木枯らし落ち葉、残るは『 』(全9話)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
とりあえず「精市」ではなく「幸村」と呼ばれた分だけキスをしてしまいたいが車内には跡部がいるし、多分絵美も許してくれないし、最悪、嫌われる。喧嘩で済めばいいがその喧嘩もしたくないからキスは明日以降にするとして
「毎日絵美を迎えに来てくれてありがとう」
「気に食わなさそうだな」
「まあね」
「2人とも知り合い?」
跡部は絵美を横に座らせ挟んで幸村を乗せ走り出すリムジンの中で話をしている。ちなみに絵美はフル無視状態である。
「8時以降まで迎えに来るほど仲がいいんだ」
「喧嘩売ってんのか?俺は車を出しただけで俺は乗ってねぇ」
なにせ東京と神奈川である。確かに乗ってくる理由はあまりないように思える。が、幸村はまだ少し気に食わないでいた。従兄弟だとしてもキングである彼は神の子として好敵手で軽い知り合いの友人未満で絵美と親しげで。
特に最後のだけで機嫌はあまりよろしくない。子供らしいが許してほしい。なにせ自分の大切な人を他の(従兄弟だとしても)歳が同じ男に任せるのはなかなかに気分が悪いものだ。
「嫉妬深い男は醜いぜ」
「2人で何の話してんの?」
「君ほどできた男じゃないんだよ」
「俺が“できた男じゃない”と称するのは絵美と俺様の恋人くらいだ」
「え、跡部恋人いるの?」
「まあな」
「ねえ私のことは無視なの?」
相変わらず男は2人だけで会話をし絵美はため息は吐いてしまう。
幸村は絵美の肩を引き寄せ跡部は足を組み変えている。その余裕のある様子に幸村も争うだけ無駄だと思うが本能的にはやはり気に食わないでいて、それでも1週間 恋人が安全に帰宅できていたことにはお礼をしたい。
「絵美のために動いてくれてありがとう」
「これくらい大したことじゃねえよ」
なにせ車を動かすは景吾の指示ではあるが跡部景吾が運転しているわけではないので大したことじゃないのだろうし。
絵美は己の肩にある幸村の手を下ろそうとしたがそのまま握り締められたため もう好きにさせようと諦めているが2人には気づかれていない。
「絵美、第2審査の後の展示だが」
「あ、それね。メールしたっしょ。第1審査まだだから」
「お前なら一般審査まで余裕だろ」
「それは俺も思う」
「どんな理屈よ。でも多分行かないよ」
そんなどこか悟ったような表情と言葉に跡部も幸村も絵美を見て首を傾げ絵美は口にする。
「人物画にしたんだ。今回、風景はやめて初人物画」
しかもその相手の許可は取ってないからボヤかして、という言葉に跡部は察し幸村はまた首を傾げて見せた。そして絵美が幸村を見上げ へらりと笑ったので抱き寄せる力を強くしながら「あ」と察した。
「俺を書いたの?」
「勝手にモデルにしちゃった」
だから幸村にはまだ見られたくないという言葉にとうとう我慢できず口付けてしまい跡部が面白いものを見る目を向け絵美の肘鉄が脇腹に決まったが、離さない。
「んむっ!ん!んー!」
何度も角度も変えてのそれに 絵美は軽く暴れ、数秒してようやく開放すると真っ赤になってはたかれた。
痛くはないが怒らせた。が、今のは絵美が悪いと思い考える。
「人前では嫌だってば!」
人前じゃなくてもしばらくはさせないと言われ、幸村はしかし笑顔で抱き寄せて跡部はそれを見つつ窓の外を見て
「幸村、着いたぞ」と。
「ありがとう」
跡部ならこの後問題は起こらないだろう(跡部には恋人がいるそうだし)、でもこの後 俺以外の男と2人きりだと考えるとは痒いところ。そして 絵美がその事を少しも気にしていないところが少々腹が立つが八つ当たりなんてみっともない真似まではできない。でもこれ位は言ってもいいだろう。
「家に着いたらメールして」
「なんで?」
「絵美、そこは分かったって言うんだよ」
恋愛偏差値ゼロめ、という発言に絵美は不思議そうにしながらも「分かった」と頷き、もう一度ありがとうと笑い跡部は「出せ」と口にした。
去る車を見つつ幸村は時計を見てため息を吐き出し絵美からの帰宅メールに安堵しつつモヤモヤしてしまうのはどうしようもないとため息を吐き出してしまった。
明日もキスしよう、とりあえず。