黄泉違い(全13話)
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私は死んだ。らしい。
最期の記憶はトラックの前に飛び出して行ってしまった子供を助けるためで、物凄いブレーキ音がその場に響き渡った後の衝撃。
痛みを感じる前に目の前は真っ暗になり、次の瞬間には私は大きな門の前に立っていた。どこだここ。地獄か?
どっかで見覚えのある景色だなぁとポケッと突っ立っていたらその大きな門は開き中から鬼が、頭部に2本の角が生えた着物姿の鬼が出迎えてきて。
果てしなく混乱する私を見て手招きをされ声をかけられ着いてくるようにと鬼の後をおい、ながーい薄暗い廊下を歩き、柱にはギョロリとした目があり、そして巨大な二頭の、牛頭馬頭が…鬼灯の冷徹という漫画に出てきていた二匹がそこにいて。
その長い廊下を進み、また大きな扉を開くとそこにはそう、額上部にある一本角、分けられた前髪、赤い襟に黒い着物、黒髪と鋭い目付きのその鬼はあの鬼だ。
「鬼灯様、地獄門の入り口付近で彷徨っていたのですが」
亡者でしょうか、そう口を開いた鬼と“鬼灯様”と呼ばれ、そう鬼灯が私を見下ろしじっと見つめてきたかと思うと眉間にシワを寄せ首をかしげかしげてきた。
「あなたお名前は?」
「え、あ、矢野レン、です」
「矢野レンさんですね」
そう繰り返した鬼灯様はどこかへと電話をかけ誰かと話しているがその表情はあまり変わらずとも雰囲気が変わっていき通話を切ると私を見下ろしまた首をかしげてきた。
「そのような亡者は来ていないのですが…」
臨死体験でしょうかと呟いていたが私はガッツリ死んでいるはずだし、私を連れてきた鬼は鬼灯様に仕事に戻るよう言われ去っていき、私は
「とりあえず」
来てくださいと歩き始めた鬼灯様の後を追う。
そうしてから鬼灯様は迷い無く歩き続け通りすぎ様に頭を下げたり声をかけてくる鬼獄卒に答えその後ろにいる洋服全開な私を見て不思議そうにしている。
分かる~、不思議だよね~、私も同じ~。
なんて連れていかれたのは記録課で。
中にいる葉鶏頭さんを呼ぶと私の背を押し
「矢野レンさんと言う方の記録を見たいのですが」
「矢野レンさんですか?そのような方はいらっしゃらないのですが、」
お待ちください。そう言ってから私を見るが「おや?」という雰囲気をだし
「具像神がいませんね」
つまりやはり私は死んでいるらしいが、そこまで考えなくとも最初から思っていたことを繰り返す。
鬼灯の冷徹。
それしかない。漫画の中へトリップ(死)したらしい。
鬼灯様と葉鶏頭さんはポソポソと話し続け気まずい気持ちで立ち尽くしてしまう。
2人(2鬼?)の会話は直ぐ終わり鬼灯様と葉鶏頭さんは頭を下げあうと葉鶏頭さんは行ってしまい鬼灯様は「さてどうしたものか」としつつ私に着いてくるようにと声をかけてきて歩きだす。
「死亡記録も具像神もいない、あなたの現世でのあらゆる記録が残っていないのは」
国籍が違うのだとしたらEUやエジプト方面に行くはずですが
「ご出身は?」
「8割山の国です」
「ああ、そこですか…でしたらどなたかとご結婚は?」
「未婚ですし海外は2度程行きましたがそれだけです」
「……そうですか……何か死に繋がる記憶は?」
「多分、トラックに轢かれたはずなので死んだとは思いますが」
「そのわりには冷静ですね」
いや、パニックの方が度合いは上ですが、とは言えず私は眉を下げ困ったように鬼灯様を見上げると鬼灯様も私と同じように
「困りましたね」
と呟いた。なんかよく分からないけど申し訳ありません。
罪の記録どころか出生からの記録が一切無いのは本当に困る要素しかなく、天国にも地獄にも私の行き場が無いというわけで。
「そうですねぇ、しばらく」
服役してみますか?の一言に全力で首を横に振ったのは当然だろう。
地獄なんてごめんだね!
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