呪術
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「七海、あがりか?」
「家入さん、お疲れ様です、上がりです」
そう職員室前で七海と家入は鉢合わせ、呪いもあらかた静まった世間で家入は片手で杯を煽るようにして見せて
「一杯どうだ」
と問いかけた。七海は即効で頷いた。
今日は花の金曜日、というわけでもないし、残念ながら呪術師に曜日なんて関係ないが 時間もできたということで示し合わせた時間に家入が待ち合わせ場所のバーに着くと
「やあ、遅かったね」
と青筋を浮かべている七海の横に五条が座っていた。
「お前下戸だろ、帰れ」
と硝子はシッシッと手を払うように動かすも、そんなことで五条が帰るはずもなく、せっかくの七海と硝子のお気に入りのスポットに下戸野郎がいるのはちょっとウザイ。
七海の手の中グラスが握力で割れないのかが心配である。
硝子はコートを脱ぎながら五条とは反対の椅子に座りカウンターにつけば、髪を軽く刈り上げた、やはり2人のお気に入りのバーテンダーである女の人が笑っており
「七海さん、硝子さん、お久しぶりです」
と声をかけてくれた。
七海は腹の中で「折角気を抜ける場所に来たのに」という言葉をこぼし、硝子は慣れたように五条を無視して早々に スピリタスを頼むことにして 七海と杯を交わした。
オレンジの照明に静かなピアノの旋律が奏でられているバーはそこそこに人がいるが、わざわざ他人を気にする人もおらず硝子にならって七海も五条が「無い物」とすることにした。
しかしそんなことをしなくても五条はカウンター内にいるバーテンの女の人に声をかけており、女の人はそれに慣れたように笑って対応している。
七海と硝子はのんびり話しながら杯をあけ、五条は長い足を交差させながらカウンターに頬杖をつき、ノンアルカクテルを
「おすすめで」
どんどんちょうだいと話している、というか絡んでいる。
こいつ場酔いしてやがる。
数少ないお気に入りの場をなくすのはかなり嫌だし、七海は眉間を揉みバーボンを煽っていく。
そんな中で五条とバーテンは話しており、五条のために
「お酒が飲めない人でも、」
楽しめるノンアルカクテルはたくさんありますからごゆっくりください、と笑っている。
善そのものだ。
七海からしたら今すぐ帰ってもらいたいがところだが。
「お姉さん、名前教えて」
そんな会話に硝子が舌打ちしたそうに五条をチラリと見、七海はため息を吐き
「碧井ちゃんって呼んでもいい?」
と聞こえてくる。
2人の落ち着ける場を荒らしまくる五条に硝子は口端を持ち上げて笑うと、五条を潰してしまおうと決めたらしく、2人からするとほぼジュースのピーチ・フィズを飲ませることにした。
今、五条は機嫌が良いから気持ちよく潰れてくれるだろう。
バーテンはそんな硝子の目論見に苦笑いを浮かべ、かなり薄めでカクテルを作り五条の前に置いてくれる。ついで、七海と硝子の前にドライフルーツをサービスしておいてくれた。
硝子と七海はウイスキーシリーズに移行することにし、かなり薄めのピーチ・フィズを一気に飲んだ五条はカウンターに突っ伏して潰れてくれた。2人はガッツポーズを決める。
先程まで浮わついた方が聞こえていたが今はもう何も聞こえてこなくなったため、七海はようやくリラックスしたように硝子と呪術界の現状を軽く話しながらどんどんグラスを開けていき、硝子も硝子でドライフルーツをつまむ。
そうして小一時間ほどのんびり過ごしてから、帰るか、という話になり顔から首まで真っ赤になって潰れている五条を見て七海はため息を吐き出し、硝子は
「置いていけ」と 切り捨てる。
しかしそうしたいがそんなことをしたら今後このバーに行きにくくなる。そんな2人の様子で物事を察したバーテンは笑って
「酔いが冷めるまでこちらで様子を見ますので」
どうぞお気になさらず、とグラスを洗い、七海と硝子は顔を見合わせると仕方なしにとまたカウンターに座り、五条が目を覚ますまで飲むことにした。
場を荒らす五条