ピエロのワルツ(全33話)
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「初めましてお姉さ~ん!」
なんて、ある日の夕方、突然帰宅途中に現れた可愛らしい高校生くらいのちょっと色っぽい女の子に驚いていればそのままぎゅっと抱きしめられて疑問符が飛び交う。
この女の子は私のことを知っているらしいが…いや待てよ、ちょっと前にウタ君と歩いていた女の子に似ているような…
「イトリさん、柚木さん驚いてるよ」
「あはー!だよねウーさん!」
「あ、ウタ君こんにちは」
「お疲れ様、柚木さん」
イトリさんと呼ばれると女の子は私に抱きついたままでウーさんと呼ばれたウタ君が近づいて来る。互いに挨拶を交わしていれば女の子は私の首元の香りを嗅ぎつつ目を細めて笑い
「イトリでーす、柚木さんって呼んでもいい?」
と首を傾げられてしまった。何この子すごい可愛い。頭撫でちゃおう。
よしよしと頭を撫でつつ
「いいですよ」
と答えればウタ君がイトリちゃんの頭を撫でていいる私の手を掴み指を絡めて繋がれてしまいイトリちゃんは「おやおや~?」と口元をニヤケさせ
「ウーさんのいい人と言うのは本当のなのだな?」
と笑っている。
ウーさんのいい人って、つまりそういう意味であろう。非常食、ではないと思われてはいたいが、ウタ君の知り合いという事はこのイトリちゃんもグールかもしれない。
私と手をつなぐウタ君と私と見比べると鞄を持っているほうの腕に絡みついてきて私は少し考えると
「二人とも家においでよ、美味しいコーヒーご馳走する」
と誘ってみることにした。そうすればウタ君は頷いて、イトリちゃんは「二人の邪魔になってしまうのでは?」と首をかしげていたので私は笑って
「そんなことにないよね?」と紡げば、ウタ君も
「うん、大丈夫」と頷いてくれた。
いい子なんでこの子は。
両側に可愛い子を連れたままアパートに向かって歩いて行けばイトリちゃんが
「ウーさんと同棲してるの?」
なんて訪ねてきたので、違うよと答え、ウタ君が隣の部屋、と付け加えてくれた。
「ふーん、ヘーえ」なイトリちゃんとらちょっと不機嫌そうなウタ君と自宅に入ればイトリちゃんはさっさと上がり私の部屋を見てまわり(といってもワンルームなのだが)、ウタ君が靴を揃えて入ってくる。良い子すぎるな。
カバンを置いてスーツを脱ぎハンガーにかけながら「つい」いつもの癖で着替えそうになりハタ、気付くとルームウェア片手に浴室に入り、そこで着替えリビングに戻るとイトリちゃんが雑誌を見てくつろいでいる。ウタ君も一緒に雑誌を覗きこんでいて可愛いがすぎる光景だと思う。
「今コーヒー出すね」とお湯をケトルで沸かしていればイトリちゃんがササッと近づいてきて背中に張り付きながら雑誌の1ページを開き
「柚木さんこの服似合いそう。色ちで買わない?」
と尋ねかけられたので
「ちなみに色は?」
と問いかえせば、私は黒で柚木さんは絶対白、とはっきり言われた。
白か。気になってたんだ、実は。
お湯がふつふつと沸く間にこの間買ったコーヒーを挽きマスターに教えてもらったことを思い出しながら注げば毎日練習したことが実りウタ君とイトリちゃんは美味しそうに飲んでくれた。
「アンテイクの味ね」
とイトリちゃんが呟いて笑ったので私はテーブルの前に座っている2人に顔を向け
「やっぱり二人ともアンテイク知ってるんだ」
と呟いてしまった。
その言葉に反応したのはウタ君で、なんでアンテイクを知っているのかという視線を受けつい先日、20区まで残業していたことを簡単に伝えれば納得してくれた。
「マスターと店員はみんなグルだよ」
そうハッキリと言いきったウタ君に、なるほどと頷きイトリちゃんがコーヒーわ飲み干すと
「ウーさんどこまで知られてるの~?」
なんて絡んでおり、ウタ君ははウタ君で「全部」と答えている。
「じゃあ私もグールってのも気づいてるの?」
「え?まあ、そうかなとは思ってたけど」
「通・報、しないの?」
なんて楽しげなイトリちゃんの言葉にきょとんとするも、イトリちゃんはウタ君に追い出されてしまい
「また来る~!」
なんて声が扉越しに聞こえてムスッと しているウタ君に抱きしめられてしまった。
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