被験体α(全16話)


こんな怪しい場所の怪しい食事なんて食べれるわけないだろうとし、大人、ではなく、子供にしたら大切な成長剤である。

私が食べていたモノを見て子供と己に食べさせ、まるで私がこの2人のために毒見をしているような気になって気分が悪い。性格が悪いのは今更だ。言ってろ。

出された食事は中華フルコース(1人用ちょい少なめ)で、エビチリを噛み砕いたらプリッとした感触に笑ってしまう。
相変わらず美味しい。

食事を済ませ末端が皿を片付けに訪れ母親の方が子供を抱き上げダッシュで部屋から逃げようとしており、しかしすぐ扉の外にいたらしい末端につかまり部屋の中に戻ってきた。


「出して!お願い!あの子を返して!」


そう叫ぶ親であるが末端は表情一つ変えないでいる、プロの技である。さすがだと拍手 送りたい、がやめておく。

再びさめざめと泣く親と、順応し始めた7歳くらいの子供は母親の側から離れ、最初、私がしたように部屋の壁に手をついて歩き始めグルリと一周してから私のそばに座り込んだ。


「お姉ちゃん、ここどこ?」
「知らない」
「本当に?」


私は子供にまで疑われてしまうのか。己が可哀想である。マジで。


「ぼくのおとうと連れていったのシェリーだよね?」


拙いながらも7歳らしいしっかりとした声と舌使いに私は子供を見下ろして


「そうだねぇ」


と呟いてしまう。
子供はまだ何かを話したそうにしているが親が近づいてくると子供を抱き上げ私を睨みつけてから距離を取られた。


本当に私何かした?むしろ何もしなさすぎじゃね?


そうしていても事は起こらないし無駄に時間だけが過ぎていく。そもそも何もないのだから何かをしたくても何もできない。人間、暇すぎると死ぬと思うのだけれどそんなことはないか。知らんけど。


2度目の食事はそれから6時間後のこと。
腕時計を見ればそれくらいが経っていたので多分夕食だ。

スケジュール帳に書き込んでからご飯を食べるが親子は特に口にしようとはしない。せめて雀の涙くらいは子供に食べさせてあげなよ。成長期なんて今だぞ。

チャーハンと餃子を食べてから白い部屋の、向かって左側の扉が開きシャワールームが見えた。つまり夜。

入ろうとはしない親子は無視して扉の向こうのシャワールームに入り服を脱ぎ捨てまとめていた髪もほどくとシャワーを浴びる。途中背後で、ドン、という音がしたけれど私は気づいてはいない。
水音に掻き消されたからだ。

タオルで水気を取り、のそのそと着替えてから真っ白い部屋に戻るとそこには親がたった一人で泣き伏せていた。

子供の姿はーーーない。



「……かえして……私の子供を返して……」


OK把握。一瞬で分かることをありがとう。

すすり泣く親を横目に私は部屋の隅の一角を陣取りゴロリと寝転がって目を閉ざす。間もなく夜の9時だ。寝よう。

そんな私を親はハラハラと泣きながら睨みつけていて、とどまることのない涙を流しながら私のそばに詰め寄ってきた。


「あ、あ、あ、あなた、何を、何を知ってるの!?」
「何も知りませんって」
「嘘よ!知ってるわ!知ってる、絶対、知ってる!!」


一体何を根拠の「絶対知っている」なのだろうか、私も知りたいよ。

小さくため息を吐いてから体の向きを変え、話す気はないと強く目を閉じ全てを無視して寝ることにした。


もー…うっざい……。







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