被験体α(全16話)
果たして、あの時の映画館でのことは夢オチということで 私含めた8人は頷いて。けれど額に押し付けられていた冷たい感触と耳をつんざくような鋭い音は夢だとは思えない。
家に帰って鏡を見たら額に赤い痕があったので「ワンチャン?」とつぶやいてしまったのは許してほしい。1人暮らし最&高。誰の耳にも入らない。いや、それもそれで寂しいけど。
仕事はリモートで行えるのでパソコンを立ち上げ会議をしてからある程度こなし時を過ごす。
そして私は映画館に訪れた。
もう終わるか、もう終わるかと、(人気が出ているため早々にはやめられないらしい)コナンの映画をキメようとして、なんとなくスクリーンのど真ん中を陣取って周りを見渡してしまう。
上映開始10分前に案内が入っていたが今この場にいるのは私と親子連れの2組だけ。
親子連れは親1人に子供2人、なので私含めて合計4人。
またあの素敵( )な夢オチを望みつつ映画をしっかり見たかった思いもあるので正直何とも言えない。
ジンにキスをされたのが忘れられない。いい夢だった。
映画泥棒のアレが流れ上映が始まった瞬間、館内が揺れ、目の前の席にいる親子連れが悲鳴を上げている。だよね、結構な揺れだぞコレ。
携帯の電源を切っていなかったらネルフからメールが届く。
母親は子供2人の頭を抱え、私はそう、なんとなく荷物を強く握りしめ目を閉ざそうとし違和感を覚える。
私たちは揺れているのにスクリーンも両脇のカーテンも揺れてはいない、ちょっとした既視感。
目を閉ざしたらアウトな気がしてしまうが、私はそれでも目を閉ざしてしまった。
だって天井から何か落ちてきたんだもん。仕方ないだろう。
親子連れの悲鳴が聞こえ、カバンで頭をかばった瞬間、館内は真っ白な光に包まれて
「まじぃ?!」
とつぶやいてしまったのは、約10日前の夢オチにしたあの時のことを思い出してしまったから。
目を開けた私は、手には荷物、 部屋の中には親子3人の みがいて、子供が起き上がると
「お母さん」
とつぶやいた。
ホワイトルーム再び。
子供の声に母親を顔を上げ5歳くらいの子と7歳くらいの子は真っ白い部屋に困惑しており親の方も親の方で部屋を見渡した。
「……どこ……?」
そんな呟きを耳にしたが私は気にせず手に持っていた荷物から電源を落としたスマホと 財布を取り出し確認すると財布の中身は変わらず、スマホの電源を入れたがスマホはうんともすんとも言わない。
そもそも待ち受け画面にしてあるジンの画像が背景真っ黒の時計表示のみ。日付はない 。
そうしてスマホをいじっていた私に親は同じく荷物を見ようとして驚いている。荷物がないらしい。
そういえば子供を座らせた時に置いていたようなーーー?
しかしまあ他人に対してあまり興味のない私は立ち上がり部屋の壁に手をついて歩いて回る。特になにがしかのものは何もないと、それを知れたところで今後どうなるかわからないけれど、子供は
「お母さん」
とまたつぶやき、親は子供を抱きしめつつ「大丈夫よ」なんて言っている。
大丈夫なものか。状況をちゃんと伝えろ、その方がいいと思う。
グルリと歩いて回ってから座り込んだ私に親は視線を私に向け
「何か」
知っているのかと問いかけてきた。
「……さあ……分かりません」
あの日の出来事が夢オチでなければ、ガチでなければ、何も知りません。
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