被験体α(全16話)


前回(?)は白い部屋に来てすぐジンとウォッカがいたのだが、今回は誰もおらず、私はロック画面しか見れないスマホで時間を確認してしまう。
言わずとも分かるが圏外である。


今何時ですか、今何日ですか


そう声をかけてくる親の何とうるさいことか。ここに私の性格の悪さが出てしまう。が、そもそもそんなずっとスマホをいじっていたら電池が切れてしまうから必要最低限に抑えておきたい。バッテリー持ってきてるけど、一応ね。それに腕時計もある。

私、最&高。


一人で己に好感を抱きつつおそらく扉である方を向いて黙って座っていれば、カチッという金属音とともに私の背後の扉が開いた。そっちかい!


振り返る私と親子3人を見たのはなんとシェリーであって驚いてしまう。


「薬飲んだ後?前と?!」


とつい言ってしまいそうになったが何とか飲み込んでシェリーを見つめれば、シェリーはスイ、と視線を泳がせ5歳くらいの子供をピタリと捉えた。

今回も私は最後なのだろうか。


「やめて志保ちゃん!子供を連れて行かないで!!」


そう叫んだ親と、その親の口から出てきた「志保ちゃん」という言葉は、おそらく同情を誘ってのこと。

一瞬の間もないのに親というものは強からしい。すごいな。

シェリーはそんな親を見てから少しうつむつき、すぐ後ろにいる末端だと思える白衣を着た構成員は子供を抱き合げ連れて行き、親は半狂乱である。恐ろしい。

痛ましげに眉をひそめたシェリーだが、それ以上何かの行動はせず扉を閉めて行ってしまい、泣き崩れる母親には7歳くらいの子供ももらい泣きをしている。

そりゃそうだろうな。色んな意味で怖いもん。


わんわんと泣く親を横目に私は腕時計と荷物を見てハンカチがあったので差し出すか、としたがクジで当てた赤井秀一のハンカチの姿がない。

嘘だろおい、お気に入りなんだぞ。

そんな私はよそに、しばらく泣き声は続き時計を見る限りおよそ30分泣いていた親子は顔を上げ深呼吸をする。
いいぞ、その調子だ。

うん、と頷いた私は扉を見つめる形で壁に寄りかかり座っていたが顔を泣き腫らした親は私を見て詰め寄ってきた。
やめて、怖いから。


「あなた、何か知ってるの!?」
「知りませんよ」


本心である。
なにせ今回は無言で連れて行かれたので被験体云々はないのだろうか。さっき見たシェリーも見た感じ17、8歳くらいだと思うけど。


「めんどくせえ…」


そう呟いてしまいながら私は大きく息を吐き出した。
親子は私から離れ部屋の隅で固まっているのが見える。

子供はしっかりと母親にしがみつき、母親はしっかりと子供を抱きしめて、なぜか私を警戒しており、何で私こんなにも可哀想な立ち位置にいるのかと疑問に思ってしまう。
マジで犠牲者である。勘弁。

そうしていれば3時間して扉が開き親子連れは「ヒッ」と声をつめた。しかし残念食事である。

ここに来て1度目の食事。

私はスケジュール帳を取り出しメモを取る。
スケジュール帳も日付などは全て消え真っ白なただの小さいノートと化しているがまあいいか、と私は手を合わせて呟いた。



「いただきます」







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