冬の木枯らし、吹きすさぶは『 』(全10話)
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午後の2限、女子は家庭科実習、男子は技術実習に分けられ女子はマドレーヌとパウンドケーキを焼き絵美はテキパキと動いている。
基本絵美はこういった作業はよく家でやり女子に貢いで(?)いるため本当に慣れている。
他のグループより何倍も速いスピードでさっさと作業をこなしあっという間にオーブンに入れ片付けをしその間にセーターを編んでいる。
いつの間にかもう片腕も編まれ肩を繋げれば完成まで持ち込んでいる。
調理のほぼを絵美が済ませたため作業資料は同じグループの子に任せ、教師も黙認している。本当に手早い作業だったので。
他のグループがオーブンに入れている間に絵美のグループはマドレーヌもパウンドケーキも焼き上がり型から外しているのに横目に絵美は毛糸を置いて手伝う。
「絵美ちゃんもやっぱりあげる?」
「誰に?」
「幸村くんに」
「なんで?」
周囲の女子は話しながらも耳はこちらに向いており絵美は心底不思議そうにしている。セーターやマフラーを編んであげるのに今作ったお菓子をあげるという意見はないらしいが同じグループの言葉に「うーん」と悩み「1つずつもらっていい?」と。
「あ、2つか」
「え?誰と誰?」
「柳と幸村」
皆があげるっぽいから候補に出さなかったんだけど、という言葉に女子たちは「あー」となってしまう。そう言われるとそうすぎるので。柳も人気があるのは一応知っていたようだ。
粗熱を取り、切り分け、袋に入れていると絵美はさりげなく切れ端をつまみ同じグループの子に小突かれて笑っている。
そのまま 片付けまた時間はあまり絵美はセーターを完成させておりその素早い作業に感心してしまい、同じく粗熱を取っている別グループの女子が話しかけてきた。
すでに女子全員の耳は絵美の言葉に向いている。
「いや、本当は自分で食べたいけどこれくらいなら簡単に作れるし、まあ、あげてもいいかなって」
「すっごい気になるけどさ、幸村くんといつから知り合いだったの?」
「え?昨日」
「え」
「え?」
互いに「えっ」と言い合い絵美は「そういえば」昨日だなとつぶやき「でも幸村は」私のこと知ってるぽかったなぁなんて、かなり今更な疑問を抱いていた。
幸村は旧知の仲のように話しかけていたので同じように話してしまったがそういえば知らない2日目の人だななんて考えてしまう。
「んー……幸村、私のこと知ってるぽいから全然疑問に思わなかった…そういえばそうだよね……何でだろう?」
「幸村くんが入院してたのは知ってるよね?」
「えっ、そうなの?今は平気なの?」
「話してないの?」
絵美は昨日と今日のお昼までのことを考えて、そういえば私から幸村のことは聞いていないやと呟いた。
「無関心なの?」
「んー……私話し下手だから何をどう話せばいいのか……」
「あーなるほど。絵美ちゃん 聞き上手だけど話し下手だもんね」
「それそれ。てか入院ワードって余計聞きにくいんだけど」
女子の2度目の「あー」と「話し下手」という発言にも気にする様子もなく「話さないってことは話したくないってことだから」聞かなくてもよくね?なんて口にして、女子はまた「あー」となり絵美はセーターから視線を外し困った様子を見せた。
「……好かれてんの?」
「今更……?」
「明らかじゃん」
「マジか~……」
ガチで気づいてなかったようで女子は詰め寄り「幸村くん」と。
「 人気すごいから気をつけな!うちらは応援するけど」
「応援されても…」
「好きにならないの?」
絵美は困ったもまま「あって2日目だし…好き、とか言われても」と視線を空に向け次の言葉を発する前に終業の鐘が鳴ってしまった。
レポートも提出しお菓子片手に女子も技術実習を終えた男子も教室に戻り、男子は女子にお菓子をたかり絵美も横の席の柳に おすそ分けをしようとして、最後の授業の準備をしてからコソリと話しかけた。
「幸村って私のこと好きなの?友達が言ってたんだけど……」
「今更か…糸井の鈍さは折り紙付きだな。それを念頭に置いて、そのお菓子を受け取るほど俺は早死にしたくはない」
「……え?死…?」
「まあ、御愁傷様だな」
「え、え、私どんな顔してセーター渡せばいいの!?」
「そんな顔でいい確率は99%」
「何それ怖い!」
本当の恐怖まであと1限。