被験体α(全16話)


今朝方、ジンと思しき人物にもらった紙を見つめながら仕事を済ませ車で指定された場所に向かったが、そこに駐車場はないようで、けれど少し離れるところにあった専用駐車場に車を停めた。

そしていかにも知る人ぞ知るといったバーの名前を確認してからドアを開けると、そこにはヤッフー!な人たちがいた。


「(キャンティ、コルン、ベルモット、バーボンはいないけどキールにウォッカ、そして何よりジン!)」


ピンガやキュラソーなど、映画にのみ登場し死んでいったネーム持ちはいないようでその6人はしっかりと私を見てジンとベルモットは笑い私も笑顔になってしまう。

しかし突然のメンバーに笑顔を浮かべるのは少々あれだったのですぐその笑みを引っ込めてジンに手招きをされたので大人しくそちらに向かう。


ヒャー!ジンに手招きされちゃった!ありがとうございます!!


そう心の中でお礼を叫びながらジンのすぐ脇にある椅子に座らされロングカクテルをバーテンに渡された。そしてジンはそのロングカクテルの中に、赤と白のカプセルを落とし入れ小さな波紋が広がっていく。見つめられる。


了解、飲みます!


マドラーでかき混ぜたそのカクテルをグイッと煽るように飲み、キャンティは口角を上げジンはウィスキーを飲んでいる。

一気に飲み干し深く息を吐き出していればジン以外は私のことを見つめ続けアラームが鳴った。時間計ってたの?

アラームを止めたのはウォッカであって、ジン含む6人全員が私のことを無言で見つめてくるので、そわそわとしてしまう。

……早く誰か何か言ってくれないかな。

誰を見つめていればいいのかわからないのでうろうろと視線を反らしながら、そして言われたのはそうソレである。


「ハッ!化け物が」


と。そしてベルモットからも


「ーーふふ……あなた、本当に何もなっていないの?」


なんて言われ私は小さく頷いてしまう。
キャンティはジンと同じく楽しそうに笑い、キールは眉をひそめている。その目にはベルモットの言葉と同じく「本当に、どうも?」と語っている。うん。


「新開発された薬のはずよね?」
「 まだ人に使ったことは無かったがな」


そしてまた視線で語られるのは「本当に化け物だな」というものであり、組織の新開発の薬ということはおそらく毒薬だけであろうし、まさかの被験体第一例となってしまった。 しかも少しも効いてこないという。これを飲んだら予定(?)ではどうなるはずであったのだろうか、気になってしまう。


「えっと……」


ジン、と言おうとしたがジンは私に名前を教えてくれていないし、誰にも名前を呼ばれていないので私がその名を口にするのはよろしくないだろう。そんな私の視線にジンは薄く笑ったままジンが持っていたウィスキーを渡され、私はそれに口をつけた。

うわぁ……絶対度数えぐいやつ。

それでも私はケロリとし度数はえぐいが特に酔いはしないので今度も一息に飲み干した。


初ウィスキー、チッス!!


なんて空いたグラスをテーブルに戻しジンはまたロングカクテルを頼み、また一粒のカプセルを入れた。マドラーで混ぜられる。


「飲め」
「うっす!」


そしてグラスに口をつけつつチラとその場の全員を見てあおるように飲み干した。1分ほどでまたアラームが鳴り、ウォッカが止めている。

私、本当に何の薬飲まされているんだろうか、聞いていいかな、聞いていいよね!?


「えーっと、あの……私何の薬飲まされてるんですか?」


伺うようにジンを見れば、ただ楽しそうに笑ったまま言わない。「化け物だな」というだけで一瞬キャンされたラジオよと思ったし言ってしまいたくなる。言ったら私がキャンされる。

またロングカクテルを渡される。
飲んで、また飲まされ、そして飲み干して、


「ん?」


と目を覚ましたのは己の寝室であり、服もちゃんと着替えてあるしスマホも充電器にぶっさしてあり、よくわからないままに朝の行動をなぞり普通の気分のまま出社した。


サイドテーブルには『GIN』とアドレスが書かれた紙があったがそれに気づくこともなく。
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