黄泉違い(全13話)
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昨晩、飲み会で起こったことを椿さんに説明を求めると椿さんは笑いながら教えてくれた。
時刻はもう昼に届く頃合いで軽い二日酔いを覚えながら
「昼食を奢ります」
と誘い出してから飯屋でことの経緯を話してくれた。
新入社員だけで飲む計画は、どいやら酔っ払った私に失態をさせようというものが8割含まれていたのを椿さんとお香さんが耳にして、一番その場に行っても問題の無さ気な鬼灯様に(失態をさせようという計画は伏せ)飲み会に出て欲しいと訴え、調度手の空いた鬼灯様が応じてくれたという。
なぜ失態をさせたいのかはあまり考えないことにして食後のあんみつを食べながら椿さんは続ける。私は聞く。
そもそも亡者が亡者を呵責するのはどういうことだと言う勢や、皆のある意味憧れのお香さんや鬼灯様とフランク(?)に話していることに嫉妬する勢など様々な思惑の中の「ズルイ」という勝手な言い分で私を潰そうという魂胆に、私と一夜を過ごしたいという男獄卒も合わさって私を飲みに誘った、という。
そのことに私はポカンとしてしまい
「いや、私と一夜過ごしてどうすんの…」
「そりゃあ、ねえ?ふふ…」
そうして亡者、人間なのだからとわざと強い酒を飲ませ潰してやろうという含めで閻魔殺しなんて飲まされたのだが、そこに鬼灯様が顔を出し、私が座敷の奥で新入社員と飲んでいたところに居合わせ
「アルハラですよ」
と然り気無く私を鬼灯様の横に置き、なるべく軽い、亡者用の酒を渡していたが杯は進まず、首筋まで赤く染め上げトロリとしている私の世話を鬼灯様と然り気無く飲み会の場所を聞き出したお香さんと椿さんが助けてくれて、酔い潰れてしまった私を鬼灯様が背負って椿さんの寮まで行き、寝かされた。
「という中々に濃い飲み会でした。どう?覚えてる?」
「…全くもって記憶にございません…」
「あはは!レンちゃん酔った方が獄卒に向いてるよ」
「何かアカンこと言うてはりました?」
思わず関西弁なりながら何とも言えない声を出せば椿さんは白玉を噛みながら私を見つめ
「女の私でもドキドキするくらい色っぽかったよ?」
「うぅ…土にかえりたい……」
「でも鬼灯様の鉄壁の守りがあったから新卒ちゃんたちは手が出せなかったんだけどね」
「鬼灯様の前で切腹案件ですねこれは」
もう死んでるから生き返りますから大丈夫ですよね?と真顔で聞けば「それはやめて」と言われあんみつを食べ終えており
「切腹されても困ります」
なんて低い声が耳に届いた。
私は驚いて振り返り、椿さんも椿さんで背筋を正すと私の後ろの席を凝視してポツリと
「鬼灯様」
と呟いた。
は?え?ちょ、?ま?鬼灯、様?ですって?!
振り返った後ろの席の鬼灯様も椿さんと同じようにあんみつを食べ終えたところであり軽くこちらを振り返り私と視線を絡ませ合う。
「ヒッ!鬼灯様!ごめんなさい!申し訳ありません!!」
「何にです?」
「酔っ払ったところからご迷惑をおかけしたところまで全てですかね!??!!」
「大丈夫ですよ」
そうして鬼灯様はお茶を手に取り啜りながら私を見つめ
「目の届かない場所で店に失態を起こしている方が何倍も迷惑ですし困りますから、酔っ払いの介抱で済む方がいくらでもマシですよ」
「うぐっ…言葉も出てこねぇ…」
ちょっと鬼灯様の分の会計も持とうと覚悟を決めながら口を開こうとしたら鬼灯様はお茶を置きまた振り返り背もたれに肘を置き
「まあ」
と。
「椿さんの言う通り、あなたは酔った方が衆合地獄の獄卒に向いてますが、あまり見せたくはないですね」
「?」
椿さんは軽く「はは、」と笑い、鬼灯様は「私が上司、という立場にいて良かった」と頷いている。
どういう意味なのかは分からないがとりあえず
「鬼灯様…」
「はい」
「奢ります」
では遠慮なくと言った鬼灯様と椿さんに私は深く深く頭を下げた。
やらかせないよう頑張った鬼神