被験体α(全16話)


お気軽な私とは正反対に、呆然としている女と2人静かに過ごしているが、女は私が身動ぐごとにビクビクしているので、フォークで顔面を狙われていたこともあったためちょっとスッとする。クズでしょ?知ってる。

何時かわからないが運ばれた食事に手をつけていても女はとうとう一口も口にすることもなく部屋の隅で丸まっておりずっと震えている。大丈夫か?


「ねえ」


と声をかけてみてもいいのだろうけど、きっとそれは胃に穴がいくつも開くくらいにはストレスになるだろう、なので気を使える私は何も言わずに座り直した。

ここで目を覚ました時、一体何人いたっけ、と考えていても仕方がないが、できる限り思い出して数えると私含めて 8人。そう8人。そして今2人。 3日ごとに1人ずつ連れて行かれているので多分18日間、2週間と少し経っていると思われる。

映画の次元とアニメ、もしくは原作の次元は全く別なので 私たちがこの世界にきたのと 元の世界とでは時間の進みは違うのだろうか。というか帰れるの?

帰れる確率は恐ろしく低いだろう。

グッと立ち上がり大きく背を伸ばし軽く柔軟運動をしていたら呆然としていた女が目に涙を溜め小さな声で問いかけてきた。


「ーーあなた、ほんとうに、何なのよ?」と。
「何なのって言われても……」


ジン再推しのオタクです、なんて言ってもいいのだろうか。
連れて行かれた時、私以外の人たちは自己紹介をし合っていたのだが私は参加しなかった。
今更にちゃんと他の人たちの仲も深めてみても良かったが そもそも私はジンに被験体に立候補していたのだから誰も気にはしないだろう。むしろ敵と認識されたからしょうがない。でももう2人きりだ。多少の会話は許してくれ。


「大丈夫?」
「……そう、思うの?バカじゃない!?」
「もういいわ」


たった一言で会話は諦め欠伸をする。
そうしていれば女は私を見つめ、食事が運ばれ、それに手をつけていれば女は呟いた。


「本当に、バッカじゃない……?」

なんて。

「バカで悪かったわね」

なんて。







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