被験体α(全16話)


子供2人を連れて行かれてしまった母親は1日ほど泣き続けていたが、2日目には抜け殻のように壁に寄りかかって呆然としている。

それでも少しも関わる気にはならないのでのんびりと床に寝そべって時計を見てしまう。

子供を失った母親に慰めの言葉をかけるべきだろうが、私のことを敵認識して詰め寄ってきた相手に気を使って慰めたりするほど私の心は広くない。何が悲しくて敵に気を使わなければならないのか、なんねぇよ。

7回目の食事の後、しかし母親は一口も口にせず、水も飲まず、まるでこの場で死のうとしているようにも見える『自傷行為』のようなそれは恐らく子供たちのトコロにでも行きたいのだろうか。

勝手にイッてしまえ。
クズ?
知ってる。

部屋の壁が軋み、私は起き上がるとそちらの顔を向けそこには1日目のようにシェリーがいて、私と壁に寄りかかっている女を見てどこか辛そうに眉をひそめた。優しいね、シェリー。

さてシェリーは私と女のどちらを連れて行くのだろうかとシェリーを見つめていれば末端と共に部屋に入ってきて私の横を通り過ぎ生き仏と化している女の腕に注射針を突き刺した。

そこでようやく女はハッとし暴れようとしたがガッチリと抑え込まれ注射針から何かの液体が注入され女は叫び声を上げるとそのままパタリと倒れてしまった。

何だろう、


「致死性のある、...なにか……?」


そんな私のポツリとした呟きにシェリーは私を振り返り目を細めて見つめられた。


「あなたはまだ待っていて」
「うん」


あっさり頷いた私にシェリーは目を細めたまま私を見ていたが女を肩に担いだ末端と共に部屋を出て行ってしまい、また私は2度目の一人きりを満喫してしまう。

そろそろ8回目の食事になるだろうか。

そうして腕時計を見れば時計は時を刻むその動きが止まっており、鞄の中に放り込んであったスマホを開きそちらで 時間を確認しようとしたができなかった。電池切れである。

こんな時にしょうもないと思うけど仕方ないとも思う。

携帯充電器もバッテリー切れであるためもう時間を確認する術がない。


「うーん……」


そう一つ唸ってから腕時計を 外しのカバンの中に放り込んでからまたパタリと部屋の真ん中に倒れこめば扉が開く音がし首だけをそちらに向ける。

8回目の食事だろうか。
違った。
そして首だけ向けて見た人物に目を大きくしてしまう。


ジンだ!!


すぐさまパッと起き上がり立ち上がるとジンは無言で私を見下ろし無言で手を懐に入れ1つの箱を取り出した。ピルケースだろうか。

箱を開き赤と白のカプセルを取り出し私に向かって「口を開けろ」と言ったので何の疑いもなく素直に口を開けた。

カプセルはポイと私の口の中に放り込まれ私はそれを頑張って飲み込んだ。意外と飲み込めるものだ。

コクンと上下した喉を見てからジンは私を見下ろし、私は黙ってジンを見つめてしまう。
特に何かあるわけでもない。APTX-4869でも飲まされたのかと思ってたが本当に何の作用も生まれないし、ジンと1、2分ほど見つめ合ってからジンは「化け物が」と呟き出て行ってしまった。

え……?


キョトンとしながら閉じる扉を見つめ、ジンの「化け物」という言葉に私はムムムと顔をしかめてしまう。


酷くないか?完璧私関係ないのに……え、化け物?


そうした次の瞬間、プシュッという噴出音に顔を上げると部屋の四隅から白い煙が吹き込まれ視界を遮ってくる。

無臭のそれは部屋の中を埋め尽くし、私は黙ってその場に立ち尽くしてしまいグラリと 目眩を感じた。
それはとてつもない眠気である。抗っても仕方ない。

眠気に従って横になればズンとした重力を感じパッと目を開けたらそこは暗い暗い映画館の中であり、私の前の席にはあの親子連れの姿があり映画は始まってからだいぶ経っている。


「また……夢オチ?」


違うと思いたいが、しっかり親は泣き声を上げ子供を抱きしめて行ってしまい、私はとりあえず映画の続きを観ることにした。






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