいだろうと話しかけた。
「何を言われたんだ?」
「えっ」
「精市に」
「えっ」
絵美はそろりと視線を反らすも後ろから来た女子がニヤニヤ笑いながら聞いていた(だろうな)、2人の会話を教えてくれた。
「2枚目の幸村くん」
「ああ、色んな角度の」
「“俺のことをこんなに見てくれてたんだ”って」
「ちょっと黙ってええええ!!!」
「イチャついてましたー!あはは!ムカつく!!」
同じクラスの女子の本音を聞きつつ確かに、と思う。
真横にいたのに横以外の角度もいくつかあったためそれをさっと描けるほど絵美は幸村をよく見ているのだと。
「あーでも真正面から見てても許される最高の時間だった!」
という女子のもう一つの力強い本音と男子の「幸村だからなぁ」と濁した本音も果たして絵美に届いているのか。
「そういえば糸井、コンクールの絵はどうなった?」
ふと思い出したように柳は椅子に座っている絵美に問いかけると絵美を小さく呻いた後呟いた。
「モデルの元がいいから通過した……」
残念がるものなのかと思いつつどんな絵を書いたのか見てみたいという考えに絵美はジットリと柳を見上げ柳は首を傾げた。
「評価されるのが嫌なのか?」
これは中等部で初コンクール金賞を取っていた際にも思ったことなのだが絵美は「はああ~っ」と大きく息を吐き出し呟いた。
「好き嫌い以前にまず見て欲しくない、というのがある」
そしてあの子が書いたのかと注目されるのは嫌だ、に柳は成る程と頷いた。
「糸井が描いたとわからなければいいのか?」
「いい。それが一番いい。」
だが本人には残念なことにあっという間にコンクール一般審査で絵美は
「さらなる連覇!怒涛の彗星!」
と新聞とニュースに載っていた。