冬の木枯らし、吹きすさぶは『 』(全10話)
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「ゆ…せ、精市、これ、セーターなんだけど……」
中庭のベンチに並んで腰をおろし、部活は大丈夫かと問うと少しくらい大丈夫と笑ってくれたのでほっとしてセーターを差し出すとすごく嬉しそうに受け取ってくれて広げて見つめている。
「何かを作る時って、その人のことを考えて作るから楽しいんだよね。私、セーター 編んでる時ずっと精市のこと考えてた。喜んでくれるかなって考えてた。その時にはもう精市のことを好きだったんだね……」
コートとブレザーを脱いでからセーターに腕を通す精市を見てそう呟くとびっくりしたようにこちらを見たかと思うと、昨日今日さっき今向けられていた甘い笑顔で、呟かれた。
「殺し文句だね……それ」
「え?」
「あんまり俺を煽らないで、大切にしたいんだ」
「あお?煽ってないよ」
「無意識か…怖いな」
「嫌だった?ごめん!黙る!」
「ううん、もっと言って」
「好き」
精市は眉根を下げ苦笑し「そうだけど、違うよ」と言い私は必死になって脳みそを回してしまう。何か変なこと言ったかな!?と考えると精市はセーターを見て、着て、笑い
「似合う?」と。
「うん、似合う。あ、自画自賛してるわけじゃない!」
「分かってるよ」
そして額に口付けられブレザーを着てコートを羽織る。この後部活なのになんでちゃんと着込むのかなと疑問に思うと見抜かれた。
「好きな子が俺のために俺のことを考えて作ってくれたって自慢したいしお揃いのコートも見せつけたい」
ふふんと自慢げな表情につい笑ってしまい精市は私の手を握りしめ立ち上がると腕を引いて歩き出した。
校舎内を抜け下駄箱へ。
その間繋がった私と精市の手に周囲は驚いたように凝視してきたため不意にクラスの女子が言っていたことを思い出す。
幸村くんは人気者だから、という言葉。
そんな人気な人と一緒にいていいのかと思ったらグイと強く手を引かれ横を歩かされる 。
「恋人なんだし、さっきだって横にいたんだから横を歩いて」
「う……はい……」
「何で敬語?」
気づかれている様子に恨めしく思い見上げると嬉しそうな笑顔で見つめられ靴を履き替えるとまた手を引かれるとまた男子テニス部の部室まで連れられてしまう。
「寒くない?」
「……どっちかって言うと暑い…」
「それくらい俺のこと好き?一緒にいて嬉しい?」
「…うん…」
精市は鼻歌を歌いそうなほどご機嫌に「可愛いなぁ」とつぶやいており耳まで熱を持ってくるのが分かり、ガチャと一緒に連れられた。
ほとんどの部員は着替え終わっており、柳が私と精市の手を見て笑いかけてきた。
癒し。
だが精市は残酷だった。
「絵美に色目を使わないでくれないかな」
「1人の相談相手としてみてほしい」
「柳、せ…精市にシメられたら言って!話すから!」
私のその一言に部室はシンと静まり返り「掃除当番でしたー!」と赤也が入室してくるまで沈黙と視線が降り注ぎ赤也が訝しげに私と精市を見つめてきた。
「どうしたんスか?」
「あ、赤也」
「絵美」
「あ、はい」
ずいぶんと真剣な声に私は視線を精市に戻し、精市は真剣な表情のまま私に顔を寄せ肩を掴んでくると言い放った。
「俺以外の男を下の名前で呼ばないで欲しいな」
「あ、はい」
赤也だけは未だに状況に理解が追い付いていなかったがふと2人のコートと雰囲気にハッとし、いそいそと2人から距離を取り己のロッカーの前で着替え始め私はすぐ部室から出た。そのとき精市の口元は緩んでおり部室の外に出てから入り口の脇にしゃがみ込んでしまう。
昨日の朝までは寒いという感想しかなかったけれど、今の私にしたら頬の熱を冷ましてくれる嬉しいもの。
ほんのしばらくして一般部員がコートに揃い、レギュラーの部室(らしい)からさっきの様子に巻き込まれた柳たちが出てきて柳はポツリと呟いた。
「ご愁傷様だな、糸井」
「それって嫌な時に使うやつだよね!?」
思わずそう返すと後ろから額にヘアバンドをつけた精市が顔を出し「俺が嫌?」なんて。
なので慌てて首を振りかえすと手を掴まれベンチに座らされ膝に私と揃いのコートをかけてきて。
「よかったら見てて。もっと好きにして見せるから」
「す……好きに上限ってあるの?」
「超えたら愛だよ」
すぐ「愛してる」って思わせてあげると笑った精市に、もうすでにその「愛」に気持ちが行ってるよ!そう言いたくも精市は肩にテニス部の上着をかけたまま行ってしまい切原がそっと囁いてきた。
「ご愁傷様っス…」
「だから!それ嫌な時に使うやつじゃないの!?」
という小さな悲鳴に皆はただ 無情にも笑いかけてくるだけであった。
2025/11/23
続く……?
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