木枯らし落ち葉、残るは『 』(全9話)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
4限目開始ギリギリに絵美は教室までダッシュで戻ってきて、急いで教科書を取り出している。
「糸井、精市だが」
絵美が教科書を開いたところでそう声をかけると絵美は「あー」と言った後また教師がいないため口を開き説明してくれた。なるほどである。
「体が弱いとかそういった病気じゃないことは聞いたけど 、ほらテニスとかスポーツする人って肩大切じゃん?いや全部大切だけど、大切じゃん?冷やして欲しくない」
幸村を考えての朝の発言だと知り、そして次の言葉にも「ほー」と頷いてしまった。
「迎え来てくれる車あるから」
「なんだ、そのままそれを伝えれば良かったじゃないか」
「それでも一緒に帰りたいって言いそうで」
確かに、言いそうだがそしたら幸村を家に送る義務も生じるだろうがそこについては糸井は特に気にしなさそうなのが次の言葉に納得してしまった。
「その車、従兄弟の車だから、あの~……あって欲しくない」
「恋人だと知られたくないということか?」
「じゃなくてーー」
次の言葉は教室に来た教師の姿に消えてしまい、柳はまあ迎えが来るのなら下校が8時をすぎても問題ないとしていたのかとそう納得したのだが 絵美はほんの少し難しい顔をしていたのは何故なのか。聞くに聞けず授業に意識を向けた。
「……色々と面倒なんだよ」
ポツリと呟いた言葉に返事のしようがなかった。面倒とは。
社会の地理を受けつつ絵美は 教科書を睨むように見て板書をとっているが気になることは大きいらしい。
そのまま6限までも済ませその間の休み時間に幸村は顔を出してこなかった。
「少しは意識してくれるかな」
俺が会いに来なかったら。
昼休み、変なふうに拗らせた幸村の発言と行動だが絵美少しも気にした様子もなく授業の準備をし、受けている。
何というか、2人が付き合い始めたとき絵美に「ご愁傷様」だと言ったが、これでは幸村の方が「御愁傷様」であろう。
ストレスフリーの様に柳は心の中で十字を切った。キリシタンではないけれど。
「掃除当番ダルいなぁ」
そうボヤキつつも絵美は素早く掃除を済ませ、拗らせた幸村が会いに来ないことに露ほど気にした様子がないためつい「精市に」会いたくないのかと尋ねそうになるがそれは己の死期を近づけるようになりそうでやめておいた。多分正解。
「柳、部活頑張って!寒い中お疲れ!」
そう絵美は笑顔で去っていき、その10秒後に幸村が絵美の背中を見送りつつ教室にきてスマホを掲げてきた。
「糸井は気づいてないぞ」
「……はあ……マジか……」
この際精市が「マジ」という俗語を使ったことは置いておきいっそ電話をかけたらどうだと提案しようと思ったが、幸村を待つ間もなく駆けて行ってしまうほど力を入れているのだから恐らく迷惑になるだろう。糸井は言わないだろうが。
そして迷惑以前に出てくれるかがわからない。
高等部2年だが、どうやら先輩や部長たち総出で冬のコンクールに向かい合うため余計相手にする間も惜しいのだろう。
恋人が互いに互いで思いのすれ違いを起こしていることにほんの少しハラハラとしてしまう。怖いので黙っておこうと思う。
部室でテニス部のジャージに着替えながら幸村がまだ絡みに来て本人に言ってないから言わない方がいいだろうがこの調子だと部活内容に支障をきたしてしまう。
糸井には悪いが言ってしまおう。我が身が可愛い ためである。
「どうやら迎えが来るらしい」
「何だ、そっか」
その後何で柳が知ってるのかと聞かれる確率100%のため すぐ部室を出たが、やはり問われたので「雑談で」と答える。
「従兄弟が来るならそう言ってくれればいいのに」
「忙しいのだろう」
「はあ…まあ、しょうがないか」
そこで幸村はようやく納得してテニスコートに向かいながらチラと美術室の窓を見上げるもそこには誰も窓側にはいないし絵美は写真を見て絵を描くためここにはいない。
テニス部の練習風景を書くと言っていたが見せてはくれない。赤也とコートに入りながらそんなことを考え、日が落ちる頃に部活を終え美術室から明かりが漏れてきた。
「待ってたら怒らせちゃうかな」
「50%、と言ったところだろう」
「先輩スか?」
なんてやんややんやと話しながら時は過ぎ、その日は幸村は仕方なしと柳たちと帰宅することにしたらしい。