ピエロのワルツ(全33話)
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メイクをし私の思う可愛い服を着て姿見にチェックすると首元に赤い跡が目立ってしまう。これを堂々と見せて歩くほどの勇気は私にはまだない。
コンシーラーで隠して見せれば意外とうまくいったのでそうして外に出るとウタ君が私のことを上から下まで見てきて嬉しそうに笑い、隠されたキスマークに気づくと今度は不服そうに眉を寄せた。
表情筋なさそうに見えて実はすごい表情変わるよね、ウタ君。
「なんで隠してるの?」
「あいつらシタんだって見られたくないからです」
「いいじゃん、実際シタんだし」
「……ウタ君以外に私の声も顔も想像されたくないから」
「分かった」
食いぎみの「分かった」に笑ってしまい鍵をかけると二人してアパートも後にした。
高く強い日差しに帽子をかぶればウタ君が「せっかく可愛くメイクしたのに」それも隠しちゃうの?と顔を覗き込まれてしまい「いや」と。
「太陽まぶしくて、ウタ君はサングラスしてるからいいけど今日ってわりと日差しが強いの」
「僕のサングラス貸そうか?」
「そしたら目が」
「そうだった」
なんて笑ったウタ君を見上げ私も笑ってしまえばウタ君は私の手を握りしめしてきて指を絡ませてくる。
はわー!恋人繋ぎって初めてだよ!
と照れてしまいながらもこんなことを自然にしてくるなんてウタ君本当に手馴れてるな、私ってもしかしてたくさんいる恋人のうちの一人とかそんな感じなのだろうか。
ウタ君の性格上そんなことはないとは思いたいけれど、私だけにしてね。
そうウタ君を見上げればウタ君はそんな私に気付くとコテンと首をかしげ
「どうしたの?」
と尋ねてきたのでちょっと人はいるけど、クンとウタ君の手を引いて右側の頬に口付けを送ってみた。
その私の突然の行動にウタ君は驚いたようで歩みが止まるが、私はその手を引いて歩くように促した。
そうすればウタ君は歩きだしてくれたがサングラスの向こうで恐らく目を細めると
「柚木さん」
とわたしの名を呼び今度はウタ君が私の頬に口付けてきた。
ひゃー!ラブラブな恋人にしか見えていないだろうこの状況に恥ずかしくなってきて街に繰り出すのだろうかと考えていればウタ君は行き先があるようでしっかりとした足取りで歩き始める。
どこにいくのだろうか。
私の最後の恋人は高校3年の就職受験戦争で自然消滅したのだがその時はこんなことしなかったな。
今更に甘い恋人というものになりニヤケそうになるのをなんとかごまかしてウタ君について行く。行き先を尋ねてみるべきだろうか。
「ウタ君どこ行くの?」
そう問いかければウタ君は「うん」と頷いて
「僕の友達の所」
「友達?」
「柚木さんは食べないでって言いに」
おいおい物騒だなと思いながら確かにこの区は人食いが頻繁にあるため、ウタ君の言うとおりウタ君のグール友達に私を見せることは重要かもしれない。
ふむふむと頷いていればウタ君私を見下ろすと
「恐い?」
と問いかけられたため私は首を振って否定してみせる。
「ウタ君が守ってくれるんでしょ?怖くないよ」
そう言って見上げればウタ君嬉しそうに笑いギュッと手に力を込めてきて、私もそれに応えるように握り返す。
「でもウタ君、それでも私を食べようとするグールいるかもしれないよ?大丈夫かな……」
さっき言った通り恐くはないが、ただ痛いのは嫌だなと思うだけであり、ウタ君は小さく笑うと
「僕4区のリーダーみたいなものだから」
「わりとすごいんだ」
「僕より強いグールいなくて」
「……マジ?」
「マジ」
だったら痛い思いをしなくて済むんだなと思って頷いていればもう一度「恐くない?」と尋ねられたのでもう一度
「ウタ君がいるから」
と返せばまた口付けが降ってきて、ウタ君のグール友達の数の多さに驚いてしまったが
「食べないでください」
と頭を下げれば皆が皆、即答で「はい!」と頷いてくれた。安心。
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