冬の木枯らし、吹きすさぶは『 』(全10話)
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3限目が終わるまで各学科の教師は絵美を見て 立海の生徒らしく身を整えろとは言わず「雪だるまだな」と笑っている。その程度に絵美の姿は有名なのだ。
昼休憩の鐘が鳴り始め、生徒が食堂に行ったりする中で絵美はすぐ席を立ち幸村にコートを返すため幸村のクラスに向かうだろうかと思ったら、お弁当箱の入った保温バッグを持ってる幸村が姿を見せ教室の出入り口でぶつかっている。
「っ、と、大丈夫?絵美さん」
「わっ、幸村クン、よかった、行こうと思ってたんだ」
幸村はサラリと絵美の下の名を呼んだが当人は気にしてはおらず羽織っていたコートを幸村に差し出した。
しかし幸村はコートを受け取らず
「放課後まで貸すって言っただろ?」
などと苦笑している。女子が2人を見つめているが互いに気にしていない。絵美の場合は気づいていない。
「うう…申し訳なさすぎるよ」
「 これから仲良くなるんだから遠慮しないで」
幸村、糸井が困っているぞと思いつつデータを更新し、絵美は困りつつもしっかりと幸村を見上げちょっとだけ笑った。
「お礼はするよ。あったかいお茶を奢る」
「おすすめの喫茶店でもあるの?」
「え?いや、自販機のお茶……え、貢いでほしいの!?尚更返す!」
とうとう柳は笑ってしまい幸村の笑顔が向けられてきたのでほんの少し笑いつつ「精市」少し、ゆっくりと、なんて声をかける。
「でも絵美は可愛いから今のうちに拐っておこうかなって」
「物騒だな。精市」
「本当のことだからね」
「え、え、何の話ししてんの2人とも」
怖いんですけど、と絵美は言うが幸村は「怖くないよ」と返し
「そんなにお礼したいならこれから俺と一緒にお昼しよう?どうかな、駄目?」
やはりグイグイいくな、と考えつつ絵美はスパッと「友達と食べるから」と言い友人は「どうぞ!」と絵美の背中を押した。
みんな気づいたのだ。気づいていないのは絵美だけ。
「お昼一緒がお礼って、不思議なんだけど」
「そうかな?俺にはすっごい嬉しいお礼だよ。もちろん放課後も」
「えっ、コート買いに行くの本気だったの?」
「嘘なんて言わないよ」
絵美はまた肩にコートをかけられ「そっかぁ」仕方ない「わかった」と返し幸村は絵美の手を掴み驚いた。
「手、すっごく冷たい」
「絶対私変温動物。自分で発熱しないの」
幸村クン手ぇ、あったけ~!と絵美は幸村の手を包み返し幸村がかなり嬉しそうに目を細めつぶやいた。
囁きに近いが絵美の友人と柳の耳にも届いた。もちろん絵美の耳にも。
「じゃあさ、あったまること、する?汗もかいちゃうかも。それに多分絵美は疲れちゃうかも、でも、気持ちいいかもね」
女子は「キャー!」と悲鳴を上げ絵美を背に隠す。
「幸村くんそこまで!絵美ちゃん鈍いしウブだからそういうのは付き合ってからお願いします!本っ当に鈍いから!」
「え、何、汗かくって、運動でもするの?」
「運動かな?2人きりのね」
「幸村くん!」
「え、え、何?何の話?どういう意味?」
「ほらー!」
お年頃の女子たちは頬を赤くし絵美はかなり困惑している。確かに鈍いが幸村の言い方もあるだろう。気付けと、思うが、だからこそとも言える。
「ふふ……冗談だよ、半分は」
汗かいちゃうのは俺かな、なんて。そして絵美の手を掴み返し「お昼行こう」と歩きだし絵美は友達に対し「ごめん」今日はこのまま幸村クンとお昼?してくる?とかなり疑問形でほぼ無理やり連れて行かれてしまい女子は大きなため息を吐き出し肩を落としている。
「幸村くんのベタ惚れじゃん… 入る余地無いわあ~…」
「どうする?絵美ちゃん優しいから食べられちゃうかも」
ヤイヤイと話す女子と「糸井取られた」と嘆く男子。
実は絵美は男子に割と人気があるのだ。性格が付き合いやすいから、と。
「どこ行くの幸村クン」
「中庭が見える場所。人が少なくて暖かいよ」
「あったかいならそれでいいや」
幸村は絵美と手を繋いだまま笑顔で歩き、周囲の生徒、主に女子は羨ましそうに見ており、すぐ連れられたのは日の当たる空き教室。
実は勝手に暖房も入れさせてもらっているが教師は特に何も言ってこない。
「うわーいい場所 」
「俺の秘密の場所」
「教えて良かったの?入り浸るかもよ」
「願ってもないことだよ。一緒に入り浸ろう」
「あはは!今日だけでしょうが」
「これからって言ったじゃないか」
絵美はキョトンとし、教室での会話を思い出し「え、」そういう意味だったの?と言ったため幸村は日の当たる場所に絵美を座らせた。
絵美は残念なことに まだ気づいてないのだが、時間の問題だろう。