被験体α(全16話)


私が立候補したのに最初の被験体として名も知らぬ女性が連れていかれ3日。

みんな持ち物はなく身一つで この場にいるのだが、なぜ3日とわかるのかというと3食きっちり食べさせてくれるし 女子、男子とトイレと風呂の時間を与えてくれていたので 3日と分かった。

カップル2組と、あとは私含めた4人。そのうち1人は3日前に連れて行かれて残りは7人。

一体何の被験体かと問われたら、それはつまりあのお薬などへの被験体であろうことは 容易に想像はつく。
初日は泣く子もいたけれど、3日間何もなく過ごし微妙に状況に慣れ始めた6人は自己紹介をして過ごしていた。

そして4日目。

真っ白い部屋の扉を静かに開き姿を見せたのはバーボンで 。室内にいる私たちを見回してからそっと目を細めバーボン推しらしい1人で来ていた女の子が小さく「バーボン」とつぶやいていた。

それを耳で拾ったバーボンは私を見たが無言で顔をそらしその女の子を連れて出て行ってしまった。

ノックであるため「ワンチャン」助けてくれるのではないかと希望を持った人もいたようだが、バーボンの向こうに ベルモットが見えてたためそれはなくなって。そしてジン以外では、ウォッカ、キャンティ、コルンの3人にしか興味のない私は部屋の壁に背中を預け欠伸をしてしまう。


「……一体何なんだよ」


そう呟いた男(カップルの片割れ)と、その横にいる女の子は戸惑い涙を流して私を見た。


「お、おお、お前、何か知ってるのか!?」


と、男は私に話しかけ私は首を傾げてしまう。


「何?」
「初日!あ、あの男……ジンと親し気にしてたろ!?お前何か知ってるんだろう!!?」


と。
いや、知らんて。映画見てた 仲間なのだからジンと知り合いのはずないし、そもそも漫画のキャラじゃん。こっちは知ってても向こうは知らないだろう。

しかし私に味方はいないのか。


「そうだよ!ジンが手をあげたあなたを置いて別の人を連れてったし、あなたまるでジンが何かの、この組織の人間が何をするのか知っている様子を見せたし!」

「何をするって……」


知るわけないじゃん。映画館にいたんだから知らん、て。


何とも言えない言い分に肩から脱力してしまい大きく息を吐き出したら連鎖のように全員が詰め寄ってきて、私はまた息を吐き出してしまう。


「映画館から一緒なのに、知るわけないじゃん」
「でも!4日前に…」

「あのさ、4日前、確かに(喜んで)立候補したのは私だけど勝手な妄言を吐いて被害妄想するのやめてくんない?」


集団で詰められても何も出てこないよと言い切っても、5人は「でも、でも、」と言ってきて

「でもも、クソもねえよ」と呟いてしまった。


「そんなに『何の被験体か』を私に聞かれても答えなんて知らないし気になるなら次に誰か来たらその時に何の被験体かを聞けばいいじゃん」


私のせいにして心を軽くしようとしないでよ、迷惑、と。

そこまで言い捨てれば5人は私を睨みつけながら引いていき遠巻きにしてきて、私は運ばれてきた食事に手を付けた。

私以外は雀の餌かという程度にしか食べず、そうしてまた日は経っていく。


「もう1回、」


ジン来ないかなぁ、と心の中でつぶやいた。







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