呪術
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満月の夜、志恩は空を見上げるのをやめて己の手首から滴る赤いソレを見つめてしまう。
ポタリポタリと垂れるそれをボンヤリとした眼差しで無感情に見下ろしていれば目の前に人が来たようで、月夜の影がこちらの事を包み込んでくれる。
そう、五条だ。彼が私の事を見下ろしていて。
「…五条さん…」
「またやっちゃったの」
そんな責めるような言葉に志恩は顔を背けもう片方の無傷の手で赤い手首を握りしめ
「転回後後…陰」
一瞬フワリとした光が手首に走りすぐ消え去るとその手首から傷痕が消え、五条が差し出してきたタオルで血を拭い握りしめる。
「痛くないの?」
「……少しも……」
五条は小さくため息を吐くと縁側に座っている私の目の前にしゃがみこみ下から見上げてきていて、五条は不安定に揺れる志恩の瞳を見つめてきた。
といっても両目は布で覆われているためその視線は本当はどこに向いているのかは分からないが志恩はタオルを畳み膝に置く。
「どうしてやっちゃうのかなぁ」
「…生きてるのを、確認してるだけ…死んでいれば誰も私に声をかけることもできないし答える必要もない……」
「でも僕は志恩がいなくなったら嫌だなぁ」
「…嬉しくない…」
頑なに五条を拒むのは一体なぜなのか、本当に嫌いなのかは分からないが五条の言葉と行動を避けそれでも会話をしてくれるという事は完全に嫌われている訳ではないと思いたいところであって
「…五条さんは、死ぬの、恐い…?」
「うーん…避けられる運命ではないけど、今はまだ死ねないかなぁ」
「…そう……」
その呟くと同時に志恩の哀しい色をした瞳からポロポロと涙をこぼし始め小さく肩を震わせ泣いている。
五条はそんな彼女の手を握りしめ包み込むとヘラリと笑い
「僕と生きてくれたら嬉しいんだけどなぁ?」
その言葉に志恩は更に涙を溢れさせ、ゆるゆると首をふり「そんな…」と。
「そんな残酷なこと言わないで…私は死にたいの何もしたくない何も感じたくない…でも呪霊にはなりたくない…私は、どうすればいいの…?もう、いや………」
五条は「そっかぁ」と呟き悩みこむと手を握りしめたまま立ち上がり志恩の瞳から流れ出る涙をぺろりと舐め上げ顔を寄せてきて
「キスしていい?」
「…いや…」
「えぇ、嫌かぁ、でもしちゃう」
そうしてちゅっと頬に口付ければ志恩は顔を上げ五条を見上げると
「そういうことをされるのはもっと嫌」
と呟き五条はただニコニコと笑うだけで、それでも彼女の瞳から涙は消えていってしまった。