被験体α(全16話)
今年新作の兄貴が主役(違う)としての映画の5回目を決めていた最中。
5回目ともあって、そして平日の昼ということで映画館には私含め8人しかおらず、兄貴がスクリーンに出るたびに変な声が出てしまいそうになるのを頑張って耐えていたおり、激しい 地響きとともに 館内が揺れ、スクリーンが落ち、7人の悲鳴が聞こえたところでその場が真っ白に輝いた。
私自身も「何ーーー!?」なんて叫びそうになりつつも次の瞬間に別の意味で私の口からは「何ーーー!?」という声が出そうになってしまった。
場所が映画館から変わり、物のない真っ白な部屋に私たち 8人は閉じ込められ、そしてみんなの視線の先には兄貴こと、ジン様がいて。
映画にて、兄貴の冷酷さを知っている私たちは、しかしみんなして「一体何だ」と混乱している中で兄貴は私たち8人を見比べてから口端を微かに持ち上げた。
「被験体を1人選ぶ。ウォッカ、適当に連れてこい」
と言い、私の肩に誰かの手が置かれ、私は見上げてしまう。
「 こいつからでどうですかい 、兄貴」
うっ……わーーー!生ウォッカ!!
何で私たちは映画館からこの白い部屋にいて、生ウォッカがいて、兄貴が扉の前にいる意味が全くもって不明だが、私は!兄貴を!最推ししておりまして!
「はい!!」
と勢いよく手を上げてしまった。
「兄貴さんのために!私、被験体になります!」
「は?」
と、とぼけた声はウォッカから、そして私の言葉に片眉をあげたのはジン様で。
「……おもしれぇ、いいだろう、ウォッカ、その女を連れて来い」
兄貴から!ジンニキ様からのご指名!いや私から手を上げて主張したので実質立候補だけども!だけども!
兄貴様が面白いと思ってくれたのはものすごく嬉しいので、 ウォッカによって肩を押され背中に固いに何かを押し付けられているけれども!!
ニコニコというかニヤニヤとしつつ兄貴さんの前まで歩いて近寄ると兄貴が私の顎に手を置いてくれて私の口からは
「ヒッ…」無理……、という声がもれてしまう。
好きが過ぎてツラい。しかも 触られているということがさらにツラい。
いろんな意味で感情を昂らせてしまい嬉しいのかツラいのか切ないのかがわからず、顔や体は火照ってきたし何なら泣きそうだ。
鼻水垂れそう。
兄貴は私の顎をつかんだまま右、左と顔を向けさせられ、限界まで顔を近づけてきたことで私の「好き」は爆発した。
兄貴の手には触れず両の手で 己の顔を覆って深く息を吐き出したら喉が震えてしまい、兄貴が低く笑ってきた。
「俺が怖いのか?」
「好きです!」
間髪入れず反射で返してからはっとして手をどけた瞬間ウォッカの手が私の肩から外れ、兄貴との距離がゼロへとなったそれに硬直してしまう。
柔らかく触れ合ったそれに言葉をなくし、兄貴は私を見つめているが私の口端を舐めてから兄貴は顔を離してきて、また低く告げられる。
「お前は最後に回してやる」
そう耳元で囁いてから私のすぐ側にいた一人で来ていた名も知らぬその人が連れられて行き扉が閉まる。しかし残念なことに私にはそういう事ではなくて。
私、今、キスされたの?兄貴に!?
うわーっ!と叫びそうになってその場にしゃがみ込むと6人が遠巻きに言葉をなくしていた。
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