黄泉違い(全13話)
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「レン、今暇かしら?」
「あ!妲己さん!」
シフトで休みになった日にふらふらと衆合地獄周辺の花街を歩いていれば通り過ぎ様にお店から顔を出した有名ボッタクリ店オーナーである妲己さんに声をかけられた。
妲己さんとは私がまだ仕事につく前に何度かお話をさせてもらっているうちに可愛がってもらう仲となり何かと声をかけてくれるようになったのだが、今日は久しぶりに妲己さんの顔を見れた。
私はパタパタと妲己さんのお店の前まで来ると
「今日は暇ですよ」
と言えば店の奥に通され妲己さんの私室に向かいお店の女の子が飲み物を持ってきてくれた。なので妲己さんと女の子に頭を下げてから妲己さんに向き直る。
何故だが私は妲己さんの私室に通されるまで妲己さんに気に入られており私の地獄の普段着と仕事着はほぼ妲己さんから譲り受けたもので溢れている。
コレ絶対高いヤツ、身長とフリーサイズが揃わないけどたくしあげれば問題ない。私の職場もすぐそこの男を誘う場なのでこういった“魅せる”服はとてつもなく助かる。
お古でも妲己さんのお眼鏡に叶った物ばかりなのでいくらでも使えるし、どれもこれもが可愛いし綺麗だ。
何度も言うが本当に助かる。
「レン、折角の休日に悪いわね」
「暇だったので問題ありませんよ、それに妲己さんに声をかけてもらえるのも嬉しいですし」
そう笑えば妲己さんは嬉しそうに笑みを浮かべ「可愛いわねぇ」と頭を撫でられる。んんん!良い匂い!!
頭を撫でられる際に妲己さんからフワリと静かに主張する香りと妲己さんの傾国させたその笑顔に心が堕ちそうになる。女で良かった!マジで!
2人で出された飲み物に口をつけてから妲己さんは立ち上がり、濡羽色の黒髪をサラリと流しながら包みを取りだしポンと目の前に置かれる。
「これね、貰ったけど私の好みじゃないのよ」
そうして見せられたのは真っ赤な布地に金糸で牡丹の刺繍の入った薄物と黒地に銀糸で龍の刺繍の着物。それに白地に、また銀糸で花が描かれた帯に簪が5つほど。
「いくつかは処分しちゃったけどレンに似合いそうだからとって置いたのよ、よかったらもらってくれる?」
そう首をかしげこちらを伺う妲己さんに、妲己さんの美しさに「うっ…」と呻きそうになりながら着物を広げて眺めてみる。
どっちも似合いそうだけどやっぱり当然ながら妲己さんにも好みはあるのだから仕方がないが、貢がれた服を私に流してきてそれを見かけられたらその男は心が砕けるか私に詰め寄るか。
妲己さんには害はない上に私に“貸し”を作らせまくっているとも見えるそれに私は断ることができない。きっとそれを分かった上で私に流してきているのだろうけど。
…近い内にどこかでこの借りを返しておかなければ……。
一瞬背筋をゾッとさせつつ「ここで着替えて見せて」の言葉に頷くと着ていた着物を脱ぎ黒地の着物を羽織り、その上に赤地の薄物を合わせ、わざと裾を数センチ長く残し着せてもらう。
「あら、やっぱり似合うじゃない」
「そ、そうですか?」
妲己さんに姿見の前に立たされ私と着物、それに帯を見ると、まあ、確かに、違和感が仕事をしない。着物の合わせに限り。
「こう…」
「なぁに?」
「こう…」
そうして言葉を区切ってから己の身体を見下ろして
「出るべき所が出ていない悲しさというかなんというか」
「レンは着痩せするタイプでしょ?ほら」
胸、あるじゃない、と後ろから胸に触れられてしまい私の口からは「ひゃっ!」という声が漏れてしまった。くすぐったい!
「だ、だっきさん、!ふ、…ふふ…!!」
「敏感ねぇ」
可愛い、と耳元で囁かれ甘い香りが鼻をくすぐる。そりゃ傾国するわ!女の私でも堕落しちゃいそうだよね!というか
「ちょ、っ!くっ、ふふ!!やめ、っっ!!あははは!!」
「可愛い!」
「だっきさぁん!!」
と泣きそうになれば妲己さんはそれはもう高らかにコロコロと笑うとやっと身体を離してくれて、げっそりとやつれた私は服をもらって妲己さんから解放された。
めっちゃ笑ってしまう私。