冬の木枯らし、吹きすさぶは『 』(全10話)
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「柳!柳柳柳柳柳!柳!いいところに!」
「糸井か」
柳はテニスコートに向かう足を止め校門からかけられた声に振り向くと中等部から同じクラスである絵美を見て呟いた。
周囲にも数人ほど生徒はいるが気にする者はいない。そして柳は絵美が駆け寄ってくるのを足を止め見つめ絵美は柳にポスリと抱きついた。
「さ、さみぃ~!上着貸して上着!」
この後部活ならコートいらないよね!?そう頼む絵美に、そういえばそろそろ冬の木枯らしが来る季節86%だったと考える。
中等部から同じクラスの絵美は パーカーを制服の上に着ているが、その体の細さに寒そうに見える。
「もっと暖かいコートを着たらどうなんだ」
「気になるコート売ってねえんだわ!毎年思うけどスラックスを導入した方がいい」
「俺のコートを着ると確実に引き摺るであろう」
「うるさい強奪させろ」
「強奪者は宣言をしない」
今日は今季最大の寒波だとニュースで言っていたが恐らくニュースを見てパーカーを羽織ったのだろうがそれ以上に寒さが堪えたらしく見事に己を風よけにひっついている。
そんなことをするなら早く校舎に入ればいいのに彼女のこの図々しさはあまり嫌いではないと仕方なしにコートを脱ごうとして「あれ」なんて声が聞こえてきた。
「精市」
「おはよう蓮二」
「ああ、おはよう」
高等部2年のテニス部部長の幸村を見て絵美も柳越しに幸村を見るとパチリと瞬き柳を見上げてきたので柳は体を絵美に向け幸村を紹介した。だが必要がない確率90%。
「おはよう糸井さん」
残りの必要のある10%は絵美が幸村を知らないであろうこと。また絵美は目を瞬かせ柳のコートをつかんで不思議そうに見てきた。紹介することにした。
「テニス部部長の幸村精市だ。一度会ったことはあるか?」
「あったっけ」
「あるよ」
あるよ、は幸村のセリフで絵美は困惑の表情を浮かべ幸村は笑う。
「一方的だけど毎年雪だるまみたいだって、蓮二から」
「雪だるまって!何それ!でもコートは貸して!」
「そんなに寒い?まあ女の子はスカートだから余計そうなのかな」
幸村はちゃっかり絵美に話しかけており絵美は初対面の幸村に対しグッと詰めより「分かってる幸村クン!」と。
「毎年思うけど立海はスラックスを導入すべきだよ!あとタイツも許すべき!お前らもスカードで過ごしてみろって話だよね!」
「確かにそうだね」
「というわけで柳コート貸して、今すぐ!」
「じゃあ俺が貸してあげる」
柳はうっすら気づいていた。幸村が絵美を知り絵美に好意を持っていることに。ただ2人に接点はないため話しかける口実もなく時が過ぎていたことに。
これはいいチャンスかもしれない。幸村が特定の女子にここまで関わろうとするのは新しいデータだ。きっちり取りたいと思ったので絵美の背を押し幸村の前に立たせる。
リュックの上からゆるいパーカーを羽織っているが足元は確かに寒そうで、白く細い足が伺える。
絵美は、やはり困惑しながら柳を見るも幸村はテニスバッグを置くと己が着ていたコートを絵美の肩に羽織らせ小柄さが際立った。
幸村でも太もも丈までのダウンコートは絵美の膝まで隠し絵美はすぐコートを脱ぎ幸村に返す。
「いや、さすがに初対面の人から強奪はできないよ」
「ならこれから仲良くして」
そう幸村は笑顔で詰めより絵美にコートを着せると笑いかけ絵美はほんの少し考えてから柳を見上げ柳は幸村の教室とクラスを教え絵美はほんの少し渋って「じゃあ、」と。
「柳、部活終わったら教えて。幸村クンにコートを返すからついてきて」
「糸井なら一人で大丈夫だろ」
「どういう理屈?」
幸村はただニコニコと見つめていた。
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