冬の木枯らし、吹きすさぶは『 』(全10話)
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冬の陽が落ちるのは早く、5時45分に部活を終わらせ帰宅 用意を整えた幸村はすぐ部室を出て、テニスコートで赤也と話している絵美を見つけた。
その手には幸村のコートを持っており幸村は笑顔で2人に、詳しくは絵美に駆け寄った。
「ぶ、部長……じゃ、先輩、ちっす…!」
「チース!」
駆けて去る赤也に絵美は手を振り幸村はその手を掴みながら「赤也と知り合いなの?」と問いかけた。
「今知り合った。かっこいいねっ、て」
「……え?」
幸村は表情をなくし、ちょうど聞いてしまった柳は胃痛を覚えすぐ絵美は 次の言葉を口にした。
「初めましての女の子にコート貸せる気持ち持ってる幸村かっこいいねって」
「そうなんだ……嬉しいな」
「コートありがと」
返すね、もう一度ありがとうと言って笑う絵美に幸村も笑い返し部室に入る前、 赤也はそんな幸村を見ると身震いしてから部室に消えて行き柳はそっとため息を吐き出した。
なかなかに怖いが面白いデータは取れたなと。
放課後の6時、部活から帰宅する生徒がいる中、幸村もまた絵美と肩を並べ校門を出て寒さに震える絵美を見下ろしてしまう。
確かに今日は今季一番の冷え込みだが、おそらくこの細い体では体脂肪が薄く熱の燃焼がないのだろう。
絵美の両手はポケットに収まり、首にはぐるぐるにマフラーが巻かれているし ブレザーの下にはセーターを着ている。
見たことがないタイプのソレに幸村はふと思う。
「ねえ、そのセーターって手編み?」
「よく気づいたね、手編みだよ。気に入ったデザインの色がないから作った」
「自分で?」
絵美は「そうだよ」と答え軽く見せてくれて、幸村は少しも考えることなく口にする。
「俺にも編んで、セーター」
「買った方が早いしあったかいと思うけど……」
「お願い」
なんて笑う幸村に絵美は不思議そうにしつつ、まあいいか、とした様子で「じゃあ」毛糸買わなきゃなと。あとデザインと採寸と答えは幸村は己のサイズを教えた。デザインは同じがいいなと。
「色は?」
駅近くの洋服店に向かいながらそんな話をし、俺に似合いそうな色お願い、とも言うが絵美は毛糸の種類と厚みとかも考えたいからよかったら一緒に毛糸探そうとお願いし返された。
一緒にいられる時間が長くなると内心喜ぶのは幸村で、学校から歩いて15分、洋服店に着いた。
「うおー店内あったかー!!」
「本当、あったかいね。ふふ…絵美、頬真っ赤 」
「寒いもん!幸村全然寒そうじゃないなぁ…運動部すごい」
「 それだけじゃないから」
「え?」と不思議そうな声に「何でもないよ」今は、と心の中で付け足し絵美の手を引いてコートコーナーに連れて行く。
「幸村コート発見!サイズは…LLか……さすがに大きいかな」
「俺と同じコートを着てくれるの?」
さすがに驚いた幸村に絵美はコートを見ながら頷いた。
「めちゃくちゃあったかかったんだもん。あ、お揃か…ごめん、嫌だね、別の」
「嫌じゃないよ」
絵美の言葉には驚いたが、それは嬉しい驚きであって決して嫌なわけではないし、それに慌ててかぶせると絵美は首をかしげてみせる。
「せめて色は変えるか」
「同色でもいいんだけど」
好きな女の子と揃いのコート 、同色でも色違いでもどっちにしろ嬉しいことには変わりない。上の方にディスプレイされているコートを手に取り絵美に合わせて見せた。それに絵美はおとなしく動きを止め近くの鏡を覗き込んだ。
「ワインレッドか…いいね」
これにしよ、とさっさと決めた絵美に幸村は「迷わないの?」と尋ね、絵美はコート片手に歩きながら軽く振り返り「うん」と答え
「私買い物長くするの好きじゃないし決めてたし」
「お揃いでもいいって?」
「うん。あ、でもオススメあるなら探すか?」
「俺のオススメ着てくれるの?」
「え?うん。……変?」
幸村は「ふ」と頬を緩め首を振り「男が女の子に服を贈るのは下心があるからなんだけど」気づいてないんだろうなと幸福感に包まれていく。
「選んであげる」
でもそのコートも一応持って一緒に悩もうか、と言うと絵美も同じように笑い「よろしく」と口にした。
結局は色違いの新しいコートを揃いで買うことになったのだったが。