冬の木枯らし、吹きすさぶは『 』(全10話)
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「絵美ちゃんおはよ!新しいコート買ったんだ、 あったかそー!」
「うん、昨日コート強奪した人と買いに行ったんだ」
絵美はきっとみんな 幸村を知らないだろうと考えていたのに、そうは言ったが女子は「えっ」と口を開けぽかんとしてから詰め寄ってきて絵美はキョトンとしてしまう。
あ、そういえば昼休憩で友達 、幸村のこと知ってたなと考えるがそうではない。
「幸村君とデートしたの!?」
「デート、て…買いに行っただけだよ。おすすめの店に」
それがデートよ!と言われそしてすすすっと視線を下ろし絵美の手元にある毛糸と編まれているものに意識を向けた。
「今度は何編んでるの?」
「セーター」
「……もしかして…幸村くん?」
絵美は単純に「すごいなあ、なんでわかったの」と首を傾げながら編む手も止めずクラスの男女はがっくりと肩を落としてしまった。
いろんな感情に押されている。
「お礼に編んでって。暇だしいいよって」
「幸村くんに頼まれたの?」
「じゃなきゃ編まんて」
クラスメートはまたもや肩を落とし絵美は慣れたようにあめり模様を作りどんどん編んでいき長さを測っている。そうしながら「買った方がいいのにね」なんて2本の棒を動かしホームルーム前の予鈴に柳と幸村が教室に顔を出した。
柳の場合は絵美の席の隣だが、幸村は嬉しそうに笑いかけ絵美も笑みを返す。
あ、この子意味全く分かってない。
それはクラスメイト全員の心の声であるが残念なことに絵美には届いていない。
「幸村、ちょうどいい所に、ちょっとだけ大丈夫?」
「もちろん」
絵美は編みかけのセーターを片手に幸村に近寄り、そこで女子も男子もハッとした。色違いのお揃いのコートに。
確実に幸村は外堀を埋めている。その対象者には気づかれていないが。
絵美は幸村の袖の長さを毛糸で測り「ありがとう」と述べると席に戻る。
このクラスの男子も女子も絵美と幸村を諦めた。
と言っても幸村の場合は遠くから見ていたい王子様ポジションで、絵美の場合はかすかな期待だったのだが幸村にはかなわないとしょげた男子は数名いた。
「そうだ、マフラーはできてるよ」
「え?早いね」
「マフラーは簡単だもん。待って、今出す」
そうして鞄からマフラーを取り出した絵美にクラスメートはまたもやギョッとし、淡い水色のマフラーを幸村に渡した絵美を見つめている。見せつけられているだろうかと思ってしまう。断じて違うのだが。
「うわあ、あったかいし柔らかい。嬉しいな、ありがとう」
「 どういたしまして。楽しいから全然いいよ」
セーターは放課後にはできると思うけど、と告げる絵美に幸村は嬉しそうに笑い「楽しみにしてるよ」と。
「特定の男子に編んだことないって言ってたから、その初めてになれて本当に嬉しい」
「頼まれれば編むのにね」
「俺だけにして」
一瞬笑みを消した幸村に絵美のクラスメートは息をのみ絵美だけが平然としている。鋼のメンタルすぎる。
「じゃあ、また休み時間に」
「え?うん?またね??」
ここまでアプローチされて気づいていない様子に周囲はハラハラとして柳は編みかけのセーターを見て「ほう」とつぶやいている。
「糸井と同じデザインなのか」
「何が?セーター?」
「ああ」
「そのデザインいいねされたからマフラーとお揃いで」
「その心は」
「楽しい」
柳はノートにデータを綴り絵美はコート以外は昨日と同じ姿でセーターを編み、授業を受け、休み時間のわずかな時間だけでも幸村が顔を見せ絵美に笑いかけている。
それを柳は「考えていた以上に惚れ込んでいる」と分析し クラスメイトは完全に諦めた。
3限目終了後、絵美にまた「お昼に行こう」と幸村が来たため絵美が特に拒否の姿勢を取らず行ってしまったから。
絵美は幸村と昼食を終えてからまた編み始めたのを幸村が嬉しそうに眺めている同時刻、絵美のクラスメートは重いため息を吐きまくっていた。
「幸村君っていつから絵美ちゃん好きだったのかな?」
接点あったの?と話し柳の元に丸井がきて「絵美ちゃん?」と尋ねてきたので 「昨日の」と言うと丸井は「ああ」と頷いた。
「幸村くんのあの笑顔怖いんだけど」
「言うなよ。言ったら最後98%の確率でシメられるぞ」
「言わねえよ!爆弾踏む真似はしねえよ!」
確かにとクラスメートは思った。