恋病(連載中)



「うゔ~……好きだぁ~!!」
「きったねえ声だなお前」
「うっせバカ部景吾」


私は今、水曜日の放課後の男子テニス部のコート外に立って景吾と話していた。というか、話すというより私の汚いうめき声に苦言を呈されているだけなのだが。

普段は近寄り厳禁だけれど水曜に限り女子たちはこうして男子テニス部部員の打ち合いを見ることができるわけで、図書委員の私も漏れなくお邪魔している次第だ。
横で景吾もとい、男子テニス部部長であり、生徒会長であり、次期跡部財閥トップに立つ友人の景吾といて、私は絶賛片想い中の忍足君を見つめてしまう。


「うゔ~……好きぃ~…」
「だからきったねえ声だなお前」
「うっせえアホ部景吾」
「あ~ん?」


先ほどと同じやり取りをしつつ女子たちの後ろから見てまたそんな声を出してしまいどつかれた。


「忍足の何がそんなにいいんだよ」


景吾とはとある利害の一致で仲良くなりこうしてフランクに話すくらいには仲がよく、私の、まあある意味理解者だが景吾に、ではなく忍足に惚れた経緯を問いかけてくる。
慣れたものだが何でそう何度も聞いてくるのだろうか。何度も答えるけど。


「身長と足の筋肉と笑顔、だけじゃなく全部。あとやっぱり身長」
「お前でかいもんな」
「うっせチビ」
「あ?」


私の身長は176cmあり景吾より1cmだけだが身長は高く、よく背が高いレスリング選手を引き合いに出して馬鹿にされる。そんなところを忍足君が


「自分らアホなん?背高い子の何がいけないん?意味わからへんわ、雑魚とちゃう?」


という暴言で救ってくれてから普通に惚れた。チョロすぎんだろ。
そして忍足君とダブルスを組んでいる岳人君をお菓子で落とし好きなタイプを聞いてほしいとお願いしたら「足の綺麗な子」と教えてもらい勝利のポーズを取る。足はモデルをするくらいには綺麗なので勝利である。

だが、それだけだ。

好きがすごくて話しかけられないし忍足君よりは少し身長が低いけど、ほぼ目線は一緒だし好きすぎてツラいし。


「はあ~…かっこよ……好きがツラい…恋人いるのかな……いたら全力で泣きながら祝福の鐘(心音)鳴らすわ……」
「言えよ」
「言えん、て!」


景吾は大きなため息を吐き、生徒会の仕事があるからとテニスコートに背を向け私も私で仕方なく図書館に戻る。
と言っても水曜は私は当番ではないが普通に課題を進めるために行くのだが、もう一度「はあ~好き…」と呟き歩いていると景吾に軽く頭を撫でられ撫で返す。

お返し受けとれこの野郎。


「あ…あの子また跡部とおる……ええなあ跡部腹立つわ」
「あてられてやんの」


岳人はアメを舐めながらダブルスの親友である忍足に笑って返しあの子と忍足侑士が両片想いになってることに密かに笑った。
今舐めているアメは買収された際にもらった美味しいやつで、忍足には煽りを含めてわざと堂々と舐めている。


「ほんま何して皆して跡部なんやろ。俺じゃアカンのかいな」
「ぶっ…!ウハハ!ウケる!!頑張れよ侑士」


岳人はケラケラ笑って忍足を馬鹿にして応援しつつ、あの子と親友の見事なすれ違いに腹筋が痛くなっていく。
まあ、あの子が跡部に惚れずに仲良しをしそれを周囲が認めて(?)いる時点で両者が両者の思いに気づけぬのであろうが、


「とりあえず伊達メガネ外せよ」
「それはアカン。メガネは外されへん」
「そうかよ」


でも後で写メ撮ってあの子に 送りアメじゃなくて今度はグミかチョコでももらお、と岳人は考えていた。








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